現状一歩後退、先行き一歩前進…2015年5月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇

2015/06/08 16:00

内閣府は2015年6月8日付で2015年5月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落して53.3となり、水準値の50.0を超える状態は確保した。先行き判断DIは先月から続き6か月連続して上昇し54.5となり、水準値の50を超える状態が続いている。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向となり、基調判断は先月から変わらず景況感の好転化を反映する形で「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、夏のボーナス及び賃上げ、外国人観光需要への期待等がみられる」となり、先月の賃上げに夏のボーナス期待の文言が加わることとなった(【平成27年5月調査(平成27年6月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状・先行き共に小幅な値動き


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2015年5月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス0.3ポイントの53.3。
 →「やや良くなっている」が減り、「やや悪くなっている」が増加。
 →家計はサービスが上昇。企業は製造・非製造共に下落。雇用関連は小幅に上昇。

・先行き判断DIは先月比で0.3ポイントプラスの54.5。
 →物価懸念は続くが、夏のボーナスや賃上げ、外国人観光客需要の期待を受け、飲食と非製造業以外の部門が上昇。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

昨年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている(税関が悲鳴を上げているとの話もある)。一方でガソリン価格は昨今の原油価格の上昇気配を受けでじわりと値を上げており、先月に続き今月のコメントからもガソリン価格に関する言及が消えているのが気になる。

先行きDIにおいては物価上昇で生じる景況感への悪影響が懸念されるが、昨今では賃上げなど就業者の手取り増加に伴う需要喚起、及び外国人観光需要への期待が強くなっており、各指標の高値維持・上昇にも大きな影響を与えているものと考えられる。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

現状飲食大幅上昇で基準値超え


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2015年5月)
↑ 景気の現状判断DI(-2015年5月)

今回月は消費税率改定後14か月目の月。小売店側から見た駆け込み需要の反動に関する文言はすでに消えている。直接の駆け込み特需の反動による景況感の軟調さは、その文言が消えたタイミングの半年経過でほぼ消失したと判断できる。一方で消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させるに必要となる材料が見当たらず、低迷感は薄まりながらも継続していた。さらに電気代や食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は重圧感の中にあった。

原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしているが、一方で昨今では円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けている。

水準値(50)以上の項目は、今回製造業が大きく下げたことで届かない状態となってしまったものの、それ以外はすべて超えた。先月唯一基準値を割っていた飲食関連も、今回月は大きく戻して超える形となった。ただし企業動向関連は軟調さで占められ、これが足を引っ張り、全体としてはわずかながらもマイナスを計上した。

景気の先行き判断DIは上げ幅こそ小幅だが、大よその項目で前月比プラスを示した。

↑ 景気の先行き判断DI(-2015年5月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2015年5月)

最大の上げ幅を示したのは住宅関連と製造業でプラス1.5。特に住宅は先行きの中では唯一今なお基準値を超えいなかった項目だが、今回の上昇で50.0を超え、全項目が基準値超えを果たすこととなった。住宅関連の先行きDIにおける低迷は、中期的な住宅需要の低迷を予見した動きと読むこともできるので、今回のような上昇はより大きな期待がかかるものとなる。

円安でインバウンド効果と輸入品の値上がりと国内回帰と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・株価が2万円となったことで富裕層の貴金属を中心とした高額品の購入数や、外国人旅行者増などによる化粧品販売額が大幅に増えて、全体の金額増に貢献している(百貨店)。
・晴天に恵まれ、単価が高いスイカも多く売れている。ペットボトル飲料等の売上も順調である(スーパー)。
・食料品の値上げが相次いでおり、年金生活者の暮らしは厳しい。また地方の企業では賃金が上がっていないため、消費はなかなか良くならない(その他専門店[布地])。
・今年はゴールデンウィークの日取りも良く、天候に恵まれたことから、期間中の売上は前年を上回ったが、ゴールデンウィーク後は客の動きが悪く、全体での売上は前年を下回った(高級レストラン)。
・北陸新幹線が開業し、4-5月に東京へ遊びに行き、東京で散財して小遣いがないという客の声が聞かれる(タクシー運転手)。

■先行き
・夏のボーナスが前年を上回ることや株高を背景とした資産効果もあり、インバウンド需要も引き続き見込まれるため、好調が続く(百貨店)。
・夏ごろに発売されるプレミアム付商品券に注目が集まり始めており、今年後半の消費活性化に期待が高まっている(商店街)。
・現状の好調を維持できるものとみられる。前月末、大型ショッピングモールが20キロ圏内にオープンしたが、今のところ大きな影響も無く推移している。また、引き続きインバウンド効果が見込めると予測している(百貨店)。
・円安や電気料金の値上げで、製品コストが現状よりも上がるため、各種商品の値上げは必至の状況となる。加えて、消費者の生活コストの上昇が、消費マインドを押し下げると予想される(百貨店)。

今回引用している範囲は「家計」の全国における代表意見のみだが、昨今の景気情勢が非常によく表れる形となっている。株価上昇による消費性向の底上げや、円安に伴う商品価格の値上げによる消費性向減退への不安、夏のボーナスなどによる特需への期待などが確認できる。「現状」における最後のタクシー関連の話は、一見すると単なる愚痴でしかないが、見方を変えると交通網の発達による消費の都心部へのシフトとも解釈でき、色々と考えさせられる。

なお複数項目で挙がっている「インバウンド」とはこの場合、海外からの観光客を意味する。国内の供給に関して国外から需要が到来することから、日本国内に限れば需要は底上げされる形となる。この言い回しは昨月も使われており、外来観光客による需要喚起が大きな期待要因となっていることが改めて認識できる。

