よどみは深まり、「鶴」な雑誌が光る…諸種雑誌部数動向(2015年1-3月)

2015/05/02 11:00

小規模・個人経営の書店が経営者の高齢化やインターネット通販の普及、高収益を見込める雑誌の売れ行き減退、少子化に伴う顧客減少で閉店が相次ぎ、それと共に雑誌などの供給場として注目を集めるようになったのがコンビニ。だが、雑誌の集客効果は媒体力の下落と共に落ち、コンビニでもその領域と取扱い雑誌数は減っていく。大型書店も最近は数的に縮小傾向にあり、ますます雑誌を店舗で手に取り購入する機会は減り、雑誌業界そのものも元気を無くしつつある。このような状況の中で、各分野の雑誌のうち一部ではあるが、複数の分野に関し、社団法人日本雑誌協会が2015年4月27日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値から、雑誌の部数における「前年同期比」を算出し、その推移を確認していくことにする。

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大よそ下げ基調だが一部堅調…一般週刊誌


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語が意味するもの、諸般注意事項、類似記事のバックナンバーは一連の記事をまとめ収録した【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にある。詳しくはそちらを参照のこと。

まずは一般週刊誌のジャンルに該当する雑誌。写真を中心に記事を展開する、いわゆる写真週刊誌も含む。

↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)

↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2015年1-3月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2015年1-3月)(万部)

今四半期では幸いにも脱落・追加雑誌は無し。また、印刷証明部数を収録している雑誌に限定しているとはいえ、最低でも10万部の印刷部数は確保されている(やや危うい雑誌も出てきたが)。返本率がどの程度なのかは今値からは確認できないが、それ相応の需要は維持されていることになる。別記事の、そして後述する専門誌における数万部の動向と比べれば、まだ数量的な余力はある。

前期比(前年同期比では無い。内部試算のためグラフは略)でプラスは2誌のみ(「サンデー毎日」「週刊朝日」)。前四半期の3誌からはさらにその数を減らしている。もっとも大きい上昇幅を示しているのは「サンデー毎日」で、前四半期比でプラス11.8%の勢い。これは前四半期から続く流れで、注目すべき動きといえる。

前年同期比でも「サンデー毎日」はプラス3.2%と、「週刊プレイボーイ」と合わせ数少ない上昇雑誌。2月4日発売の3月8日号で故高倉健氏の手記の公開を行ったり、昨年末から連続取材を行っている故やしきたかじん氏に絡んだ追跡取材記事が注目を集め、部数を底上げしているようだ。

昨今幅広い層から注目を集めている「SPA!」は、今四半期の前年同期比ではマイナス3.3%。下げ幅は最小限に留まっている。一般雑誌市場が全般的に厳しい中、同誌は2012年以降はほぼ横ばいの値を維持している。とりわけ同誌の状況に貢献しているであろう「孤独のグルメ」に関しては年内の新規単行本の発売が発表された。今後これに絡んだ各種記事が展開されることは容易に想像できる。それに伴い数字の上でも明らかな成果が見えてくるに違いない。

↑ SPA!印刷実績
↑ SPA!印刷実績

「SPA!」の堅実な部数動向がすべて「孤独のグルメ」によるものではもちろんありえないが、貢献度が大なことは疑う余地は無い。次四半期以降の動向が気になるところ。

進む二極化…育児系など


続いて育児系雑誌。部数の継続チェックの過程でプラスマイナスがあり、現在では8誌の動向を追いかけている。今四半期では追加・削除誌は無し。1誌「ベビモ」のみがプラス、残りは全誌が前年同期比でマイナス。

↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)

少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近に居る育児世帯は数を減らしていき、育児情報への需要は増えることから、切り口次第ではチャンスはいくらでもつかみうる。もちろん同時にインターネットの普及が進んでおり、子育て世代に向けた情報サービスも充実しており、雑誌ならではの提案が求められる。

今回唯一プラスの値を計上した「ベビモ(Baby-mo)」は季刊誌で、今期間でも1誌のみの発売。

同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めている。今回号は前号同様に、冊子部分のサイズは同じで付録あり版(Baby-moオリジナル バナナラッパ)、付録無し版(とじ込み付録「赤ちゃんが寝てくれないタイヘン予想図&解決ワザ」はついている)が同時に発売されている。需要に合わせて購入対象を選べる配慮は、他の雑誌も見習うべき。

「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示している。確かな支持層を確保し、常に改善を模索し、それが功を奏することで、ポジティブなスパイラル状態に突入したのだろう。

↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績
↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績

続いて食・料理・レシピ系雑誌。インターネットの普及浸透、料理系をはじめとする家事情報に関するサイトの乱立により、紙媒体の雑誌としてのレシピや家事テクニックを収めた雑誌の立場は思わしくない。

↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)

今系列の雑誌の中では唯一と評して良いほどに堅調だった「栗原はるみ haru mi」も、今四半期では大きくその数を減らしている。前年同期がいくぶんイレギュラーな上昇の値を計上したことから、その反動が多分にあるとはいえ、やや驚くべき結果には違いない。前四半期で付録の「スヌーピーカレンダー」にて大きく数を伸ばした「レタスクラブ」も軟調。

エリア情報誌は真っ赤な状態


エリア情報誌。GPS機能がついたスマートフォンで地図を確認しながら、さまざまな周辺環境の状況を確認していくのが当たり前となった昨今では、存在価値そのものの再定義が急務な状態となっている。

↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)

↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年1-3月期まで)
↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年1-3月期まで)

今四半期も前四半期に続き、対象全誌が5%超の下げ。しかも「福岡ウォーカー」以外はすべて10%を大きく超える下げ幅を示している。「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」の具体的動向を見れば分かる通り、歯止めが利かない下げ基調のまま推移しており、底が見え始める気配もない。「北海道ウォーカー」は元々部数が少ない(直近期で2.5万部)のも一因だが、1年で半分以下に部数が減ってしまっている。

愛玩動物として筆頭に挙げられる、犬と猫にスポットライトをあてたペット専門誌「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。書店での一般売りは無く、通販専用の雑誌。書店のレジでサンプルが配されていることが多く、その表紙などを目に留めた人は多いはず。

↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)

↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年1-3月期まで)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年1-3月期まで)

前四半期に続き前年同期比では著しい下げ幅を示している。これはすでに知られている通り、発行元のベネッセにおける大規模な顧客情報漏洩事件が影響していると見て間違いない。他に犬猫専門誌が急に売れなくなる、今件2誌は特に通販による定期購読という特殊な販売スタイルでセールスが落ち込み原因は見当たらないからだ。もっとも減退の動きは前四半期がピークで、今四半期はいくぶん持ち直しているのが幸いな流れではある。このままの動きが継続できれば、半年から1年で元の状態に戻れるはずだが。

「妖怪のしわざ」はなお小学生など向け雑誌にも


最後に小学生向けなどの雑誌。「小学●年生」スタイルの雑誌は現在「小学一年生」と「小学二年生」のみ。そこで幼稚園向けの雑誌も合わせての精査となる。昨今では少子化に加え、競合的立場にある各種教材も合わせた通信教育的なサービスが好評を博し、厳しい値が出るのが常だったのだが、3四半期年ほど前から状況は大きな変化を見せはじめている。

↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)

該当5誌のうち3誌までがプラス。しかもそのうち2誌は10%超の大幅増。ほんの半年前までは考えられなかったような状況がグラフ上に展開されている。

原因は先行記事の少年・男性向けコミック誌における「コロコロ」シリーズで生じた特需同様、「妖怪ウォッチ」による引き上げ効果と見て間違いない。表紙への採用はもちろん、付録でも「妖怪ウォッチ」、特にジバニャンを用いた面白ギミックのアイテムを用意し、注目を集めている。またその他にも「アイカツ!」「ポケモン」「プリパラ」など、子供達の間で話題の作品を巧みに取り込んだグッズを提供したことが大いに部数への貢献をしたようだ。



今記事では多様なジャンルを網羅していることもあり、多様な変動が見受けられるが、今四半期に限れば「二極化」「『妖怪ウォッチ』特需」の2つのキーワードが大きくクローズアップされる。「サンデー毎日」は販売部数そのものは他誌と比べるとさほど多いものではないが、軟調な業界の中で数少ない部数の引き上げを果たしているし、「ベビモ」は驚異的な上昇の中にある。

元々一般誌の多くはすき間時間を埋めるために用いられることが多く、現在はスマートフォンのようなモバイル端末にその役割を奪われている。ビジネス誌の「プレジデント」に代表される「保存性の高い内容を目指す」などの施策が取れれば良いが、育児誌、料理雑誌やペット専門誌はともかく、一般週刊誌などではそれも難しい。

今後はそれぞれの雑誌が自らの立ち位置を明確に分析し、得意な分野、手法で読者の需要をつかんで離さず、さらにその手を広範囲に広げる発想が求められよう。


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