各社の店舗展開戦略が見えてくる…牛丼御三家の店舗数推移(2014年)

2014/12/11 08:00

当サイトでは牛丼チェーン店の大手三社である吉野家・松屋・すき家を「牛丼御三家」と命名し、各店舗の月次営業実績を基に売上や客数、客単価の動向を毎月精査している。各社の営業成績報告書にはそれらの値の他に、店舗数の推移も記載されている。店舗数の変遷は短期的にはあまり変化はないものの、中長期的に見ると各社の店舗展開戦略が透けて見える、興味深い値ではある。今回はその店舗数の推移などを確認し、状況を把握していく。

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吉野家、松屋、すき家の順に店舗数の成長を停止へ


今回店舗数動向の精査対象とする期間は、2006年1月以降2014年11月まで。各社の月次公開値を基に該当する値を抽出し、グラフとして生成したのが次の図。

↑ 牛丼御三家店舗数推移(2006年1月-2014年11月)
↑ 牛丼御三家店舗数推移(2006年1月-2014年11月)

2006年1月の時点では、店舗数は吉野家が一番多く、次いで松屋、すき家の順だった。それが2006年6月にすき家と松屋の店舗数が逆転し、すき家が第2位に。そして2008年9月には吉野家とすき家が逆転し、すき屋が店舗数ではトップにつくことになった。

その後、吉野家は2009年中は漸増だったが、それ以降はほぼ横ばい。新店舗が無いのではなく、採算の取れない店舗に関する整理統合・リニューアルなどを続け、あくまでも効率の良い、時勢にあった店舗の展開を維持している。要は新陳代謝を続けながら店舗数規模をキープしている次第。グラフもほぼ横に一直線のまま。

松屋は2011年半ばあたりから店舗数の大幅な拡大戦略に転じたものの、2013年に入ってからはぴたりとその動きを止め、店舗数維持施策に移行することとなった。そしてすき家は店舗数の継続的な拡大を見せていたが、2013年に入ってからはその成長スピードも緩やかなものとなり、2014年初頭の「牛すき鍋定食」などの投入をきっかけに店舗運営のリソース不足が顕著・露呈化するタイミングに合わせ、店舗の大規模なリニューアルを開始。その時期から店舗数の拡大傾向もぴたりと止まっている。ここ数か月ではむしろわずかながら減少傾向すら見られる。

この数年に限った変化を明確にするため、グラフ生成範囲を2008年以降に限定したのが次の図。縦軸の最下層を500店舗にしてあることに注意。

↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年11月)
↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年11月)

吉野家が店舗数成長を止め、松屋が背伸びをした後に吉野家に続き店舗数の拡大をストップ、そしてすき家がそれに続く様子がよくわかる。すき家は複数の要因が今年の頭に発生したのがきっかけと判断してほぼ間違いないが、吉野家と松屋は表面上では何らかの施策変更に関して発表した記録は無い。内部的に戦略のかじ取りを修正したのだろう。

これらの動向を把握しやすくするため、各社店舗数の前月比(前年同月比にあらず)を折れ線グラフにしたのが次の図。

↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年11月)
↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年11月)

すき家は一貫してプラス1%内外を維持し、店舗数漸増の動きを見せていたのが良く分かる。ただし単純な店舗数による折れ線グラフではつかみにくかったが、2012年に入ってから一段階、さらには2013年以降になるともう一段階の形で増加ペースを落としているのが確認できる。2013年に入ると明らかに前月比プラス0.5%の領域に留まり、店舗数そのものの推移グラフでカーブがゆるやかになった状況が把握できる。そして上記にある通り、2014年に入ってからはむしろマイナス圏での値動きを見せる機会が増え、店舗数はほぼ横ばいに移行する。

松屋はプラマイゼロのラインよりやや上なものの、その値もわずか。ところが2010年半ばあたりから、ややグラフの動きが上向きとなり、2012年に入ってからはむしろすき家以上の伸び率を示していた。そして2013年に入るとぴたりとその動きを止め、プラスマイナスゼロを行き来する。他方吉野家は2010年こそ大きなぶれがあったものの、2011年以降はゼロ付近でのもみ合いに終始している(=店舗総数に大きな変化が無い)のが確認できる。

そして3社とも2014年に入ってからは、店舗の増減数に大きな動きは無く、収束の形を見せている。店舗数の積み上げによる拡大戦略や、リストラによる店舗数の削減ではなく、適切な新陳代謝による市場規模の維持に舵とりを変えたようにも見える。

客単価や客数推移も確認


良い機会でもあるので、月次の牛丼御三家定点観測記事ではあまり解説していない、客単価と客数推移も、直上と同じ2008年以降の分についてグラフを生成し、吟味を行うことにする。
↑ 牛丼御三家客単価推移(前年同月比)(2008年1月-2014年11月)
↑ 牛丼御三家客単価推移(前年同月比)(2008年1月-2014年11月)

↑ 牛丼御三家客数推移(前年同月比)(2008年1月-2014年11月)
↑ 牛丼御三家客数推移(前年同月比)(2008年1月-2014年11月)

