客数減らしても客単価プラスで売上維持の方向か…牛丼御三家売上:2015年5月分

2015/06/06 12:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2015年6月5日、吉野家における2015年5月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス2.9%となった。これは先月から転じ、5か月ぶりのプラスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年5月における売上前年同月比はプラス0.1%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス3.7%との値が発表された。今回月は3社すべてが前年同月比でプラスを計上することとなった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通り。特記事項が無い限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2015年5月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年5月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2014年5月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はプラス11.2%。同社では2014年4月1日から消費税率改定に伴い主力メニューの牛丼価格を引き上げており、これが客単価の上昇と客数の減退(マイナス15.2%)に結びつく形となった。

ベジ牛従って今回月は「牛丼値上げによる客数減少・客単価増加が生じた前年同月」との比較となる。さらに【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】で報じたように、2014年12月17日から主力商品の牛丼価格をはじめ各種商品価格の引き上げを断行したことにより生じた、客数の減少と客単価の増加が影響要因として計上される。その上【吉野家夏の風物詩的な鍋「牛バラ野菜焼」、早くも4月23日から復活販売】でも伝えたように「牛バラ野菜焼」、そして【吉野家の牛丼が温野菜で新たな世界を切り開く・半日分の野菜を盛り込んだ「ベジ丼」など登場】の通り、新たな客層の誘因商材となる「ベジ丼」などが登場し、こちらも高客単価商品として影響を与えている。

結果として客単価は2割近い底上げ、客数は大きく減少、差し引きでわずかな売上減の形に収まっている。客単価・客数それぞれ前年の反動で逆方向の影響が多分にあるにも関わらず大きな動きを示しており、やや過剰な動き、あるいは企業側が意識した上での動きにも見受けられる。

以前の牛丼の値下げ・値上げなどに伴う反動の影響を最小化するため、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。2回の牛丼の値上げの影響を受けて客単価が大きく上昇しているが、その分客数が足を引っ張られ、売上はむしろわずかだが減退してしまった形。ここ数か月吉野家では、前々年同月比で確認すると、客数は減り気味でもその分客単価の底上げで売上を維持し「評価できる値上げ」の形を示していたが、今回月では客足の遠のきの方が大きな力となり売上をマイナスに引っ張っている。とはいえその値は大きなものでは無く、微調整のさなかのぶれのようにも感じられる。

↑ 牛丼御三家2015年5月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年5月営業成績(既存店)(前々年同月比)

続いて松屋。5月7日からはハンバーグ祭りといわんばかりに「ブラウンソースハンバーグ定食」「うまトマハンバーグ定食」とハンバーグ系定食を続々投入し、さらにさっぱり感がポイントの「ネギだく!塩ダレ豚とろろ定食」の展開も5月21日から開始している。ベースとなるメニューにアクセントを添えるソースや調理方法、プラスアルファな食材で新たなメニューを仕立てる手法はお馴染みのもので、まるで週刊新定食的な感もある。それらはすべて高単価で、こちらも吉野家同様に客単価の引上げを意図しているかのように見える。

5月の業績は、客数の下落を3社中最小限に留めたもの、客単価の上昇は他社には今一つ及ばず。結果として3社の中では一番売上のプラス幅が小さいものとなった。もっとも他社との差は3%前後でしかなく、誤差の範囲ともいえる。

最後にすき家。5月の動向を振り返ると、前月末からうな丼やうな牛、さらに月末ではまぐろ丼をメニューに加えるなど、牛丼屋の様相とは思えないメニューを相次ぎ展開。いずれも客単価をグンと引き上げる価格となっている。さらに【すき家の牛丼並盛350円へ値上げ、肉と玉ねぎも2割増に】でも伝えている通り、主力商品の牛丼を4月15日から値上げしたしており、客単価の上昇幅も吉野家に次ぐ大きさのものに。もっともその分客数の減少ぶりも大きく、売上高の上昇は3.7%に留まってしまう。とはいえ今回月では3社中最大の伸びに違いない。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年5月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年5月)

客数の減少ぶりは施政方針の変更によるものか


前月精査分から新年度となり、2014年4月の消費税率改定に伴う価格変化の影響(大よそ客数減・客単価増)の反動が生じるため、販売状況に変化が無ければ客数のプラス化が期待できる、はず。しかし客数は減少を止めていない。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年5月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年5月)

公開値はあくまでも売上に過ぎず、利益の確認はできない。売上をそこそこ以前の水準に維持できても、客数が大きく減ったのでは、運用上のリソースを減らす点ではプラスだが(店員の負荷が減る)、店舗運営上の柔軟性に欠けることになる。

あるいは薄利多売から厚利少売へのシフトが起きている可能性はある。元々脱デフレ感に伴うコスト上昇は続いているので、その流れに乗じた、あるいは乗り遅れないためのかじ取りとの解釈である。吉野家の鍋メニュー導入の際に語られたキャッチコピーは「うまい・やすい・ごゆっくり」だが、これもこの戦略を示唆したものと見ることもできる。さらに「やすい」が「あんしん」や「ヘルシー」、「みんなで」に差し替わるとしても不思議ではない。

客単価の引き上げで客数の減りをカバーして売上、利益を維持する施策の場合、客が遠のく際のリスクは上昇する(客数の減少に対する売り上げの減退度合いが大きくなる)が、店員の負担は軽減される。間接的に一層確かなサービスの提供も期待できる。商品在庫のリスクや物流コストも圧縮されうる。

食生活の変化に伴い、コンビニや宅配、通販などにシェアを奪われ、廉価系ファストフードは厳しい戦いを強いられている。ここ数年来継続した動きを示している牛丼チェーン店の客数減少も、単純にコスト高に伴う客単価の引き上げによる売上に連動するものではなく、客層の絞り込み、自社のポジションの変化を模索したものとする視点で見直すと、吉野家の鍋メニューの投入や「ベジ丼」の展開、松屋の高単価定食の導入ラッシュも、納得の動きに見える。

類似業界として良く比較されるハンバーガーチェーン店では、マクドナルドが苦戦を強いられ、モスバーガーやケンタッキー・フライド・チキンでは高単価・高品質をさらに前面に押し立てて独自ブランドの権威付けを高め、売上を維持すると共に確固たる地位を築き上げつつある。

今年一年の動向次第では、牛丼チェーン店における社会的立ち位置は、これまでのものから大きく変化することになるかもしれない。


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