高齢者の仕事事情を多方面から確認してみる(高齢社会白書)(最新)

2017/09/09 05:06

2017-0908高齢化問題だけでなく労働市場問題まで含め、現在社会問題の一つとしてスポットライトを当てられているのが、高齢者の仕事事情。定年退職を迎えた後の高齢者の就業は、生き甲斐としての労働だけでなく、生活費の補てんの意味合いも強くなり、また労働市場側から見れば労働力の補完として重要視される一方、若年層の労働機会を奪うとする懸念もある。それらの状況も合わせ、現状を把握するため、内閣府が2017年6月16日付で発表した、日本の高齢化社会の現状を各公的調査などの結果を絡めて解説した白書「高齢社会白書」の最新版となる2017年版などを元に、確認をしていくことにする(【高齢社会白書一覧ページ】)。

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まずは高齢者の就業・不就業状況の確認。労働人口などの年次計測記事などでの分析も逐次当サイトでは掲載しているが、今件は原則2017年版の高齢社会白書からのものである。

↑ 高齢者の就業・不就業状態(男性、高齢社会白書(2017年版))
↑ 高齢者の就業・不就業状態(男性、高齢社会白書(2017年版))

↑ 高齢者の就業・不就業状態(女性、高齢社会白書(2017年版))
↑ 高齢者の就業・不就業状態(女性、高齢社会白書(2017年版))

赤系統は現在非就業者、青系統は就業者。女性は兼業主婦として働いていたが子供が成人化したことなどでそれを辞めている人も多く、50代後半の時点ですでに3割が非就業者となっている。

男性では60代前半でも8割近くが働いており、60代後半でも5割。70代前半に入っても3割が働いている。一方女性は60代前半ですでに就業者が5割となり、60代後半に入ると3割にまで落ちる。男性は自営業者による就業者率が高いのも特徴で、75歳以上に至っても1割近くが確認できる。

高齢者の雇用に関しては「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が施行されており、企業にに「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入(定年に達した高齢者に対し、退職の形をとらずに継続雇用したり(勤務延長制度)、一度退職した上で再び雇用する(再雇用制度))」のいずれかを導入するよう義務付けている。このうち「継続雇用制度の導入」を成した企業に、どのような雇用形態で継続雇用者に対処をしているかを尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 継続雇用者の雇用形態(継続雇用制度を持っている企業対象、複数回答)(高齢社会白書(2017年版)
↑ 継続雇用者の雇用形態(継続雇用制度を持っている企業対象、複数回答)(高齢社会白書(2017年版)

企業の導入制度や本人の希望、そして能力により多様な判断が下され得るが、大よそは勤務延長制度を適用して自社正社員として継続雇用するか、再雇用制度を適用して一度退社した上で自社に正社員以外の立場として雇用するケースとなる。正社員以外の方が多いのは、本人の(主に体力的な)能力や希望が、正社員の立場のままだと難しいとの判断によるものだろう。

人数面で見ても、60代前半では男女合わせて400万人以上、60代後半でも200万人近くが就業しており、労働市場では大きな要素となっていることが分かる。しかもその多分は非正規。

↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2017年版)より)(男性)(万人)
↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2017年版)より)(男性)(万人)

↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2017年版)より)(女性)(万人)
↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2017年版)より)(女性)(万人)

興味深いのは就業率と失業率の推移。まずは失業率だが、65歳以上はほぼ横ばい、55歳から64歳にかけては低下をしており、この年齢階層の再雇用が積極的に行われていることが分かる。もっともこの2、3年では65歳以上も少しずつ低下の動きを見せており、65歳以上の人でも労働意欲を持つ人が増えていることが示唆されている。

↑ 年齢階層別完全失業率推移(高齢社会白書(2017年版)より)(各年平均値)(労働力調査から作成)
↑ 年齢階層別完全失業率推移(高齢社会白書(2017年版)より)(各年平均値)(労働力調査から作成)

就業率(該当年齢階層人口に占める就業者の割合)は上昇中。特に女性はこの10年強の間上昇を継続しており、60代前半ではついに5割に届いた。

↑ 60-64歳の就業率推移(労働力調査から作成)(高齢社会白書(2017年版)より)
↑ 60-64歳の就業率推移(労働力調査から作成)(高齢社会白書(2017年版)より)

団塊世代が定年退職を迎えたため、今後急激に高齢者人口が増えることは無いが、若年層は減少中なのと共に、平均寿命も延び続けていることから、全人口比における高齢層の比率はさらに増加し、就業者・率も上昇していくものと考えられる。



労働市場が供給過多(つまり仕事の担い手が不足している)ならば高齢者の就業率向上も大歓迎な話となるが、実際には若年層における失業率は全体と比べて高めに推移しており、高齢層からの圧迫感は否めない(【若年層の労働・就職状況をグラフ化してみる】)。

単に就業の「パイ」の切り方を変えるのではなく、パイ全体を大きくして多くの人に行きわたることを考えねばならないことは、以前【何人の働き手が高齢者を支えるのかをグラフ化してみる】でも解説した通り。さもなくば、本来高齢者を支える立場にある若年層の足元を、就業・経済面ですくう状況になりかねないのは言うまでも無い。


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