まず客単価だが、2011年3月の震災前までの数年間に渡り、牛丼御三家による「ビーフならぬチキンレースの展開」とまで言われた、主力商品の牛丼における(期間限定)値引きが繰り返されたことで、大いに下落した動きが確認できる。その後は牛丼の価格がやや高めな吉野家が100%超の領域を維持し、メニューの多彩さでは御三家中一番のすき家が一時的に盛り返すもその後失速、一方で松屋はほぼ均一を維持している形となる。

そして吉野家が牛丼を2013年4月に値下げし、御三家の牛丼単価が横並び状態になると、吉野家の客単価はその影響を受けて大きく下落することになる(前年同月まで高値だったため)。すき家もほぼ同じタイミングで落ちているが、これは単に前年の反動でしかない。そして2014年4月に入ると吉野家が大きく戻しを見せているが、これは2013年12月から発売を開始した「牛すき鍋膳」の効果やその後代替商品として同様の用具を用いて提供された「牛バラ野菜焼定食」の効果に加え、牛丼値下げ開始から1年を経過して値下げの影響が無くなったこと(前年同月比計算のため)、さらには消費税率改定に伴いいくぶん価格を上乗せしたことによるもの。

一方客数推移だが、震災前までの「チキンレース」で大いに盛り上がったものの、その成果はすき家が1番、松屋が2番となり、吉野家はあまり大きな恩恵を受けていないことが分かる。その後、牛丼値下げ競争も終息し、震災を経て、消費者の消費マインドの変化や競合他業界のシェア浸食(例えば焼きタイプの牛丼の参入や、コンビニなどの他業種による中食の普及)により、2012年以降は客足は概して軟調。前年同月比で100%未満、つまり客数の減退が続いている。

しかし吉野家は上記にある通り、主力商品の牛丼値下げが功を奏し、さらには鍋メニューの爆発的なヒットを受けて、他の2社から抜きんでる形で大いに客数を伸ばしている状況となった。牛丼値下げの効用の反動が生じた2014年4月以降は吉野家が大きく数を減らしているが、これも直近の2014年11月にはプラスに転じている。同年10月末から販売を再開した「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」によるところが大きいのは言うまでもない。

3社の売上実績は?


月次の牛丼御三家の販売動向とはやや趣を異にする、直接には深い関係は無い話ではあるが。月次報告分析記事や今件店舗数動向記事を参照した方から、「3社の売上そのものの規模」についての問い合わせがあったことを受け、補てん資料の形として、3社の売上の現状をグラフに描き起こしておく。

これは3社の終了決算期の決算短信を元にした、牛丼セグメントにおける売上高を算出したもの。国外展開分は含まず、牛丼以外のセグメントも除外している。またすき家は類似牛丼分野のなか卯も含めている(切り分けた形での売り上げ発表は行われていない)。

↑ 牛丼御三家売上比較(直近終了期、国内牛丼セグメントのみ、億円)
↑ 牛丼御三家売上比較(直近終了期、国内牛丼セグメントのみ、億円)

店舗数動向からある程度予想はできるものの、そしてなか卯が加わるとはいえ、すき家が他の2社を大きく引き離した売り上げを示している。次いで吉野屋、松屋が続く。無論これらはあくまでも売上のみで、利益率、利益額はまた別の話であることを、念のため書き記しておく。とはいえ売り上げ規模による各社の立ち位置はある程度認識できよう。



2013年は吉野家の鍋メニューの登場がすべての話題を吹き飛ばした感のある牛丼業界だが、2014年はすき家の「ワンオペ」に代表される人材不足問題に始まり、第三者委員会による状況精査の上、体質の大規模な改善が行われるという大きな動きがあった。それに加えて4月の消費税率改定に伴う各社の価格変更。さらには松屋が7月に牛めしをプレミアム牛めしへ一部店舗で置換し、実質的な値上げを敢行。すき家が8月に牛丼価格を引上げ、そして先日吉野家も牛丼価格など牛肉メニューの価格引き上げを発表するなど、何かとイベントが相次ぐ騒がしい一年として幕を閉じようとしている。

店舗数の動向だが、すき家が今年頭から拡大施策を事実上取りやめた(ように見える)ことで、三社共に店舗総数を維持しながらの新陳代謝状態に移行したようだ。これが単なる「拡大の機会を待つ踊り場的状況」を意味するのか、それとも吉野家の「吉呑み」のように牛丼店をベースとした多角経営的なスタンスを模索しているのか、客観的には判断がつきにくい。

似たようなポジションのファストフード業界と評せるハンバーガーチェーン店では、モスバーガーはこの2-3年、マクドナルドは今世紀に入ってから、店舗数ベースでの拡大戦略を止め、新陳代謝による高採算店舗の掌握運営とサービスの向上重視に転じているように見える。店舗数の拡大をひたすら続けるコンビニ業界とは対象的ではある。

店舗数の動向はその企業の施策を示す一つの指針に他ならない。これが大きな動きを見せる時、その企業に新しい施策が導入されたことを感知するシグナルになりうる。今後も定期的にデータを精査し、そのシグナルをつかみ取れるようにしたいところだ。


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