アマゾンドットコムの売上推移などをグラフ化してみる(2015年)

2015/04/24 11:00

文房具や書籍、各種玩具、さらには飲料食料品や大型動物の実物大模型に至るまで、多種多彩な商品を取り扱い、条件が合えば注文翌日どころか当日に商品を入手できる通販サービス「アマゾン」。その浸透ぶりに「konozama」をはじめ多種多様な造語も使われるようになったが、今や多くの人にとって欠かせないインフラの立ち位置にある事実は、誰一人として否定は出来ない。今回はそのアマゾンについて、日本国内だけではなく世界全体の同社における財務状態の推移を、アメリカの電子開示システムを用いて各種データを取得し、眺めることにした。

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累乗的に伸びる売上、営業利益は2002年からようやく黒字に


アメリカでは電子開示システムEDGAR(Electric Data Gathering、Analysis and Retrieval)で、1995年以降の各種財務データを誰でも自由に入手することができる。改定文書削減法(The Document Reduction Act of 1995)で、アメリカの公文書の電子化が義務付けられたからだ(無論インターネット上での公開なので、今件のようにアメリカ国外からでも取得可能)。

【公開場所はここ。SEC Filings & Forms】。この場所から【Search for Company Filings】、さらに【Boolean and advanced searching, including addresses】を選択していく。そして検索キーワードには「amazon com inc 10-K」を入力。ちなみに「10-K」とは「年次報告書」を意味する。アメリカ以外の企業なら「20-F」、四半期報告書は「10-Q」、臨時報告書は「8-K」。また、アマゾンドットコムは12月末決算なので、現時点では2015年1月30日付で収録された2014年分まで年次決算データが用意されている。さらに同社公式サイト内では2015年4月23日付で各種コメント、解説と共に【Quarterly Results】内の「Q1 2015 Financial Results」に、直近分となる2015年第1四半期分の掲載が確認できる。

アマゾンドットコムのデータは1999年3月5日提出のものが最古となる。このデータには1994年以降のものも掲載されているが、初年度は立ち上げ時期なこともあり、売上がゼロなので、これは省略。1995年以降のものを抽出し、グラフを生成する。最新のデータは上記の通り年次分は2014年分、四半期単位は2015年第1四半期まで。それらの決算データを逐次引き出し、必要な計算を行い、値を算出する。

なお日本の企業と比較する際には、それぞれの年の為替レートを考慮する必要がある。しかし今回はアマゾンドットコムそのものの推移を見るので、ドルベースのままで問題ない。一方、グラフの構成上、営業利益率の動向がやや見づらい形となるので、同項目がプラスに転じた2002年以降に限定したものも合わせて作成する。

↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率

↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2002年以降)
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2002年以降)

↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2014-2015年、Q単位)
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2014-2015年、Q単位)

営業利益率」とは「売上高営業利益率」のこと。つまり売上と営業利益(その企業の本業における利益)の関係を示している。計算方法はシンプルで「総売上を営業損益で割ったもの」。この値で「本業の稼ぎにおける効率の良さ・悪さ」が分かる。高い方が効率よい本業をこなしていることを意味し、マイナスならば本業が赤字を出している。

四半期単位では年末セールを含む第4四半期(Q4)の売上が目覚ましい。アメリカの「ブラックフライデー」をはじめとした年末商戦が、いかに大きな稼ぎ時であるかが分かる。

年ベースではグラフの動向からも分かるように、売上高は累乗的に増加する一方、営業利益率は1999年に一度落ち込み(営業費用の大幅な増加が原因)、2001年まではマイナスのまま推移。2002年にはようやくプラスに転じている。しかしそれ以降、大きな上昇を見せることなく、営業利益率は横ばいを続けていた。

2007年以降は4%台、直近の2014年にいたっては0.2%しかなく、日本の一般小売店とさほど変わりがない、むしろ低い値を示している。アマゾンドットコムが大きな黒字額を計上するニュースを見聞きした記憶がある人は多いだろうが、これは「利益率の高いビジネスをしているから」ではなく、「スケールメリットを活かした」結果、言い換えれば「規模の大きなビジネスをしている・薄利多売だから」得られたものであることが理解できる。

また、2010年以降営業利益率は減退傾向を続けている。2011年以降は額面上の営業利益、そして純利益まで減少している(2012年、そして直近の2014年では純損失が発生している始末)。これは【Apple、Google、Amazon…デジタル技術分野での三大企業の売り上げ動向などをグラフ化してみる(2012年版情報通信白書より)】でも解説しているが、アマゾンでは「電子書籍端末のKindleの開発・販売も手がけており、同端末は競合するiPadなどに比べて、機能を絞り込み価格を抑える一方、アメリカ国内では通信コストは同社が負担するなど普及に向けた取組みを進めて」いるのが原因。また2012年における損失の原因の一つである、2010年に出資したLivingSocial(クーポン共同購入サイト)の損失に代表されるように、社内外を問わずに投資案件を積み上げ、領域拡大を推し量っており、その影響から利益が圧縮されている。現時点では「電子書籍事業をはじめとする新事業への投資に注力する時期にある」と見た方が納得はしやすい。

