一強群抜き、そして麒麟児登場!?…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2015年1月-3月)

2015/05/01 15:00

インターネットをはじめとする電子情報技術の加速化、モバイル性の高いスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その業界に係わる人たちはより速く、より正しい情報へのあくなき欲望をたぎらせ、専門誌にもその想いに応えることが求められる。時間への需要・期待が他業界と比べ強いビジネス雑誌業界では、紙媒体ゆえの短所が露呈しやすく、雑誌ならではの長所を見出す必要が強く迫られている。このような状況下の「ビジネス・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2015年4月27日付で発表した、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代感が進む。そして……


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近にあたる2015年の1-3月期とその前四半期に該当する、2014年10-12月期における印刷実績。

↑ 2014年10-12月期と2015年1-3月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2014年10-12月期と2015年1-3月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今四半期では追加・脱落雑誌は無し。ただし不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今回は登場せず、部数は非公開状態となっている。いつものごとく、次の四半期には再び顔をみせる事だろう。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは3倍近くもの差をつけている。グラフのぱっと見で分かる通り、「プレジデント」のみ明らかな形で部数を増加。「プレジデント」一強時代の長期政権化は容易に想像できる。また今四半期ではそれに加え「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」「THE21」なども部数を伸ばしているのが分かる。とりわけ「THE21」は伸び幅が大きい。

詳しくは次以降の項目で精査するが、他に気になる動きを示してる雑誌と言えば「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」。前四半期に続き、下げ幅がややキツい状況にあるのが見て取れる。

大きな増加組と大きな減少誌と…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節属性(季節による需要動向の変化)を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれが懸念されるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2015年1-3月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2015年1-3月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域は「PRESIDENT」「PRESIDENT」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」「BIG tomorrow」の5誌。「BIG tomorrow」は数十冊のレベルだが確かに前四半期比でプラスを計上している。そして誤差範囲といえる5%の幅を超える下げ幅を示したものは「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」だけ。この動きは前四半期から変わらない。同誌は数年前までは期待の新星として部数も堅調な動きを見せていたのだが、昨年頭をピークとして、失速状態が続いている。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2015年1-3月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2015年1-3月期まで)

↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2015年1-3月期まで)
↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2015年1-3月期まで)

「PRESIDENT」は2013年に入ってから大きな振れ幅を示す形を示しながら、中期的には上昇機運に入っている。今四半期で示した36万6167部は、取得できる範囲のデータでは最高値を示しており、昨今の雑誌業界、中でも冒頭の通り非常に厳しい現状のビジネス系雑誌の中では驚異的な結果。紙媒体ならではの特性「手元においてざっと見がすぐに出来る」ことを活かした「長期保存をしたくなる資料的存在」の立ち位置を得られるような紙面構成が評価され、手に取られたのだろう。【バックナンバーページで確認すると】、「日本一やさしい『英語』の学び方」「毎日が楽しくなる時間術」「お金に困らないピケティ実践講座」など、時には世の中のトレンドを絡ませながらも、書籍として保存するのにも十分価値がありそうな内容が散りばめられている。それゆえに以前指摘したが、【近藤誠×和田秀樹 「決定版! 頼れる病院、危ない病院"特集...ダークサイドに入り込んだ感じ】のような炎上商法に手をつけてしまったのは残念ではある。

他方「COURRiER Japon」の失速状況もグラフに表れている通り。部数のトレンドが変わった前後で内容のシフトによる懸念が多方面で指摘されており、編集方針の変更がマイナスの影響をもたらした可能性は高い。

2プラス1マイナスな前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握出来る。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2015年1-3月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2015年1-3月、前年同期比)

「PRESIDENT」は前四半期比だけでなく前年同期比でも大いに躍進。また「COURRiER Japon」は大幅な軟調ぶり。双方ともその推移は上記グラフの通りだが、それぞれのすう勢が突然生じたものではなく、ここ数四半期、少なくとも1年以上継続していることが先の折れ線グラフと合わせ、改めて確認できる。

他方、「PRESIDENT」と並び「THE21」の伸びっぷりも目に留まる。前四半期では「PRESIDENT」と雑誌コンセプトが近いもののその部数動向は正反対で不安視する向きもあったが、ここ数四半期の動向は復調を予見させるものがあり、今後の動向が気になるとコメントしていた。今四半期では見事にその期待に応えた形となった。

↑ THE 21 印刷証明付き部数(2015年1-3月期まで)
↑ THE 21 印刷証明付き部数(2015年1-3月期まで)

【「THE21」のバックナンバー】を確認すると、該当期の発売号では唯一2015年2月号の「使える英語・勉強法」が品切れ状態となっている。先の「PRESIDENT」でも英語関連の特集が好評を博していたことも合わせて考えると、英語に係わる特集のビジネス誌にちょっとした特需が生じたのかもしれない。



かつては大いに期待できた「COURRiER Japon」の失速、書籍的な保存を半ば目論んだ企画構成の「PRESIDENT」「THE21」の躍進ぶりを見るに、ここ数四半期の間に指摘していた「どのみち情報のスピード感ではインターネットにかなうはずはないのだから、蓄積性、保存性の高さをビジネス専門誌の長所として売り込む方が需要にかなうのではないか」とする話が裏付けられた感はある。

元々ビジネス誌の多くは連載物、あるいは特集の記事を再構築して加筆し、書籍としてコンテンツを再利用…というよりは活用する傾向が強い。コミック誌における雑誌連載と単行本のような関係ではある。その従来型ビジネスモデルとは相反する形ではあるが、雑誌そのものが低迷してしまっては、その雑誌をプラットフォームとする書籍の展開も望めないのだから、雑誌自身を保存してもらうように舵を取るのも、現在の市場環境・需要を考慮すれば、正しい選択といえる。この切り口は以前【電撃PlayStationが意外に奮闘している件について】で言及したように、「電撃PlayStation」が似たような視点を有しており、雑誌業界が生き残る方法論の一つかもしれない。


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