4マス軟調継続、電通テレビはマイナス15.9%(電通・博報堂売上:2015年6月分)

2015/07/10 08:00

博報堂DYホールディングスは2015年7月9日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2015年6月分の売上高速報を公開した。一方、電通も同年7月7日付で、同じく同社6月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2015年6月次の売上データが公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去のデータなどを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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博報堂ラジオ・テレビがわずかにプラスで残りの4マスはすべてマイナス


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらも確認してほしい。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年6月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年6月分種目別売上高前年同月比

4大従来型と呼ばれる主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、今回月は博報堂のテレビとラジオがわずかにプラスで、それ以外はすべてマイナス。全部がマイナスだった先月よりは多少なりとも状況は改善しているが、好ましいとはいえない。

特に電通のテレビがマイナス15.9%なのは大きい。前年同月の同項目はプラス6.8%でそれなりの反動はあるものの、ここまで大きな影響は与え得ない。テレビは額面が大きいだけに、このマイナス幅の大きさは合計値の足を引っ張ることとなる。

テレビほどではないが紙媒体の新聞や雑誌も下げ幅は大きい。こちらは前年同月においては今回月同様すべてマイナスだったため、本来はプラスへの反動が生じているはず。それにも関わらず今回月もマイナス値であることから、売上の低迷度合いが大きい実情がつかみ取れる。

4マスの軟調とは対照的に、インターネットは引き続き堅調に推移している。今回月は先月に続き両社とも10%台のプラスを維持している。前年同月は電通がプラス17.3%、博報堂はプラス34.9%の成長を見せており、そこからさらに10%強の上乗せが出来たことになる。

4マス以外の従来型広告も博報堂で一部マイナス値が出てしまっているが、大よそは堅調。それだけに4マスの軟調ぶりが強調される形となってしまっている。またここ数か月同様「その他」の成績もすこぶる良い。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通りとなる。やはりインターネット(インタラクティブメディア)がずば抜けた伸びを見せている。

↑ 参考:電通2015年6月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2015年6月度単体売上(前々年同月比)

ネット以外では従来型広告がややぶれはあるもののそれなりに良い動きを示し、一方で4マスの軟調ぶりが改めて認識できる。特に紙媒体2項目の下げ幅が著しい。

各年6月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる6月を基準にした毎年6月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、特殊事情、例えば選挙やオリンピックのような、広告と深い関係を有し売り上げに大きく影響がある事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年6月、億円)(-2015年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年6月、億円)(-2015年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。直近となる2015年6月では前年までの数年間の上昇ぶりからやや失速し、こうべを垂れたような状態となっている。やはり4マス、特にテレビの軟調さが響いたのだろう。またこの現象は前回月5月でも生じており、単月の動きでは無いことから、広告業界における景況感の失速が懸念される。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解した上での問い合わせが少なからずある。もちろんそれは間違い。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2015年6月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2015年6月における部門別売上高(億円)

インターネットは今回月の前年同月比で1割超のように、毎月目覚ましい成長率を示しているものの、売上金額=市場規模としてはまだまだ他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。それゆえに、今回月の電通の大きなマイナス動向は、同社売上全体の足を引っ張る形となってしまった。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、マーケティング・プロモーションのようにほとんど変わらない部門もあれば、クリエーティブやテレビのように約2倍の差を示す部門もある。

他方「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も大きい。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分内容の膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合では調査データの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたいところではある。もっとも電通に限ってもこの項目は「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務」とあり、2分割や3分割程度の細分化は難しいのも事実ではある。



今回2015年6月分は5月分に続き、前年までの成長からやや足踏み、後退の雰囲気を覚えさせる動きをしている。特に4マスの軟調ぶりが顕著で、それが全体にも影響を及ぼしている。4月までの堅調ぶりがウソのような流れでもあり、前年からの反動の気配もない。気になる動きには違いない。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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