小売業の売上推移をグラフ化してみる(2014年)

2014/05/31 10:00

当サイトでは【定期更新記事:まとめ】で記載している通り、スーパーやデパート、コンビニエンスストアなど、複数の小売業者の販売動向を定期的に追いかけ、その動向の精査を行っている。今回はそれら小売業者の売上動向について、業界団体それぞれの個別公示データでは無く、経済産業省が逐次公開している統括データを確認し、状況の把握を行うことにした。

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前世紀末からの動向を探る


データ取得元は【経済産業省の商業動態統計調査】。このページから【統計表一覧】を選択。記事執筆時点では2014年4月分までの値が速報・確定データとして収められているので、それらを取得し、グラフとして生成する。抽出する項目は、「商業全体」「小売業全体」「大型小売業」「百貨店」「スーパー」「コンビニ」。

後者4つは既存店に限定する。その理由としては、新規参入店も含めた値を用いると、店舗数の増加そのものが売上増加に加算されてしまい、個々店舗の動向を推し量るのには不都合が生じるからである(無論店舗数の増減そのものは業界全体の伸長・縮小と小さからぬ関係があることも違いない)。

まずは月次ベースでグラフ化したのが次の図。

↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(1998年4月-2014年4月)
↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(1998年4月-2014年4月)

10年分以上を月次変動の形で収めたため、大まかな動きは把握できるが、細かい部分までは確認し難いグラフとなった。しかしそれでも、次のような傾向はつかみ取れる。

・2003年以降の景気回復期では商業全体も前年同月比でプラスの値を示している月が多い(金額的に成長している)。

・小売業は2003年以降の景気回復期でも大きなプラスは無い(「商業計」と比べると低い値で推移)。ほぼ前年同月比プラマイゼロ付近を行き来している(a)。

・大型小売業、百貨店、スーパーなどは前世紀末から前年同月比で縮小の傾向(マイナス圏を推移)。

・2008年後半以降の各業態の売上減が急速な形を見せている。特に商業全体の落ち込みが前代未聞の動き(b)。

・コンビニは(b)の時期でもプラスを維持していたが、2009年後半期には失速、マイナスを見せる。直近数か月は大きな上下が確認できる(c)。

・2011年3月の震災以降は激しい変動のあと、全体的に低迷。

・2012年後半からは商業全体を含め、上向きの動きが確認できる。

・2014年4月の消費税改定に伴い、直前の駆け込み需要による上昇と(2014年3月までの数か月間)、その反動(2014年4月)によりグラフ上で大きな変移が生じている。

(a)の事象「商業全体が売上を増やしている一方、小売業の売上増加が今ひとつ」なのは、(今グラフには反映されていない)卸売業の伸びが著しいため(商業全体は大きく卸売と小売で構成される)。逆に(b)で商業全体の急降下ぶり(無論これはリーマンショックによるもの)の割には各種小売業の下げ方がそれほど大きくないのは(それでもマイナス5-10%だが)、やはり卸売業の下落が急激だったため。(c)のコンビニ堅調、そして直近の大きな上下の理由は前者が「タスポ特需」、後者がたばこ値上げの駆け込み需要とその反動によるものである。

また2014年に入ってからは同年4月に消費税率がそれまでの5%から8%へと引き上げられるのに伴い、税率改定前に先行して買い物をしておく「駆け込み需要」が発生。そして4月には税率改定実行に伴う大幅な売り上げ減に伴う下落が生じている。

その特異的な需要状況の変化は、上昇か下落かの違いはあれど、その振れ幅においては小売業に関していえば震災やリーマンショック当時の動きにも勝るとも劣らないもので、特に百貨店ではリーマンショック時に生じたマイナス幅(10%強)に倍するプラス幅(20%台)を示すこととなった。耐久消費財などの駆け込み需要によるセールスが、いかに大きな影響を示したかが分かる。

金融危機以降の動向を精査する


もう少し期間を短い期間で区切る、具体的には「金融危機」が表面化した2007年夏直前からを盛り込む形と、リーマンショック直前以降に区切る形でデータを抽出し、グラフの再生成を行う。

↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(2007年1月-2014年4月)
↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(2007年1月-2014年4月)

↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(2008年6月-2014年4月)
↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(2008年6月-2014年4月)

大型小売店や百貨店、スーパーなどの業態は元々低迷していたものの、金融危機による景気後退をきっかけに売上下落率が大きくなったこと、しかし(輸出低迷による卸売業に大きく影響を受けた)商業全体の落ち込み具合と比べれば下げ幅は小さいこと、そして低迷を続けた状態で先の震災に至り、その反動を経て景気低迷感の中、低調さを継続していたこと、さらには2012年終盤から2013年頭を底として少しずつだが上昇機運を見せていることが分かる。

一方コンビニは、奇跡的なタイミングで「タスポ特需」が発生したこともあり金融危機真っ最中の一年強をプラスで維持する事ができた。その後反動で落ち込むも低迷期は1年半ほどの期間で済み、再び安定期に移行。たばこ値上げの影響を受けて上下変動が激しいものの、他業種と比べれば堅調に推移していた。しかしやはり震災による一時的な下落、その一年後の反動の後は、景気低迷やたばこ値上げによるマイナスの影響が大きくなり、他業種同様軟調に推移するようになった。さらに商業、小売業全体が今年頭からの回復基調にある中でも、あまりさえない動きをしているのが気になる(【定期更新記事:コンビニエンスストア】で確認しても、2012年夏頃から前年同月比でマイナスが続いていた。2013年後半からようやくプラスの月が出始めている)。

またスーパーやデパート、百貨店の業績が思わしくないのは、昨今の景気後退をきっかけとするものではなく、元々存在していた問題であること、2007年以降の景気後退は単にその縮退化を加速させる要因でしかなったという事実も確認できる。何しろ直近の景気回復期である2003年以降においても、前年同月比でマイナスの売上を継続していたのだから。

消費税率改定前後の挙動


動向箇条書きやグラフそのものの特性でも明らかだが、2014年4月の消費税率の改定前後の動向は、非常に特異なものとなっている。そこで改定直前・直後の前年同月比を抽出したのが次のグラフ。

↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(2014年3月-2014年4月)
↑ 主要小売業業態別売上前年同月比(2014年3月-2014年4月)

駆け込み需要による売り上げアップは2014年の頭から生じていたが、最大の上げ幅を示したのはやはり直前の3月。特に耐久消費財のセールスが大きい百貨店では前年同月比で25.2%という巨大な値が発生している。その分、反動が生じた4月の下げ幅も大きいが、それでも1割台の減少で留まっているのが印象的。景気ウォッチャー調査や消費動向調査の精査記事でも言及したが、当初想定したほど、税率改定後の消費減退は生じていないようだ。

また、他の要因が加わらない限り、この類の減退は時間経過と共に縮退していくことを考えると、今後マイナス幅は次第に縮小し、夏前後までは平常の動きに戻りそうではある。



ちなみにグラフ化は略するが百貨店や大型小売店、スーパーの統計データは1988年以降から存在する。前年同月比でマイナスを頻繁に示すようになったのは、1992年以降しばらくの間。そして1997年以降は継続的なもの。【スーパーやデパートの主要商品構成比の移り変わりをグラフ化してみる】を見ると、そのタイミングで売上構成に大きな変移、具体的には衣料品の減退と食料品の増加、が確認できる。顧客構成、消費性向に大きな変化が生じたのだろう。

やはり結果論でしか無いが、仮にこの時、遅くとも1997年か1998年で「変化」を覚えた際に、各業態、特にスーパーや百貨店が危機感を明確に把握し、適切な対応策(衣料品の売上の底上げ、あるいは業界の構造そのものの革新)を見出し、正しい対処を行っていれば、昨今の景気後退時期においても、これほどまでの売上低迷は見せなかったと推定される。

無論現状でも各関連会社は必要と思われる対応策を打ち出しているが、残念ながらその成果はあまり思わしくない。今後「ピンチをチャンスにとらえ」、どのような積極的で具体的な打開策を打ち出していくのか、注目したいところだ。


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