世界各国の天然ガス埋蔵・生産・輸出入量などをグラフ化してみる(2014年・EIA版)

2014/04/16 11:00

【アメリカのエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)】【公開データベース:International Energy Statistics】には、主要エネルギー資源の各国における埋蔵量や生産量、輸出入量など数多くのデータが収録されている。今サイトではこのデータベースの値を基に、「石油(原油)」「天然ガス」「石炭」の主要3資源の最新状況などを逐次確認し、確認している。今回は現時点で2012年分までの更新が確認できた天然ガス関連の動向に関して、いくつかの切り口から状況をまとめていくことにする。

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天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量…


天然ガスの特性などは【天然ガスの生産・貿易動向をグラフ化してみる(エネルギー白書2010版)】で詳しく説明しているが、輸出国と輸入国の間が陸続きの場合はその多くがパイプラインで、海をへだてた場合はLNGに転換された上で輸出入が行われる。LNGとは「Liquefied Natural Gas」つまり液化天然ガスの略で、天然ガスを運びやすく・貯蔵しやすくするため、凝縮して液化させたもの。1959年にはじめて生産され、天然ガスの大規模な海上輸送を可能とした画期的な手法であり、天然ガスの利用を促進させるものとなった。

昨今では天然ガスは環境負荷が小さいこと、埋蔵量が石油と比べて多いこと、そして【世界の天然ガス埋蔵量の急増(JOGMEC)(PDF)】のレポートにもあるように、技術の進歩によってこれまで「採掘困難、採算が取れない」とされてきた「非在来型ガス」(例えばシェールガス……泥岩の一種である頁岩(シェール)に含まれる天然ガス)の多くが採掘可能となり、「確認埋蔵量」(現在の技術で経済的に採掘できる量。採掘そのものは可能でも採算が取れないものはカウントされない)が増加していることなどから、大いに注目を集めている。

それではまず天然ガス埋蔵量トップ15。冒頭にある通りEIAでは天然ガスに関して、2012年時点まで世界各国のデータを収録している。そこで2012年時点でのグラフを生成した。技術開発などを受け、現在では一部の国でさらに増えている可能性は高い。

↑ 天然ガス埋蔵量トップ15(兆立法フィート)(2011-2012年、採掘可能量)
↑ 天然ガス埋蔵量トップ15(兆立法フィート)(2011-2012年、採掘可能量)

トップはロシア、次いでやや下がってイランやカタール、さらに下がってアメリカ合衆国が続く。このあたりの上位陣は長年変わりがない。変化が生じているのはそれらに続くトルクメニスタン。同国は位置的にはイランやアフガニスタンと国境を接しているが、(今件データでは領域外だが)2009年から2010年にあたり3倍近くの増加が確認されている。これは天然ガスそのものが突然増殖したのではなく、採掘可能な量が増えたことを意味する。同国では元々天然ガスを豊富に有していたが、昨今ではロシアだけでなくその他の周辺国(特に中国)との関係を深め、天然ガスの積極的な採掘・輸出を行っている(【外務省のトルクメニスタンのレポート】)。この積極的な開発意欲が、埋蔵量≒採掘可能量を増加させたと考えられる。

また今データは国単位での区分だが、仮に地域別で再構築すれば、ロシアの次に中東地域が位置することとなる。石油同様にこの地域での埋蔵資源の豊富さを裏付けることになる。

次いで年間の生産量、そしてその生産量上位の国において同国の消費量を重ねたもの。エネルギー政策は国によってまちまちなため、消費量の大きさがエネルギー関連の技術の先端性を意味するものでは無いことに注意しなければならない。

↑ 天然ガス生産量トップ15(兆立法フィート、2010-2012年)
↑ 天然ガス生産量トップ15(兆立法フィート、2010-2012年)

↑ 天然ガス生産量トップ15とその国の消費量(兆立法フィート、2010-2012年)
↑ 天然ガス生産量トップ15とその国の消費量(兆立法フィート、2010-2012年)

埋蔵量トップのロシアは生産量では第2位に後退。代わりにトップにはアメリカ合衆国が入っている。しかも消費量ではロシアを大いに抜いている。このままでは早晩自国埋蔵分が底を尽きてしまうのではないかという懸念もあるが、先のレポート「世界の天然ガス埋蔵量の急増」にもある通り、「非従来型天然ガス」の開発が進んでおり(アメリカの場合はいわゆるシェールガス)、これが需要を大いにカバーしている。また、このタイプのガスにより国内需要分のかなりを充足できる状況となりつつあり、同国のエネルギー政策に変化が生じていることにも注目したい。

あくまでも天然ガスのみ、しかも単純計算ではあるが、上記15か国において生産量から消費量を引いた結果をグラフ化したのが次の図。プラスならば天然ガスが余っている、マイナスならば足りないという計算になる。

↑ 天然ガス生産量トップ15(2012年)における、その国の天然ガス過不足単純試算(生産量−消費量、兆立法フィート)
↑ 天然ガス生産量トップ15(2012年)における、その国の天然ガス過不足単純試算(生産量−消費量、兆立法フィート)

ロシアがヨーロッパ各国にガスを輸出している事情、中国が外交的良識を無視してまでガス田に執着する理由が透けて見えてくるというものだ。

天然ガス、輸入と輸出


天然ガスを消費するにあたり国内生産量でまかないきれなければ、他国から調達しなければならない。逆に国内消費量以上の生産がおこなえる国では、無理に生産しなくてもよいし、余った分を貯蔵したり輸出する事も可能となる(ただし一度採掘したものを貯蔵するのには限界がある。【カントリーリスクと「自国内での発電」扱いと】を参照のこと)。そこで輸出・輸入量についてまとめたのが次のグラフ。

↑ 天然ガス輸入量トップ15(兆立法フィート、2010-2012年)
↑ 天然ガス輸入量トップ15(兆立法フィート、2010-2012年)

↑ 天然ガス輸出量トップ15(兆立法フィート、2010-2012年)
↑ 天然ガス輸出量トップ15(兆立法フィート、2010-2012年)

輸出量は最大の埋蔵量、生産量では第2位を誇るロシアがトップ。原油同様に天然ガスの価格もまた、ロシアの財政を大きく左右しうる要因であるのが分かる。昨今のウクライナ情勢においては、輸出先のヨーロッパ諸国に対する有効な切り札として用いられた(直接切るのではなく、大きなプレッシャーとして、存在するだけで意義がある類の札)。そしてカタール、ノルウェー、さらにはカナダが続く。先に挙げたトルクメニスタンも大きく値を伸ばし上位に入っている。

一方輸入国では多分に生産もしているアメリカ合衆国が、2010年時点ではトップだった。ところが2011年においてそのアメリカを追い抜く形で、日本がトップについている。これはいうまでもなく、先の東日本大地震・震災に伴う電力事情・エネルギー政策の激変・迷走に伴い、天然ガスを用いた火力発電所の需要が急上昇したからに他ならない。カントリーリスクという点では間違いなくマイナスであり、憂慮すべき事態ともいえる。そしてその憂慮すべき状況は2012年でも変わらず、さらに輸入量を上乗せさせている。逆にアメリカでは国内生産量が増加したことを受け、輸入量は漸減状態にある。

その他の国の動向としては、特に中国の輸入量の急増が目につく。生産は増加しているが、消費量の増加度合いがそれを上回るスピードであるため、足りない分を輸入で補ってる状態に違いない。



上記にある通り天然ガスは環境負荷が小さいことや扱いやすいこと、技術の進歩で運搬が容易になり、採掘量も増加しつつあることから、注目を集めている。特に日本では震災以降、火力発電所の燃料として石炭と共に需要が急増しており、今回2012年分までのデータではそれが明確な形で数字化されている。

天然ガスとて商品には違いなく、タダでは輸入できない。そして常に100%安全確実に必要量が輸入できる保証はない。さらに自国での埋蔵・生産量と照らし合わせて考えてみれば、いかに細い綱を渡っている状態なのかが理解できよう。


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