全体指数は2009年秋の水準にまで下落(2015年5月分世界食糧指数動向)

2015/06/06 14:00

原材料の価格高騰に加え、為替の変動、エネルギーコストや人件費の上昇などを受け、食料品販売大手や外食チェーン店が続々と価格引き上げを実施する中、食料品の国際価格に対する注目はこれまでにない高まりを示している。その価格変動に関し、概略的ではあるが現状を確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイト上で調査結果を毎月公開している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2015年6月4日に発表された現時点で最新版の値となる、2015年5月分の値を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値を基にグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を見ていくことにする。

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短期はやや下落、中期は全種類で大きく下落


今記事中にあるデータの取得元や各種用語に係わる解説は、一連の記事をまとめ、さらにバックナンバーを収録したページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらのページで確認のこと。

まずは最新の値、つまり2015年5月分を含めた取得可能なデータを基に、1990年以降の各種値の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。いわゆる「ざっと見」用の図である。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2015年5月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2015年5月)

砂糖は価格変動性が高い食料品であり、その内部的な実情は知らなくとも、大きく価格が変化することは多くの人が見聞きしている(店頭で並ぶキロ単位の袋詰めの砂糖価格はそのような変動はあまり無く、価格は比較的安定しているのでご安心を)。そのダイナミックな動きをこのグラフから知ることが出来る。他の食品項目は大よそ2005年位まではさほど大きな動きを示していないが、砂糖だけが大きく動いており、別物の動向のように見える。

一方2005年終盤以降になると、砂糖だけでなく他の食品も少しずつ価格が変化、しかも上昇方向に動き始める。その後直近の数年に渡る(ある意味現在も続いている)金融危機の引き金となる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起きると共に、大きく上向きの流れを見せる。

これらの動きは、主に株式市場の暴落を原因とする。要は投資市場の資金が暴落した株式市場から逃げ、その行く先に商品先物市場が目を付けられた次第。そして市場規模は商品先物市場の方が小さいため、過剰な資金流入と共に全体の価格が底上げされ、それは実商品価格の上昇をも招くこととなる。

その後は「リーマンショック」(2008年9月以降)を起因とする市場の騒乱を経て大きく乱高下を成したあと、高値安定状態に移行している。この数年は各食品項目とも200から250位の領域で小幅な値動きに終始していたのが分かる。ほんの10年ほど前の水準であった100前後と比べ、約2倍から2.5倍の領域。もっとも直近1年ほどに限れば、おおむね下落基調の中にあり、底値ともいえる200を切り、複数の品目で150に手が届きそうな動きを示している。新たな底値として150を意識するようになれば、価格水準は2008年から2009年、リーマンショック前後にまでさかのぼることになる。実際、総合指数となる食料価格指数の166.8は、記事題名にもある通り、2009年秋季の水準となっている(例えば2009年9月は164.3である)。

なお各指標が明らかに値を下げ始めた2014年夏季は、原油価格も下落を始めた時期ともタイミングが一致している。偶然の一致か、あるいは何らかの連動性があるのかは、今件各指標からだけでは確認が出来ない。原油価格は昨今では上昇に転じているため(【原油先物(WTI)価格の推移をグラフ化してみる】)、今後これに連動する形で食料価格指数も上昇すれば、相関関係の観点でしか考査は出来ないが、一考の余地はある。しかし少なくとも今回月は減少を続けており、連動性は見えてこない。

次に示すグラフは、上記グラフの横軸における対象期間を短縮し、記述スタートを2007年1月にしたもの。2007年といえば7月・8月から、「サブプライム・ローン」問題がぼっ発(露呈)し、市場は大変動の動きを示した年。昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの食料価格の動向を、より詳しく知ることができるグラフとなっている。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2015年5月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2015年5月)

興味深いのは上記でも言及している通り、「サブプライム・ローン」問題のぼっ発「以前から」、食料品価格はやや高値に動き始めていた事実。一般に同問題が知られる前より食料市場は「知っていた」のか、それとも人口増加に伴う消費増加による、中期的な食糧需給の変化が市場に反映されていたのか、それともその双方なのか。残念ながらこのデータからのみでは判断は不可能。

