雑誌とテレビがプラ転、ネットはプラス18.2%と大きく伸張(経産省広告売上推移:2015年6月発表分)

2015/06/10 11:00

経済産業省は2015年6月9日、「特定サービス産業動態統計調査」の2015年4月分における速報データ(暫定的に公開される値。後程確定報で修正される場合がある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によれば2015年4月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス6.5%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5部門(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)では雑誌、テレビ、そしてインターネット広告がプラスで、それぞれプラス2.5%・プラス0.8%・プラス18.2%を計上した。下げた部門では新聞が一番下げ幅が大きく、マイナス5.4%の値を示している(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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4マス全マイナスだった前月から転じ、雑誌とテレビがプラスに


今件記事で検証しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する共通要件の解説は、記事集約ページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは主要5部門の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2015年3月-2015年4月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2015年3月-2015年4月)

今件データは前年同月比を示したもので金額そのものでは無い(棒が長いほど、市場規模が大きいわけでは無い)。同時に前回月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分の2015年3月分データと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表されている確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。

前回月では4マスすべて、つまり新聞、雑誌、テレビ、ラジオがマイナス値を示していたが、今回月ではそのうち雑誌とテレビがプラスに転じることとなった。もし仮に3か月連続して4マスすべてがマイナスとなれば、広告市場に大きな変化が生じている動きととらえることもできたが、どうやら早計だったようだ。一方、インターネット広告は前回月からさらに伸び率を積み増しし、2割近い上昇率を見せている。

今回計測分となる月、つまり2015年4月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する部門の動きを確認すると、「4マス大よそ軟調、電通の雑誌とテレビのみがプラス」「インターネット広告は堅調」の動きを示している。電通のみの連動となるが、大よそ方向性としては一致しているようだ。

なお4マスとネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。屋外広告やSP(セールス・プロモーション)・PR・催事企画とその他が健闘している。もっとも大きなプラス幅を示した「その他」は金額も大きく(テレビと肩を並べている)、広告業の売上全体にも相当の影響を与えたことから、4マスで複数項目がマイナスを示した今回月でも、全体としてはプラスが計上される結果が出ている。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2015年4月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2015年4月)

「その他」は多種多様なスタイルの広告が織り交ぜた形となっており、技術進歩に伴い項目分けが難しくなった類の事案が次々と組み込まれ、膨張している感が強い。同じ項目ではあるはずなのだが、それこそ1年の間に構成内容が大きく膨張している可能性は否定できない。電通・博報堂の2社における動向を追った広告費関連の記事でも似たような状況が生じており、現状を把握するために用意された区分としては、前年同月比で状況精査をする際の弊害になりつつある。新たな部門の追加が求められよう。

新聞とインターネット広告の差は1.68倍


今回も該当月(2015年4月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化を行い、状況の確認をしていく。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手だが、その2社がすべてでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されておらず、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。その点に注意されたい。

↑ 月次広告費(2015年4月、億円)
↑ 月次広告費(2015年4月、億円)

電通・博報堂のみの広告費動向では今なお新聞が金額的に優勢。しかしその2社以外の大中小すべての日本国内における広告代理店を含めた今件データでは、インターネット広告のウェイトが電通・博報堂よりも高い企業も多数含まれていることから、全体に占めるインターネット広告の額比率が高めとなり、ここ数年の間に両者の金額面での立ち位置が逆転している。詳細は【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2015年)(最新)】で解説の通り。現時点では2014年1月を最後に、新聞の金額はインターネット広告を超えておらず、金額面で4マスとネットにおける順位はテレビ・インターネット広告・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約176億円。約1.68倍の差がついている。もちろんインターネット広告の方が上。4月はインターネット広告の閑散期にあたるが、新聞も軟調な動きを示しており、結果として差は大きなものとなった。また、「従来型メディアの紙媒体全体の広告費」は347億円で、これはインターネット広告費よりも下。つまり今回月は先回月に続き「インターネット広告の売上高が、大手4マスのうち紙媒体全体の広告費を上回った」ことになる。

一方話題のインターネット広告だが、中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっている。他方、その機動性の高さと使い勝手の良さもあり、金額面だけを追い続けると、浮き沈みが大きい。2011年以降は3月と12月に大きく伸びる動きがパターン化しているが、これは【ネットショッピング動向をグラフ化してみる】でも精査の通り、この時期にインターネット経由で商品が多く売れる時期のため、それを見込んでインターネット広告への資金投入が活性化した結果と考えられる。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2015年4月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2015年4月)

2011年以降は明確な形で、3月と12月に突出した額が投入されていることが確認できる。ただしそれ以外の月でも多分にぶれがあるものの、上昇していることに違いは無く、中期的には確実に成長を示しているのが分かる。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。上記の通り額面が大きな部門もあるため、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2015年4月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2015年4月分まで)

雑誌(黄色)と新聞(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額は漸減していくのは道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を大量投入するのは付き合いによるものか、条件交渉の結果によるものかは定かではないが、少なくとも広告の直接対価によるものとしては考えられないので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されていると見なせる。

そして雑誌・新聞共に紙媒体であることから、デジタル系メディアの浸透に伴い、割りを食った形となっていることは容易に想像できる。ただし紙メディアの一部は、その内容をデジタルに代えてインターネット広告を掲載する媒体の後押しをしている(新聞社によるウェブ上の無料記事展開、有料電子新聞が好例)。単純に紙媒体が衰退しつつあるのも一面だが、その上に載るコンテンツの、アナログからデジタルへのシフトが進んでいる現状を表す一面ともいえる。

昨今の動向を見返すと、緑色の線で示されているインターネット広告が確実に上昇基調にあること、藍色の「ラジオ」が復調の兆しを見せていたが失速してしまったのが把握できる。他方、今回大きな下げ幅を示した新聞の状況が、あまり好ましくないのも分かる。ネットの好調、紙の軟調が、今後のメディアや広告上でのトレンドとなるかもしれない。


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