客数減・客単価増傾向は続く…牛丼御三家売上:2015年6月分

2015/07/07 11:35

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2015年7月6日、吉野家における2015年6月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス3.4%となった。これは先月から転じ、2か月ぶりのマイナスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年6月における売上前年同月比はプラス1.0%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス4.6%との値が発表された。今回月は松屋のみが前年同月比で売上プラスを計上することとなった(【吉野家月次発表ページ】)。

スポンサードリンク


前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通り。特記事項が無い限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2015年6月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年6月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2014年6月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はプラス7.7%。同社では2014年4月1日から消費税率改定に伴い主力メニューの牛丼価格を引き上げており、これが客単価の上昇、そして客数の減退(マイナス9.8%)に結びつく形となった。

従って今回月は「牛丼値上げによる客数減少・客単価増加が生じた前年同月」との比較となり、多少の反動(客数のプラス化、客単価のマイナス化)の影響が生まれることになる。他方吉野家では【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】で報じたように、2014年12月17日から主力商品の牛丼価格をはじめ各種商品価格の引き上げを行っており、これ以降は客数の減少と客単価の増加が直接的な影響要因として計上される。また、高単価商品も次々市場投入を実施しており、客単価の底上げ要因が付加される。

一方【吉野家の朝メニュー一新、「うまい、やすい、はやい」を前面に低カロリーメニューが新登場】で伝えたように、幅広い時間帯における顧客サービスの充実を図るために朝メニューの刷新も実施。価格帯も幅広いものとなり、低価格需要にも(時間の制限はあるが)応える姿勢を示している。

結果として客単価は1割強の底上げ、客数は2割近い減少、差し引きでわずかな売上減の形に収まった。相次ぐ客単価を引き上げる施策の実施は、メニュー構成、さらには運営方針のかじ取りの変化の表れとも受け止められる。

昨今では客単価と客数が大きく動く施策(メニュー全体の価格引上げなど)が相次いでいることから、反動による前年同月比の変化の影響を最小化するために、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。2年に渡った変化率なので、ここから年平均を求めるにはルート換算をすれば良い。例えば松屋なら、2年前同月比の売上から年平均を試算すると1.64%のプラスとなる。

↑ 牛丼御三家2015年6月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年6月営業成績(既存店)(前々年同月比)

前年同月比だけでなく、前々年同月比で見ても、3社が客単価の引上げにより客数の減退を補い(あるいは客数減退を覚悟しても客単価の引き上げを模索し)、売上を維持している様子が透けて見えてくる。

続いて松屋。6月初旬からは松屋の夏の風物詩ともいえるトマトカレーシリーズの発売が開始され(【松屋が今年もトマトカレー。でもノーマルは無いのだよ】、記事執筆時点ですでに販売終了)、また中旬からは「鶏の甘辛味噌炒め定食」の展開も開始している。そのトマトカレーでもノーマルタイプは今回未発売となり、野菜入りがスタンダードとなるなど、こちらでも客単価の底上げの模索が見えてくる。

6月の業績はというと、3社中客単価の引き上げ率はもっとも小さいものの、同時に客数の減少ぶりも最小限に留まっており、唯一売上ではプラスを計上。2年前同月比でも同様の動きを示しており、同社が戦略転換の中では、一番巧みなかじ取りをしているようだ。

最後にすき家。6月では特に新しいメニューの発表こそないが、5月末から「まぐろ丼」「山かけまぐろ丼」「ミニ鉄火丼」「ミニねぎとろ丼」「ガリすき」といった海産系のメニューの投入がなされている。これが影響したのか、客単価はプラスとなったものの、客数はマイナス、結果として売り上げは3社中もっとも大きな下げ幅を示す形となった。2年前同月比では売上幅の下げ幅は吉野家より小さいが、客数や客単価の下げ方・他社との相対関係に変化は無く、3社とも前年同月の反動はあまり考えなくても良い状況となっている。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年6月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年6月)

売上幅の中期的動向としては、ここ数年に限れば、すき家の人員不足騒動や吉野家の鍋旋風でそれぞれぶれが生じているが、それ以外は大よそ横ばいに推移していることが分かる。少なくとも震災前のようなダイナミックな変化は見られない。

客数の減少・客単価の増加はやはり戦略転換の結果かも


次に示すのは各社の客数動向。先の消費税率改定に伴い各社とも(規模、タイミングこそ違えど)価格引き上げを実施しているが、それからすでに1年が経過しているため、消費税率改定にによる客数減退の影響は消え去り、むしろ前年同月比動向ならば反動で底上げ効果が生じてもおかしくないが、相変わらず値はマイナス値のままにある。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年6月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年6月)

今回月における単純な前年同月比に加え、2年前同月比の試算結果を見ても、各社とも規模、結果に違いがあるとはいえ、客単価増・客数減となるような方向性を示しているのは明らか。客数だけを見れば「低迷している」との判断以外は下しようがないが、売上は横ばい、客単価は上昇との情報を合わせると、新たな側面も見えてくる。

卵が先か鶏が先かの問題に近いものがあるが、震災以降顕著化している消費性向の変化に伴う、廉価スタイルの外食産業全般からの客足の遠のきに対し、各社とも価格面で一歩上のステージに上がることで、時代の変化に対応しようとしているように見受けられる。これまで同様に廉価外食店の様式では客数が減るばかりで厳しさを増してくる。ならば客数の減少がいくぶん加速化しようとも、営業スタイルの格付けをアップし、売上の点でそろばん勘定を合わせようとするものである。先日展開を開始した吉野家の「ベジ丼」も、その気配を覚える商品に違いない(海外店舗のアレンジでもあるが)。

客単価の引き上げで客数の減りをカバーして売上、利益を維持する場合、これまでの「薄利多売」と比べて客数が減った時の売上の減退リスクは大きくなるが、店員の負担は軽減される。間接的にサービスの品質向上も期待できる。商品在庫のリスクや物流コストも圧縮されうる。

類似業界として良く比較されるハンバーガーチェーン店では、方向性の確定に苦慮しているマクドナルドが苦戦を強いられる一方、モスバーガーやケンタッキー・フライド・チキンでは高単価・高品質をさらに前面に押し立てるだけでなく、独自ブランドをより個性豊かなものとして、売上を維持している。

この動きが今後も継続するのなら、数年後には牛丼チェーン店における社会的立ち位置は、小さからぬ変化を示すものとなるだろう。


■関連記事:
【各社の店舗展開戦略が見えてくる…牛丼御三家の店舗数推移】
【ロイヤルホストが全席禁煙化・9割近くの店舗で独立した喫煙ルーム設置】
【各社の店舗展開戦略が見えてくる…牛丼御三家の店舗数推移(2014年)(最新)】
【牛すき鍋定食(すき家、2015年2月)試食】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー