サンデー40万部割れ…少年・男性向けコミック誌部数動向(2015年1月-3月)

2015/04/30 15:00

文章を読み解く人の趣向に変わりはないどころか昨今ではむしろ読書性向は高まりを示すとの見解もある一方、それを果たすメディアとしてデジタル機器が登場普及するに連れ、従来主流の紙媒体はその存在価値の再確認・再定義が段階的に行われ、新たな価値観のもとでの行動を求められている。子供向けのコミック誌業界も例外では無く、子供の娯楽の変化に加え、デジタル媒体でコミックを読む機会の増加と共に、ビジネス的に厳しい立場に追い込まれ、従来のビジネスモデルでは成り立たなくなり、ウェブベースでの展開に移行する雑誌も相次いでいる。社団法人日本雑誌協会では2015年4月27日付で、四半期毎に更新・公開している印刷部数に関して、公開データベース上の値に最新値の2015年1月から3月分の値を反映させた。そこで今回は各雑誌が一般に、あるいは営業の中で提示する値よりもはるかに実態に近い、この公開された「印刷証明付き部数」を基に、「少年・男性向けコミック誌」の動向を複数の切り口からグラフ化を行い、現状を精査していくことにする。

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直近四半期の動向…勢いは無くなったが特需状態が続く少年誌3傑


データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など各種文中の用語の解説、諸般注意事項、同一カテゴリの過去の記事は一連の記事の解説ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明・収録済み。詳細はそちらで確認のこと。

まずは少年向けコミック誌。「週刊少年ジャンプ」が群を抜いている状況は前四半期から変わらず。今記事におけるもう一つの対象ジャンルである男性コミック誌と合わせても、唯一のダブルミリオンセラー(200万部超)誌として君臨している。次いでやや年上の少年向け雑誌「週刊少年マガジン」、さらには小学生までの低年齢層向け(主に男子向け)雑誌「コロコロコミック」。詳しくは後述となるが、前四半期に「コロコロコミック」が100万部を超え、少年向けコミック誌では100万超部の雑誌が2誌から3誌に増えた状態は、今四半期でも継続する形となった。また第2位の「週刊少年マガジン」と「コロコロコミック」の差異は10万部強で、いわゆるデッドヒート状態。ただし「コロコロコミック」のニトロエンジン的な存在「妖怪ウォッチ」の特需は減退傾向にあるため、両者の順位差し変わりは難しそうだ。

↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

直近データで確認すると「ジャンプ」の印刷部数は242万2500部。雑誌では返本や在庫本なども存在するので、それを勘案すると最終消費者の手に渡る冊数は、これよりも少なくなる。雑誌の種類やジャンルによって返本率は大きな変動があるが、暫定値として1割から2割と試算すると、200万部強となるだろうか。ここ数年で電車の乗客を見渡した時に、コミック雑誌を手に持って読んでいる人が随分と減ったことを思い返せば、毎週全国で200万人以上もの人が購入し目を通している状況は奇跡に近い。もっとも同誌はピーク時となる1995年では635万部の値を出していた記録を目にするに、その4割足らずにまで落ちてしまった現状は、時代の流れを感じさせる。

今回は脱落・追加雑誌は無い。先日速報的な形でデータの公開直後に各方面て伝えられた、週刊少年サンデーの部数は39万3417部。容易に取得可能な最古のデータとなる2008年の4月から6月期における86万6667部からは45%程度にまで部数を減らしている。

↑ 雑誌印刷実績推移(週刊少年サンデー)(部)
↑ 雑誌印刷実績推移(週刊少年サンデー)(部)

続いて男性向けコミック誌。「妖怪ウォッチ」特需が続いている少年誌と比較すると、軟調感は否めない。

↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

男性向けコミックは少年向けと比べると各誌毎の差異はさほど大きく無く……というよりは飛びぬけた部数を有する雑誌が無く、またトップから第3位、4位と5位、6位から8位までがほぼ横並びなのも特徴的なポジションではある。

雑誌全般の観点でもレアケースとなる「複数誌の休刊、そして連載作品のシャッフルによる、複数誌の新創刊」とのパターンを採択したのが集英社の「グランドジャンプ」「グランドジャンププレミアム」。長年の人気タイトルも複数含まれ、そのシャッフルぶりに一喜一憂したファンも多かった(当方含む)。両誌とも創刊後に何度かテコ入れのため、さらに作品のトレードが行われるなどそれぞれの雑誌における方針、方向性は混乱の中にある。今件印刷証明部数では「グランドジャンプ」の値のみが開示されているため、新創刊やその後の作品のトレードとの選択が正しかったのか否かの判断は困難。

↑ グランドジャンプの印刷実績(万部)(2015年1-3月期まで)
↑ グランドジャンプの印刷実績(万部)(2015年1-3月期まで)

他誌と比べればまだ穏やかではあるが、確実に部数は減退中。創刊・部数公開以降一度も前四半期比で増加した経験が無い。さらにいえばこの1年に渡り、四半期ごとに少しずつ、確実に部数が減少し続けているのも気になる。

コロコロコミックの勢いは止まるも100万部は維持…前四半期比較で動向精査


続いて公開データを基に各誌の前・今四半期間の販売数変移を独自に算出し、状況の精査を行う。雑誌は多分に季節で売れ行きの影響を受けやすいため、単純比較をするとその判断に関して、雑誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。

なおデータが雑誌社側の事情や休刊などで非開示になった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌は、このグラフには登場しない。幸いにも今回はそのような雑誌は無い。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2015年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2015年1-3月期、前期比)

