高齢者の仕事事情を多方面から確認してみる(高齢社会白書:2016)(最新)

2016/07/25 10:13

高齢化問題だけでなく労働市場問題まで含め、現在社会問題の一つとしてスポットライトを当てられているのが、高齢者の仕事事情。定年退職を迎えた後の高齢者の就業は、生き甲斐としての労働だけでなく、生活費の補てんの意味合いも強くなり、また労働市場側から見れば労働力の補完として重要視される一方、若年層の労働機会を奪うとする懸念もある。それらの状況も合わせ、現状を把握するため、内閣府が2016年5月20日付で発表した、日本の高齢化社会の現状を各公的調査などの結果を絡めて解説した白書「高齢社会白書」の最新版となる2016年版などを元に、確認をしていくことにする(【高齢社会白書一覧ページ】)。

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まずは高齢者の就業・不就業状況の確認。労働人口などの年次計測記事などでの分析も逐次当サイトでは掲載しているが、今件は原則2016年版の高齢社会白書からのものである。

↑ 高齢者の就業・不就業状態(男性、高齢社会白書(2016年版))
↑ 高齢者の就業・不就業状態(男性、高齢社会白書(2016年版))

↑ 高齢者の就業・不就業状態(女性、高齢社会白書(2016年版))
↑ 高齢者の就業・不就業状態(女性、高齢社会白書(2016年版))

赤系統は現在非就業者、青系統は就業者。女性は兼業主婦として働いていたが子供が成人化したことなどでそれを辞めている人も多く、50代の時点ですでに4割近くが非就業者となっている。また、就業を望まない人の割合も女性の方が多い。

男性では60代前半でも6割以上が働いており、60代後半でもほぼ5割。70代前半に入っても3割が働いており、さらに1割強が就業を希望している。一方女性は60代前半ですでに就業者が5割を切っており、60代後半に入ると約3割にまで落ちる。男性は自営業者による就業者率が高いのも特徴で、75歳以上に至っても1割近くが確認できる。

65歳以上全体として、労働力調査で確認をすると、非労働人口は全体で8割近く、男性で7割近く、女性で8割強。やはり男性の自営業者の比率の高さが目に留まる。

↑ 高齢者の就業・不就業状態(2015年、65歳以上、労働力調査から)
↑ 高齢者の就業・不就業状態(2015年、65歳以上、労働力調査から)

他に正規社員として働く人は少数で、非正規が多い。これは主に嘱託や顧問などとしての就業となる。実際、定年退職を迎えた人において、非正規の立場がメインとなるが、継続雇用された人は極めて多い。

↑ 60歳定年企業における定年到達者等の状況(高齢社会白書(2016年版)より)(2014年6月から2015年5月における定年到達者が対象)
↑ 60歳定年企業における定年到達者等の状況(高齢社会白書(2016年版)より)(2014年6月から2015年5月における定年到達者が対象)

【正社員? それとも嘱託、アルバイト!? 再雇用制度で再就職した高齢者はどのような就業状態で働いているのだろうか】などでも解説しているが、企業の望みによるところが大きい。

人数面で見ても、60代前半では男女合わせて400万人以上、60代後半でも200万人近くが就業しており、労働市場では大きな要素となっていることが分かる。しかもその多分は非正規。

↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2016年版)より)(男性)(万人)
↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2016年版)より)(男性)(万人)

↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2016年版)より)(女性)(万人)
↑ 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)(就業構造基本調査2014年より)(高齢社会白書(2016年版)より)(女性)(万人)

興味深いのは就業率と失業率の推移。まずは失業率だが、65歳以上はほぼ横ばい、55歳から64歳にかけては低下をしており、この世代の再雇用が積極的に行われていることが分かる。

↑ 年齢階層別完全失業率推移(高齢社会白書(2016年版)より)(各年平均値)(労働力調査から作成)
↑ 年齢階層別完全失業率推移(高齢社会白書(2016年版)より)(各年平均値)(労働力調査から作成)

就業率は上昇中。特に女性はこの10年近くの間上昇を継続しており、60代前半ではもうすぐ5割に届く形となっている。

↑ 60-64歳の就業率推移(労働力調査から作成)(高齢社会白書(2016年版)より)
↑ 60-64歳の就業率推移(労働力調査から作成)(高齢社会白書(2016年版)より)

団塊世代が定年退職を迎えたため、今後急激に高齢者人口が増えることは無いが、若年層は減少中なのと共に、平均寿命も延び続けていることから、全人口比における高齢層の比率はさらに増加し、就業者・率も上昇していくものと考えられる。



労働市場が供給過多(つまり仕事の担い手が不足している)ならば高齢者の就業率向上も大歓迎な話となるが、実際には若年層における失業率は全体と比べて高めに推移しており、高齢層からの圧迫感は否めない(【若年層の労働・就職状況をグラフ化してみる】)。

単に就業の「パイ」の切り方を変えるのではなく、パイ全体を大きくして多くの人に行きわたることを考えねばならないことは、以前【何人の働き手が高齢者を支えるのかをグラフ化してみる】でも解説した通り。さもなくば、本来高齢者を支える立場にある若年層の足元を、就業・経済面ですくう状況になりかねないのは言うまでも無い。


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