正規社員より非正規社員の方が恋愛や結婚をするのは厳しい現実(最新)

2019/08/28 05:27

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2019-0814内閣府が2019年6月18日に発表した、2019年版の「少子化社会対策白書」では、結婚関係や子供関連の観点から各種統計資料を収録、さらに対応する政策などをまとめている。昨今の子育て問題などを網羅し、検証できる指標が数多く盛り込まれ、注目に値する。そこで今回は同白書をトリガーとし、正規社員と非正規社員における、結婚観や異性との関係の現状を各種数値から確認していくことにする(【発表リリース:令和元年版少子化社会対策白書を公表しました】)。


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大きく異なる正規・非正規間の結婚の実態


「少子化社会対策白書」では就業状態において正規・非正規間の、異性との付き合い方の現状や結婚観について説明をしている。今回発表分では確認ができないが、以前用いられていた図版・解説では、一次資料として厚生労働省の【21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)】が使われていた。これは2012年10月末時点で20代だった男女およびその配偶者に対し、同年から毎年同一人物を継続的に調査していく連続調査である。その第1回調査では結婚観など多数の調査項目が確認できることから、直近となる第5回分までの値も併せて、いくつかの状況を精査していく。

まずは第1回調査時点で独身だった人における、直近調査までの5年間の間に結婚したか否かを就業状態別に見ていくことにする。「非正規雇用として採用されている非正規社員」はパート・アルバイト、契約社員、派遣社員が該当する。また「結婚した」はその後離婚した人も含まれている。

↑ 雇用形態別・男女別の結婚状態(2012年10月末時点で独身の20代だった人、「結婚した」はその後離婚した者も含む。就業形態は「結婚した」は結婚前、「結婚していない」は2015年11月時点)(2016年11月時点)
↑ 雇用形態別・男女別の結婚状態(2012年10月末時点で独身の20代だった人、「結婚した」はその後離婚した者も含む。就業形態は「結婚した」は結婚前、「結婚していない」は2015年11月時点)(2016年11月時点)

男性は正規の2割強が結婚しているのに対し、非正規では7.6%しかいない。女性では非正規でも24.6%か結婚しているが、正社員の30.5%にはおよばない。

男性は結婚すると自らの稼ぎで一家を支えねばならない場合が多いが、女性は(兼業主婦として働く事例は多々あるものの)自らの稼ぎを気にする必要は無いからか、正規と非正規の差はさほど大きくは無いようだ。

2017年分の就業構造基本調査の結果からも似たような実情は確認できる。

↑ 男性の就業上の地位・雇用形態別有配偶率(未婚でない人の割合)(2017年)
↑ 男性の就業上の地位・雇用形態別有配偶率(未婚でない人の割合)(2017年)

男性においては就業状態が正規の方が非正規よりもずっと有配偶者、つまり結婚している人が多い。30-34歳では6割近い人が結婚している。もっともこれは結果と理由が逆で、結婚しているからこそ(必要に迫られて)正規雇用についているケースも少なからずあるのかもしれない。

それでは結婚に対する願望はどのような状況なのか。配偶者がいない人に限定した結果が次のグラフだが、多数の人は結婚を望んでいる。

↑ 雇用形態別結婚願望(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人)
↑ 雇用形態別結婚願望(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人)

ただし非正規の方が結婚願望は薄い。元々結婚への意欲が無いので非正規としての就業状態を望んでいるのか、非正規だからこそ金銭的な不安感を持ち結婚が無理だと判断し、したくないと答えているのかまでは今調査項目だけでは確認できないが、非正規の方が結婚願望が薄い、明確な意識を持っていないのに違いは無い。

また、結婚願望同様、希望子供数も非正規の方が少なめに出ている(こちらは第1回目の調査結果のみが存在している)。

↑ 雇用形態別結婚後の希望総子供数(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人)(2012年11月時点)
↑ 雇用形態別結婚後の希望総子供数(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人)(2012年11月時点)

結婚願望と同じく相関関係はともかく因果関係までをも説明できるものでは無いが、少なくとも非正規の方が正規よりも、結婚を望む人は比率的に少なく、結婚を望んでいたとしても子供の数は多く望んでいないことが分かる。多分に就労そのもの、そして金銭的な不安定さが家族構築への足かせとなっていることが想像できる結果には違いない。

彼女・彼氏がいる率でも


具体的な結婚観、子供の希望人数とまではいかなくとも、交際している異性がいるかいないかの点でも、正規・非正規間に差は生じている。

↑ 雇用形態・男女別の交際異性の有無(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人のうち、結婚意欲がある人)
↑ 雇用形態・男女別の交際異性の有無(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人のうち、結婚意欲がある人)

時間の拘束の点などでは非正規の方が融通は利きやすいはずだが、金銭面や生活の安定性の問題は、異性と付き合う余裕のある無しにもかかわってくるようだ。また、付き合う異性との巡り合いの機会の点でも、非正規は正規と比べて恵まれていないのかもしれない。

このグラフの値は結婚願望がある人が異性と交際し、結婚に至るという通常のプロセスを前提としているため、あくまでも「配偶者がいない」人のうち、結婚願望がある人に限られた値となる。結婚願望が無いが異性の交際相手が居る人もゼロとは言えないだろう。だがそのような事例は今件における「結婚ができるか否か」との精査においては考慮外となる。

ともあれ男性は非正規の方が結婚率は低く、未婚者でも異性との付き合いをしている人も少ない、未既婚にかかわらず異性との付き合いは難しいとの結果が透けて見える(あくまでも相関関係ではあるが)。女性も未婚者に限れば、非正規の方が異性との付き合いをしている人は少ないことになる。



結婚願望と子供の保有願望は恐らくは連動している。さらにそれらは異性との交際が無ければ実現は不可能。そしてそれらの多くは経済的安定感を持つ正規社員の方が高い値を示している。職の安定が生活・経済面での安定を生み出し、結婚や子供保有・子育てへの促進につながることを意味すると解釈できる。「少子化対策は子育て世代の包括的かつ安定感をもたらす直接・間接を問わずの経済支援から」との説を、大きく後押しできる結果といえよう。


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