もっとも名目GDPの動きを見る限り、新興国の経済発展が加速度的な動きを見せはじめたのは2005年頃から。その動きと各指数の上昇タイミングはほぼ一致している。「知っていた」では無く、人口増加による需給バランスの変化が指数の底上げの主要因だったと見た方が道理は通る。

期間軸を短くしても、砂糖価格の変動が激しい事実に変わりは無い。一方で食肉価格が他の食品と比べて確実に、じわじわと上昇一本やりで上昇していたことが確認できる。それと共にその食肉以外は下げ基調にあることも見て取れる。特に乳製品の下げ方が著しい。また唯一値を上げていた食肉ですらも、ここしばらくの間は下落の動きを示している。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値動きを確認するために、各指標の時系列データを抽出し、「前年同月比」と「前月比」を独自に算出。その数字の変移が分かりやすいように棒グラフ化したのが次の図。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2015年4月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2015年4月)

総合指数は前月比でマイナス1.4%、前年同月比はマイナス20.7%。いずれもマイナス値を示しており、前月比がマイナス幅は小さめであることから、全体的には食料価格はこの一年間内ではやや安値向きの安定志向にあることが分かる。

個別項目を見ると前月比では油脂と砂糖が多少の上昇のみで、後は下落、前年同月比ではすべての種類で下落、食肉がいくぶん下げ幅が小さいものの、それ以外は2割から3割近くの減少と大きな後退の動きを示している。中でも乳製品は3割に手が届く状況で、群を抜いた下げ幅。ここ一年ほどは日本国内でも乳製品不足が問題視されたが(一部では今なお購入数量の制限が続いている)、その時と比べれば状況は改善≒価格の下落が起きていることが確認できる。

前年同月比では3割近くもの下げ幅を見せた乳製品に関し、その事由をリリースから読み解くと、チーズは価格を維持し続けたが、北半球の生産エリアにおいて生産がピークに達していること、ヨーロッパやニュージーランドで輸出の強化が図られていること、加えて中国における粉ミルクの輸入量への不安感が市場の重しとなっている。もっともこの価格低迷で中東や北アフリカにおける需要が喚起されたとの話もある。

農林水産省の最新レポートで現状を確認


今記事で毎月連動性のある、付随的資料として精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、2015年5月29日に更新された2015年5月分をざっとではあるが確認する。最新レポートによると、国際的な穀物需給に関して、米で生産量が増加するものの、小麦・大麦・とうもろこしで減少。前年度は下回る見込み(24.784億トン)。他方、消費量は大麦・小麦・とうもろこし・米で増加し、史上最高値を示した前年度を上回り、史上最高の量となる見込み(24.863億トン)。そして生産量が消費量をほんのわずかだが下回ることから、期末在庫量見込みは前年同度比で下落する傾向を示している(5.193億トン、生産量比で20.9%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

昨今では鎮静化の動きを見せつつあるものの、今なお地政学リスクにおいて食料供給面でもっとも影響を与え得るウクライナ地方だが、資料の上では今のところ大きな動きは指摘されていない。ただ、例えばウクライナは世界の小麦輸出量の7%、とうもろこしの13%など大きなシェアを持つため、その動向の成り行きには注目をせざるを得ない。ちなみに日本は世界の全小麦輸入量の3.8%、とうもろこし輸入量の12.8%を占める、輸入大国である。

日本国内に限れば(世界全体の生産量には関係はほとんどないものの、日本国内の価格動向には大きく影響を及ぼす)、エネルギーコスト(電気代)の高騰が農家に大きな影を差している。また、食料品の加工や輸送にも小さからぬ負担となることから、市場価格の上昇が生じている。食料品価格は食料需給そのものだけでなく、燃料動向にも小さからぬ影響を受けるとの点で、合わせて注視をしたい。


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