さらに2014年の決算発表リリースで強調されているように、同社ではより大きな貢献度が期待できる、有料制会員サービスのプライム会員への投資にも積極的。例えば動画ストリーミングサービス「Prime Instant Video」への投資に関して2014年だけで13億ドルを投資したことなどを挙げ、「我々は今後ともプライム会員のための投資・努力を惜しまない(We'll continue to work hard for our Prime members.)」とリリースでは言及している。実際、2014年だけでプライム会員は53%増加し、アメリカ合衆国に限れば前年比で50%増し、それ以外の地域ではアメリカ合衆国以上の成長率を示しているとのことである。

なお今回発表された2015年第1四半期決算短信では、これまで「その他」区分で他の事業と合算計上していたAmazon Web Services(AWS)事業に関する区分売上が初めて公開されたことが注目されている。

↑ Amazon Web Services(AWS)の売上高(四半期単位、億ドル)
↑ Amazon Web Services(AWS)の売上高(四半期単位、億ドル)(2014年第2-4四半期の値は現時点では未公開)

比較対象となる2014年第1四半期の売上も合わせて公開されたが、それと比較すると約49%の伸びを示す形。四半期の売上全体に占める割合は直近四半期では大よそ6.9%に達している。

AWSについて短信ではCEOのJeff Bezos氏は「AWSは10年ほど前に誕生したものだが、(年)50億ドルもの売り上げを見せるビジネスであり、さらに加速度的に成長する状況にある。そしてアマゾンがいかに新しいアイディアを用いてリスクを取り、事業を果たしていくかの好例といえる」と説明している。

各種営業指標をグラフ化


良い機会でもあるので、アマゾンドットコムの1995年以降における「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」の推移もグラフ化し、状況を確認する。

↑ アマゾンドットコム「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」推移
↑ アマゾンドットコム「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」推移

「総売上」と「売上原価」の差、つまり「粗利」が小さく、さらに営業費用が加わることで利益が食いつぶされ、売上と比べれば利益が非常に小さいことが見て取れる。ただし割合としては小さくとも、規模そのものが大きいので、結果的にダイナミックな額の利益を確保できる次第である。

また、2007年から営業費用が急激に上昇しているのが確認できる。これは2011年提出分から計算様式が少々変わり、売上原価を営業費用に計上したため。提出された書類から、確認可能なものまでさかのぼり、グラフには反映させている。アマゾンの財務体質に根本的な変化が生じたわけではない。



アマゾンでは当初立ち上げ時から5年位の間は、利益が十分にあがらないだろうことを前提に戦略を組んでいたとの話もある。実際には利益を出すまでさらに数年の月日を要したわけだが、赤字の間にも(ご承知のとおりその期間にはいわゆる「ITバブル崩壊」の時期も含まれる)自らの戦略を信じ、売上と規模を拡大し続けた努力と強い意志があったからこそ、今の地位を築くことができた。

アマゾンドットコムイメージ何しろ昔のことなので番組名も含め詳しいことは失念してしまい、記録も見つけられなかったが、あるビジネス番組に登場していたアマゾンの関係者は「予定よりは遅れているが、必ずこのビジネス(アマゾン)は成功する」と確信を持って答えていた。そのシーンがグラフを見るたびに思い起こされる。

現在ではアマゾンは、インターネット上の通販ビジネスで世界ナンバーワンの地位を占めている。そして昨今では電子書籍・リーダーの世界にも乗り出し、関連事業も含め、確実に躍進を続けている。その上プライム会員への独自サービスを次々と打ち出し、ネット通販利用者の囲い込みに惜しみなくリソースを注入している。確固たる意志とそれを体現化するための絶え間ない努力、そして関係者の協力が、今の状況を作り出していることは間違いない。

昨今の電子書籍リーダー「Kindle」への注力ぶり、そして「営業利益率を下げてでも注力する価値のあるものへの邁進」との同社の方針も、同社の中長期的なかじ取りの一環と見れば、十分理解できるというものだ。

なお年次報告書では、主要地域別の年間売上高推移が米ドル単位で記されている。為替レートの問題もあるので単純比較をするのはややリスクが高いが、本社のあるアメリカでは各販売エリアの売上をどのようにとらえているのかとの解釈で見れば良いだろう。

↑ アマゾンの地域別総売上推移(米億ドル)
↑ アマゾンの地域別総売上推移(米億ドル)

いかに北米(アメリカ合衆国+カナダ)がアマゾンにとって、そしてネット通販市場として巨大なのかがあらためて理解できる数字に違いない。


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