他方上記引用範囲には無いが、企業動向では円安による輸入原材料の価格上昇や電気料金の上昇に伴うコストアップに窮する事例が報告されている一方、企業の海外への売り上げ増に伴う活況への期待も寄せられている。雇用関連でも企業の積極的な求人活動が報告され(「依然として建設や医療、介護を中心に人手不足を訴える事業主が多く、求人を出しても応募が少ない状況が続いている」「求人数の増加傾向は続いている。企業へのヒアリングでも、採用を減らすというマイナス情報はない」)ている。

また円安に係わる動向で、国内商品の価格状況に関してはネガティブな話が多いが、その一方で株価動向と共にムードの堅調化、生産絡みの国内回帰や輸出品に絡んだ受注増加の声が見受けられる。

電気料金に関しては一様に、景気への影響の観点では否定的な意見が多い。電気料金上昇の起因は、一部に海外からの輸入資源価格の上昇があるが、多分に震災以降の発電様式のアンバランスな状態を起因としており、大部分の原因は国内問題によるもの。早急な対応が求められる。

現状はサービス、先行きは小売がポジティブ…詳細精査


2014年4月分の公開値を基に、消費税率動向について細かい部門別に別途記事として精査をした【景気ウォッチャーの指標動向から消費税率改定後の景気行き先を推し量ってみる】の手法を用い、簡略的にではあるがしばらく継続的に現状・先行きDIの詳細動向を確認している。今回もその例にならい、2015年5月分とその前月の2015年3月分との差異、つまり一か月分の変化を詳しく見ていくことにする。まずは現状DIについて。

↑ 2015年4月から2015年5月における現状DIの変動値
↑ 2015年4月から2015年5月における現状DIの変動値

今回月の現状DIは高安マチマチの状況にあるが、細部を見ると小売は大よそマイナス、スーパーや百貨店など大規模小売店舗が大きくマイナス、サービス関連が大きめにプラスであることが分かる。このうち飲食関連はゴールデンウィークにおける日取りの良さと天候に伴い、客足が進んだことがプラスに働いたものと考えられる。レジャー施設関連やその他サービスも大きく上昇しており、理解はできる。

↑ 2015年4月から2015年5月における先行きDIの変動値
↑ 2015年4月から2015年5月における先行きDIの変動値

↑ 2015年5月における先行きDI
↑ 2015年5月における先行きDI

現状同様先行きでも百貨店やスーパーはマイナス。他方、商店街・一般小売店や家電量販店は大きくプラスを計上しているが、前者は前月までの低値の反動の要素が大きい。後者はもちろんインバウンド効果。雇用関係がやや大きめなマイナス値なのが気になるが、これも現時点での値を見れば分かる通り、反動的な下げによるもので、不安視の必要は無い。むしろ衣料品専門店の下落が気になるところ。

衣料品専門店の具体的コメントを確認すると、来客数の減少、客の購入意欲の減退などの声が見受けられる。一方で気候が良いことから夏服への動きが良いとの話もある。気象庁の長期予報では6月は平年以上の気温が予想されるとの話もあり、もう少し様子を見た方がよさそうだ。

他方、軽自動車税の増税に関する駆け込み需要の反動などでしばらく需要が減退することが予想される乗用車・自動車備品販売店は、先月に続きプラス値にある。これは意外といえば意外。



現状DIの上昇感や各種コメントを見る限り、懸念は少ないわけではないが、少なくとも景気低迷感は底を打ち、反転に転じた雰囲気がある。震災後や、その後の超絶円高を示した時のような、隅から隅までの絶望感的な空気とは大きく異なるのは事実。しかし立ち上がり感はまだ弱い。単なる底打ちに加え、何か加速をつけるような材料が欲しいところだ。賃上げへの期待もあるが、これは実体化されないと言葉通り「絵に描いたモチ」となってしまう。消費税率引き上げの延期はさらなる消費減退傾向を押しとどめてくれたものの、引き上げ要因にはつながらず、しばらく後に再び低迷が起きるリスクを多分に伴う。

原油価格はチャート的には2月頭で底を打ち、上昇の気配を示したものの、その後いくぶん値を上げた後は横ばいに推移していた。それが冬場の景況感を支える大きな要因であったことには違いない。昨今では春以降需要が増加する動きに連れて原油価格も上昇を見せ始めているが、それもここ一か月ほどは60ドル内外で安定的な値動きに移行している。今後さらに上昇する動きを示せば、国内のガソリン価格も連動する形で値は上がり、景況感には確実にマイナスとなる。その点が懸念材料ではある。

円安に伴う、さらには資源価格そのものの上昇により、食材を中心に値上げが相次ぎ実施されていることを受け、消費マインドの冷え込みへの不安も大きい。その上、ガソリン代はともかく電気代は高値をつけたままなのも、不安材料として見逃せない。この電気料金周りは震災後の悪癖を引き継いだ現況が大きく影響しており、理性と知性をもってすれば必ず解決しえる問題に違いない。あるいはこれを果たすことで、経済面でも大きな転換点となる可能性は高い。この点が現在の日本の低迷感・景況感における「もやもやとした重圧感」の大きな要素となっていることに違いは無い。

円安といえば生産拠点や商品発注の国内回帰の動きも少しずつ増えている。「中国での生産に見切りをつけ始めた企業が多いようで、中国や東南アジアの工場で大量生産しているメーカーからも約15年ぶりに声がかかった」などのコメントが確認できる。国内回帰は国内における需要喚起、経済においては血流となるお金の周りの増加を意味する。この流れが継続すれば、景況感を支える大きな柱となるのだが。


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