4マス軟調継続、インターネットは堅調さを維持(電通・博報堂売上:2015年5月分)

2015/06/10 08:00

博報堂DYホールディングスは2015年6月9日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2015年5月分の売上高速報を公開した。一方、電通も同年6月5日付で、同じく同社5月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2015年5月次の売上データが公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去のデータなどを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

スポンサードリンク


両社とも4マスはすべてマイナスに


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらも確認してほしい。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年5月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年5月分種目別売上高前年同月比

4大従来型と呼ばれる主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、下げ幅の違いはあれど今回月はすべてマイナス。特に博報堂の雑誌は2ケタ台%と大きな下げを示している。前年同月(2014年5月)の同項目はプラス9.4%だったのでその反動の影響もあるが、それ差し引いても下げていることに違いはない(2年前同月比はマイナス5.4%)。

他方、前年同月でも両社のテレビ、博報堂の雑誌とラジオ以外はマイナスを示しており、今回月でもマイナスの項目は下げ基調が継続していることになる。中でも電通における新聞の下げ幅の大きさが目に留まる(前年同月はマイナス10.8%だった)。

4マスの軟調とは対照的に、インターネットは引き続き堅調に推移している。今回月は両社とも10%台のプラスに留まったが、前年同月は両社ともにプラス30%台の成長を示しており、そこからさらに10%強の上乗せが出来たことになる。

4マス以外の従来型広告では高安マチマチな感だが、唯一博報堂の「その他」が異様な伸びを示している。ほぼ2倍もの成長のため、グラフの形状そのものを大きく揺るがす形となった。詳細を確認すると博報堂本社の売上が大きく躍進しており、これが貢献した形となっている。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通りとなる。やはりインターネット(インタラクティブメディア)がずば抜けた伸びを見せている。

↑ 参考:電通2015年5月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2015年5月度単体売上(前々年同月比)

ネットと「その他」以外では従来型広告がややぶれはあるもののそれなりに良い動きを示し、一方で4マスの軟調ぶりが改めて認識できる。

特に注目を集めるインタラクティブメディア(インターネット)の成長は、先月試算分の約4割からさらに伸びて6割近く。2年で約6割の成長は普通の広告ではよほどの小規模か新興市場でないとまずありえない。規模も拡大を続けており、今や数少ない期待の分野。他方従来型4マスは今回月ではテレビがかろうじてプラスだが、それ以外はマイナス。比率は小さめだが、市場規模が大きいため、全体に及ぼす影響も大きくなる。喜ばしい話には違いない。

各年5月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる5月を基準にした毎年5月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、特殊事情、例えば選挙やオリンピックのような、広告と深い関係を有し売り上げに大きく影響がある事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年5月、億円)(-2015年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年5月、億円)(-2015年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。直近となる2015年5月では前年までの上昇ぶりからやや失速し、神戸を垂れたような状態となっている。金融危機ぼっ発前の水準には今一つ足りず、やや不安が生じてしまう。やはり4マスの軟調さが響いたのだろうか。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解した上での問い合わせが少なからずある。例えば今回月では新聞の売上高の下げ率が両社でほぼ同じことから、売上額(あるいは下落額)でもほぼ同じではないかとする誤認である。もちろんそれは間違い。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2015年5月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2015年5月における部門別売上高(億円)

インターネットは今回月の前年同月比で1割超のように、毎月目覚ましい成長率を示しているものの、売上金額=市場規模としてはまだまだ他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、マーケティング・プロモーションのようにほとんど変わらない部門もあれば、クリエーティブやテレビのように約2倍の差を示す部門もある。

他方「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も大きい。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合ではデータの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたい所だ。



今回2015年5月分は4月の大きな成長からやや転じてつまづいた感はある。ここしばらくの間続いている4マスの軟調ぶりが、全体にも影響を及ぼすようになってきたのだろうか。多くの項目で前年からの反動の気配も無く、気になる動きではある。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー