4マス軟調継続、インターネットは大きく伸びる(電通・博報堂売上:2015年4月分)(最新)

2015/05/15 11:00

博報堂DYホールディングスは2015年5月14日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2015年4月分の売上高速報を公開した。一方、電通も同日の同年5月14日付で、同じく同社4月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2015年4月次の売上データが公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去のデータなどを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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博報堂の雑誌とテレビがプラス、あとは4マスすべてでマイナス


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらも確認してほしい。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年4月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年4月分種目別売上高前年同月比

4大従来型と呼ばれる主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、博報堂の雑誌とテレビ以外はすべてマイナス。特に新聞とラジオは電通・博報堂共に小さからぬ下げ幅を示している。前年同月(2014年4月)では新聞はそれなりなプラス(プラス9.4%・プラス6.5%)の上昇だったのでその反動の部分もあるが、それでも下げ基調には違いない。またラジオは前年同月の時点でも、前年同月比(つまり2013年4月との比較における2014年4月の値)がマイナス値を示しており、軟調さが継続していることがうかがえる。

4マスの軟調と比較される形で、インターネットは引き続き堅調に推移している。特に電通はプラス29.6%と3割近い上昇。前年同月では電通・博報堂それぞれプラス6.8%・プラス55.8%を計上しており、博報堂の上昇幅が大人しめだったのは、前年同月の躍進による反動の影響があったからに他ならないことが分かる。

4マス以外の従来型広告では先月から転じる形で堅調さが目に留まる。一方、先月同様電通の「その他」が飛びぬけている。こちらは前月同様で、選挙や大きなイベントが該当月に無かったことから、ここしばらく指摘の通り、対象項目の増加が多分にあるものと考えられる。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通りとなる。やはりインターネット(インタラクティブメディア)と「その他」がずば抜けた伸びを見せている。

↑ 参考:電通2015年4月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2015年4月度単体売上(前々年同月比)

ネットと「その他」以外では従来型広告がそれなりに良い動きを示し、一方で4マスの軟調ぶりが改めて認識できる。

特に注目を集めるインタラクティブメディア(インターネット)の成長は、先月試算分に続き約4割。2年で4割強の成長は普通の広告ではよほどの小規模か新興市場でないと滅多にありえない。規模も拡大を続けており、今や数少ない期待の分野。他方従来型4マスは今回月ではテレビがかろうじてプラスだが、それ以外はマイナス。昨今ではテレビが伸びの姿勢を示し、今回月では4マス中唯一のプラス計上となった。比率は小さめだが、市場規模が大きいため、全体に及ぼす影響も大きくなる。これは喜ばしい話。

今回月となる各年4月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる4月を基準にした毎年4月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、特殊事情、例えば選挙やオリンピックのような、広告と深い関係を有し売り上げに大きく影響がある事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を推し量れる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年4月、億円)(-2015年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年4月、億円)(-2015年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。直近となる2015年4月では2、3年ほどやや後退していた雰囲気を吹き飛ばすような復調ぶりで、金額面でもほぼ金融危機以前の水準にまで回復する形となった。少なくとも電通の売上額に限れば、景況感はほぼ元に戻したと判断して良いことになる。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解した上での問い合わせが少なからずある。例えば今回月では新聞の売上高の下げ率が両社でほぼ同じことから、売上額(あるいは下落額)でもほぼ同じではないかとする誤認である。もちろんそれは間違い。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2015年4月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2015年4月における部門別売上高(億円)

インターネットは今回月の前年同月比で1割超のように、毎月目覚ましい成長率を示しているものの、売上金額=市場規模としてはまだまだ他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、マーケティング・プロモーションのようにほとんど変わらない部門もあれば、クリエーティブやテレビのように約2倍の差を示す部門もある。

他方「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も大きい。上記でも触れている通り、メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

電通では特にそのタイプの事案が多いものと考えられる。今回単月による前年同月比はプラス112.7%、売上も157.5億円で、これは新聞と雑誌、ラジオ全体を足した額よりも大きい。また、インターネットの2倍以上にあたる。この「その他」の区分膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合ではデータの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたい所だ。



2014年12月は総選挙による盛り上がりもあったが、それに続く2015年1月以降は軟調さが続いていた。今回4月分は3月の回復の兆しがより一層体現化した感はある。しかしながら4マスの数か月に渡る軟調ぶりは継続しており、前年からの反動の気配も無く、気になる動きではある。年度替わり初月の月の動向で、今年度の動きを占う結果と見ると、今年は4マス、特に紙媒体とラジオは昨年度同様、あるいはそれ以上に厳しい年となりそうだ。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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