現状・先行き共にマイナス…2015年6月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2015/07/08 15:00

内閣府は2015年7月8日付で2015年6月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落して51.0となったが、水準値の50.0を超える状態は確保した。先行き判断DIは先月から転じて7か月ぶりに下落し53.5となったが、水準値の50を超える状態は維持されている。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は年度替わりにおける賃上げ交渉の時期も過ぎたことからその部分の表現が削られ、代わりにプレミアム付商品券の言及が加わる形で「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、夏のボーナス、外国人観光需要、プレミアム付商品券への期待等がみられる」となった(【平成27年6月調査(平成27年7月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状・先行き共に小幅な減少


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2015年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス2.3ポイントの51.0。
 →「やや良くなっている」が大きく減り、「やや悪くなっている」が増加。
 →家計は全項目が下落。企業は製造が上昇。雇用関連は下落。

・先行き判断DIは先月比で1.0ポイントマイナスの53.5。
 →家計は概ね下落。企業は製造が上昇。雇用関連は下落。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

昨年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。一方でガソリン価格は昨今の原油価格の上昇気配を受けでじわりと値を上げている。原油価格の低迷による恩恵、景況感へのプラスの影響は、すでに無いものと見て良いだろう(マイナスとなるような高値を付けないだけマシとの考え方もある)。

先行きDIにおいては物価上昇で生じる景況感への悪影響が懸念されるが、昨今では外国人観光需要、そしてプレミアム付き商品券など施策の効果期待が強くなっており、各指標の高値維持にも大きな影響を与えているものと考えられる。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

現状飲食大幅上昇で基準値超え


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2015年6月)
↑ 景気の現状判断DI(-2015年6月)

消費税率改定からはすでに1年以上が経過したが、消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させるに必要となる材料が見当たらず、低迷感は薄まりながらも継続していた。さらに電気代や食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は重圧感の中にあった。

原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしているが、一方で昨今では円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けている。

水準値(50)以上の項目は、今回月では家計動向関連でマイナス値が相次いだこともあり、前月のゼロから小売・飲食・住宅の3項目にまで増加。企業動向関連では製造業がプラスとなったもののギリギリで届かず。雇用はまだまだ水準値までには余裕があるが、その分大きな減少を示し、各細分項目では最大の下げ幅を示す形となった。

景気の先行き判断DIは現状よりは大人しいが、下げ基調には違いない。

↑ 景気の先行き判断DI(-2015年6月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2015年6月)

先行きでは全項目で水準値以上を維持。最大の下げ幅はサービス関連でマイナス2.5。最大の上げ幅を示したのは製造業でプラス0.8。ここしばらく低迷が続いていた住宅は今回月ではマイナス0.3を計上したが、水準値はかろうじてキープしている。

ボーナスや商品券に期待、天候悪化や物価上昇が気がかり


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・ボーナスの支給が始まり、予想よりも増えていたという客が多いため、夏休みの旅行受注の増加につながっている(旅行代理店)。
・プレミアム付商品券の恩恵を受け、客単価が前年を上回っている(コンビニ)。
・5月は非常に暑くかなり好調に推移していたが、6月はやや気温が下がり天候も不順で、来客数、販売量共に減少している(コンビニ)。
・空梅雨で暑さが続き、飲料やアイスを中心に売上は伸びている。コンビニにとっては好条件が続いている(コンビニ)
・円安による輸入原材料の価格上昇は、物価上昇を更に加速させている。当店でも止むを得ず値上げを実施し、その結果、客の購買意欲が低下するという状態になっている(一般小売店[食品])。
・昨年も雨天日数が多かったが、本年はそれ以上の雨天日数となり、客の来街モチベーションの低下が見受けられる(百貨店)。

■先行き
・ボーナスの支給やプレミアム付商品券の販売などが、個人消費を刺激する(百貨店)。
・インバウンドが昨年を上回る状況で好調に推移していることと、プレミアム付商品券の販売がスタートするので、これからの3か月間は期待したい(その他小売の動向を把握できる者[ショッピングセンター])。
・円安にともなう輸入品の高騰による食品などの値上げが物価高につながり、少ないベースアップも帳消しとなり、じわじわと景気が後退するのではないかという不安がある(スーパー)。