唯一大きく伸びたのは「ウルトラジャンプ」。元々同誌は掲載作品の状況に応じて数千部の部数に係わる変動を起こすため、今回はその範囲内での動きといえる。とはいえやはりこの値は注目に値する。該当期で発売された各号を確認すると、3月発売号で連載スタートの「アリアドネの冠」(島崎麻里先生)や、1月発売号の付録「イギー オリジナルストラップ」が人気を博した結果だと考えられる(後者の可能性が高い)。

他方マイナスを計上した雑誌では「別冊少年マガジン」「月刊少年シリウス」の減少ぶりが目立つ。これは前2四半期から継続している動きで、理由も両誌とも同じく「進撃の巨人」関連の反動、さらには勢いの鎮静化によるもの。とりわけ「シリウス」は今回の下落により、1万部を割り込んだことになる。特需後の雑誌は概してそれ以前よりも失速状況を加速する傾向があるのだが、同誌もまたそのパターンに至ってしまうのだろうか。

↑ 雑誌印刷実績変移(月刊少年シリウス)(部)
↑ 雑誌印刷実績変移(月刊少年シリウス)(部)

この数四半期で大きく伸びた、「妖怪ウォッチ」特需を受けた3誌「別冊コロコロコミックスペシャル」「コロコロコミック」「コロコロイチバン!」は今四半期では揃って前四半期比でマイナス。上記の通り作品そのものの勢いはまだ続いているものの、昨年末のような熱狂ぶりは過ぎ去っており、雑誌のセールスもそれに沿った形ではある。

とはいえ急上昇の後の小反動のため、中期的に見れば上昇機運のさなかにあることに違いは無い。今後さらなる映画や新作の発表が行われていることから、しばらくは連動企画で熱を帯び続け、映画などが本展開される際には再びあの盛り上がりが繰り返されるのだろう。なお「コロコロコミック」は今回の下落でも100万部は維持されている。

↑ 雑誌印刷実績変移(コロコロコミック)(部)
↑ 雑誌印刷実績変移(コロコロコミック)(部)

「妖怪ウォッチ3」の発売までの状況変化に合わせ、どのような動きを見せるかが気になるところ。

続いて男性向けコミック。こちらは少年コミック誌と比べ、やや逆風感は大人しい。しかし状況が思わしくない事に違いはない。

↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2015年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2015年1-3月期、前期比)

歴史ものの「コミック乱」三兄弟ともいえる「コミック乱ツインズ」「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」「コミック乱」が揃って前四半期比でプラス。わずかな値ではあるがプラスには違いなく、大いに評価はできる。

前四半期比でマイナスを計上した雑誌の多くは誤差範囲の5%以内に収まっているのは幸いだが、唯一「アフタヌーン」が9.3%と大きな下げを示している。特に売り上げを減退させるような要因は見当たらず、少々気がかりではある。一つ挙げられるとすれば、前四半期の付録のトラブルの影響だろうか(【月刊アフタヌーン12月号(10月25日発売予定)が31日に発売延期・付録のトラブルっぽい】)。

年比較ではコロコロ3兄弟の特需はなお健在…前年同期比で検証


続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2015年1-3月分に関する検証であることから、その1年前にあたる2014年1-3月分の数字との比較となる。年ベースと少々間が開くものの、雑誌の印刷実績における勢いに関して季節変動を除外し、より厳密に知ることが出来る。数十年もの歴史を誇る雑誌もある中で、わずか1年で数十パーセントもの下げ幅を示す雑誌もあるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認できる。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)

「妖怪ウォッチ」の特需を一挙に受けたコロコロ3誌がいずれも大きなプラス。前四半期比ではマイナスに転じたが、前年同期比ではプラスを維持出来ている。他方「月刊少年シリウス」「別冊少年マガジン」は共に「進撃の巨人」の反動。年ベースでも大きな影響が出ている。3割4割引は当たり前状態。

それら特需、その反動を除くと「少年サンデーS」「週刊少年サンデー」の下げ幅が目立つ。発売日などから対比する形で取り上げられることの多い「週刊少年マガジン」と順位の上では同じだが、下げ率の幅は2倍近く。より子供向け内容の多い「週刊少年サンデー」の方が失速度も大きいのは、雑誌業界全体の需要を示す一つのシグナルだろう。もっとも知名度の高さは群を抜いており、上記の通り40万部割れは複数メディアで伝えられる形となった。

続いて男性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)

前年同期比ベースでは全誌でプラスは果たせず。しかも誤差を超えた5%超の下げ幅を過半の雑誌が占めている。作品の編集方針で色々と物議をかもしている「ビッグコミック」シリーズもずらりと大きな下げ幅の中に納まっている。

なお健闘しているように見える「月刊スピリッツ」だが、元々部数が1万部のみのため、これ以上の減少は雑誌そのものの存亡にかかわることになる。むしろ必至に踏みとどまっているのが現状かもしれない。



今四半期は前四半期からいくぶん失速してはいるものの、引き続き「妖怪ウォッチ」による大きな底上げ状態が続き一部雑誌は堅調、一方で低迷する男性向けコミック誌の中では多くの雑誌による低迷が目立つ形となった。四半期ベースでは新たな活力となる素材は見出せなかったようだ。

昨今ではこれまで以上に電子書籍、ウェブ漫画が浸透し始め、小規模書店の閉店やコンビニにおけるコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、ごく一部の人気作品以外はますます紙媒体が目に留まり、手に取られる機会が減りつつある。図書館における雑誌の導入もよく見受けられるようになったが、一般専門誌ならまだしもコミック誌は導入が難しい。

他のジャンル同様紙媒体による提供との観点では、少年・男性向けコミック誌もまた市場環境は極めて厳しい。紙媒体そのものが無くなることはありえないが、今後さらに過酷な状況が待ち受けていることは容易に想像できる。その中でいかに自らを律しつつ、環境に合った施策を取るかに、各雑誌社、雑誌編集部局の実力と本質が現れるのではないだろうか。


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