大よそ昨今の景況感を左右する要素が盛り込まれており、興味深いものとなっている。プラス要因はプレミアム付商品券やボーナスの給付開始、マイナス要因は6月の悪天候と円安による物価上昇。現状で「空梅雨」との表現があるのは沖縄での話(6月は各地で雨模様が続いたが、沖縄のみ早めの梅雨明けとなり、真夏日が続いている)。

なお「インバウンド」とあまり聞きなれない言葉があるが、これは海外からの観光客を意味する。国内の供給に関して国外から需要が到来することから、日本国内に限れば需要は底上げされる形となる。この言い回しは昨月も使われており、外来観光客による需要喚起が大きな要因となっていることが改めて認識できる。

他方上記引用範囲には無いが、企業動向では円安による輸入原材料の価格上昇や電気料金の上昇に伴うコストアップに窮する事例が報告されている一方、中小企業で設備投資に係わる借り入れ申し込みが増えてきたことや、在庫調整が好転していることなどが見受けられる。また雇用関連では派遣業者における「受注は堅調だが求人側とのミスマッチが目立つ」との表現も確認され、非正規から正規への雇用市場のトレンドシフトの気配を覚えることができる。

現状はサービス、先行きは小売がポジティブ…詳細精査


2014年4月分の公開値を基に、消費税率動向について細かい部門別に別途記事として精査をした【景気ウォッチャーの指標動向から消費税率改定後の景気行き先を推し量ってみる】の手法を用い、簡略的にではあるがしばらく継続的に現状・先行きDIの詳細動向を確認している。今回もその例にならい、2015年6月分とその前月の2015年5月分との差異、つまり一か月分の変化を詳しく見ていくことにする。まずは現状DIについて。

↑ 2015年5月から2015年6月における現状DIの変動値
↑ 2015年5月から2015年6月における現状DIの変動値

今回月の現状DIは大まかな仕切り分けでも製造業以外はマイナス基調だったが、細分化をしても下げ幅の違いこそあるものの、製造業以外はきれいにマイナスを示していることが分かる。スーパーやレジャー施設関連のマイナス値の大きさがやや気になる。

特にレジャーは現状値が43.5と低迷しているが、具体的コメントを見ても該当するものが見当たらず、不安がよぎる。前月分までさかのぼれば「中小企業でもベースアップが実施されるようだが、食品を中心に物価上昇がずっと続いているので、レジャーに支出する余裕は生まれない」とのコメントが確認でき、可処分所得がまだレジャーにまで回っていない状況を受けての結果であることが推測される。

↑ 2015年5月から2015年6月における先行きDIの変動値
↑ 2015年5月から2015年6月における先行きDIの変動値

↑ 2015年6月における先行きDI
↑ 2015年6月における先行きDI

現状と比べて項目別のマイナス幅の差異が大きい。家電量販店の下げは元々高値過ぎたことによる反動が大きいが、商店街・一般小売店や通信会社は高値でも無く、下げ幅の大きさが不安要因となる。コメントで確認する限り、プレミアム付き商品券や国内外の観光客の増加への期待の声は大きい。ただやはり、物価の値上がりに伴う消費者の財布のひもの固さを嘆く声が影響している感はある。



今回月ではやや後退したものの、ここ数か月の動向を見る限りでは景気低迷感は底を打ち、反転に転じた雰囲気がある。震災後や、その後の超絶円高を示した時のような、隅から隅までの絶望感的な空気とは大きく異なるのは事実。しかし立ち上がり感はまだ弱く、ふらつきも見られる。単なる底打ちに加え、何か加速をつけるような材料が欲しいところだ。

一方で外部的要因として、先日から伝えられている通りギリシャ情勢の悪化や中国の金融市場の低落など、マイナス要因が複雑かつ大型化している。世界各国が経済面で深く結びついている以上、それらの国のみの状況悪化に留めることはまず不可能で、日本にも小さからぬ火の粉が降りかかる可能性は高い。何より消費者一人ひとりのマインドにも影を落とす。

景況感の足を引っ張らないよう、願いたいところではあるのだが。


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