現状・先行き共にDIは先月を小幅ながらも上回り水準値を超える…2015年4月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2015/05/13 15:00

内閣府は2015年5月13日付で2015年4月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して53.6となり、水準値の50.0を超える状態を確保した。先行き判断DIは先月から続き5か月連続して上昇し54.2となり、水準値の50を超える状態が続いている。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は先月から変わらず景況感の好転化を反映する形で「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、賃上げへの期待や外国人観光需要への期待等がみられる」となった。もっとも物価上昇が景況感の足を引っ張っている状況は続いている(【平成27年4月調査(平成27年5月13日公表):景気ウォッチャー調査】)。

スポンサードリンク


現状指数高安まちまち、先行き指数はすべて小幅上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2015年4月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス1.4ポイントの53.6。
 →「やや良くなっている」が大幅に増え、「やや悪くなっている」が減少。
 →家計は小売が上昇。企業は非製造が上昇。雇用関連は小幅に低下。

・先行き判断DIは先月比で0.8ポイントプラスの54.2。
 →物価懸念は続くが、賃上げや外国人観光客需要の期待を受け、全部門上昇。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

昨今では原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となっている。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ただしガソリン価格は昨今の原油価格の上昇気配を受けでじわりと値を上げており、今回のコメントからもガソリン価格に関する言及が消えているのが気になる。

先行きDIにおいては物価上昇で生じる景況感への悪影響が懸念されるが、昨今では賃上げへの期待や外国人観光需要への期待が強くなっており、各指標の高値維持・上昇にも大きな影響を与えているものと考えられる。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

現状判断DIは住宅関連のみ下落


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2015年4月)
↑ 景気の現状判断DI(-2015年4月)

今回月は消費税率改定後13か月目の月。小売店側から見た駆け込み需要の反動に関する文言はすでに消えている。直接の駆け込み特需の反動による景況感の軟調さは、その文言が消えたタイミングの半年経過でほぼ消失したと判断できる。一方で消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させるに必要となる材料が見当たらず、低迷感は継続していた。さらに電気代や食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は重圧感の中にあった。

今回月は前月から続く形で、原油価格の下値安定化に伴いガソリンが比較的安値で推移しており、心境的にはプラスに働いている。特に自動車を多用する分野の人には、日々のように目に見える形で負担が減ることから、マインドに大きく貢献したことは間違いない。また昨今では円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けている。

水準値(50)以上の項目は、今回飲食関連が大きく下げたことで外れてしまったものの、それ以外はすべて超えており、逆に飲食関連の軟調さが一層際立つ形となった。もっとも前回月では大きな上昇を示していたので、その反動も幾分はあるのだろう。

景気の先行き判断DIは上げ幅こそ小幅だが、前項目で揃って前月比プラスを計上した。

↑ 景気の先行き判断DI(-2015年4月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2015年4月)

最大の上げ幅を示したのは住宅関連でプラス1.9。先行きの中では唯一今なお基準値を超えておらず、また前月は大きな下げ方を示したこともあり、その反動によるところもあるのだろう。もっとも住宅関連は、中期的な住宅需要の低迷を予見した動きとも見えなくもない。

不安と期待の綱引き状態は続く


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・相場が上昇している野菜も、販売量はあまり落ちていない。品質の良い生鮮食品を中心に、客の買物動向は底堅く推移している(スーパー)。
・今年は雪解けが早かったことに加えて、気候も安定していることから、消費面でプラスに働いている。旧正月後も外国人観光客が順調に来道しており、好調に推移している。外国人観光客を狙った新規出店も増えている(商店街)。
・大手自動車会社などの賃上げの情報が中小企業にも影響しているのか、最近は客の動きが良くなっている(テーマパーク)。
・一部の大企業では、軒並みベースアップなどの賃上げが実施されており、景気は良くなっているように見受けられる(通信会社)。
・食料品をはじめとする生活必需品の値上げにより、必要な物以外は買わないという慎重な消費行動は変わらない(商店街)。
・軽自動車税増税、商品力不足による客の購買意欲低下が、販売意欲の低下につながっている(乗用車販売店)。

■先行き
・賃金の上昇や賞与の増加、株高効果などにより、消費マインドは確実に上昇していく。節約する場面では引き続き厳しく節約するものの、ハレの日や行楽などのイベントを中心に、積極的にお金を使う場面も増加していく(スーパー)。
・春から中国の客船等の入港予定があるので、それに期待している(商店街)。
・給料も徐々に増えつつあるが、それ以上に値上がりする商品が非常に多く、客にとっては、消費できる金額が徐々に減っている。今後、値上げがどこまで進むかによって、景気の先行きも変わってくる(スーパー)。
・今月ほどの大きな伸びは無いと思われるが、インバウンド効果、改装効果等、上期までは順調に推移するものと予測している。しかし、郊外では大型ショッピングモールの台頭もあり、楽観視できない状況でもある(百貨店)。

今回引用している範囲は「家計」の全国における代表意見のみだが、昨今の景気情勢が非常によく表れる形となっている。年度替わりによる心境的な一新感やこれからの消費の活性化への期待度は大きく、まるでお祭り前夜的な感も覚えさせる。

なお「インバウンド」とはこの場合、海外からの観光客を意味する。国内の供給に関して国外から需要が到来することから、日本国内に限れば需要は底上げされる形となる。この言い回しは昨月も使われており、外来観光客による需要喚起が大きな期待要因となっていることが改めて認識できる。

他方上記引用範囲には無いが、企業動向では円安による輸入原材料の価格上昇や電気料金の上昇に伴うコストアップに窮する事例が報告されている一方、企業の海外への売り上げ増に伴う活況への期待も寄せられている。雇用関連でも企業の積極的な求人活動が報告される中(「正社員求人数は前年同月比で増加しており、この傾向は今後も続く」「2016年春採用の活動をしているこの段階で、既に2017年採用予定の大学3年生向けインターンシップについて考える企業が多く出てきている」)で、ミスマッチの多さが指摘されており(「企業側と求職者が求める条件の間で、ギャップが大きくなりつつある」)、バランスのとり方の難しさが思い知らされる。

数か月前まではネガティブな意味合いで使われていたガソリンや燃料などのキーワードも、今回月では押し並べてポジティブな文面で使用されている。「ガソリン価格を含め、日常生活に必要な商材の価格が比較的安定してきているため、若干ではあるが消費意欲が高まり」などのコメントが確認できる。

燃料価格は国内でコントロールしにくい要因。昨今の下落は「燃料価格に限れば」僥倖に違いない。一方電気料金は一部に海外からの輸入資源価格の上昇があるが、多分に震災以降の発電様式のアンバランスな状態を起因としており、大部分の原因は国内問題によるもの。早急な対応が求められる。

現状はサービス、先行きは小売がポジティブ…詳細精査


2014年4月分の公開値を基に、消費税率動向について細かい部門別に別途記事として精査をした【景気ウォッチャーの指標動向から消費税率改定後の景気行き先を推し量ってみる】の手法を用い、簡略的にではあるがしばらく継続的に現状・先行きDIの詳細動向を確認している。今回もその例にならい、2015年4月分とその前月の2015年3月分との差異、つまり一か月分の変化を詳しく見ていくことにする。まずは現状DIについて。

↑ 2015年3月から2015年4月における現状DIの変動値
↑ 2015年3月から2015年4月における現状DIの変動値

今回月の現状DIは高安マチマチの状況にあるが、細部を見ると小売は大よそプラス、飲食が大きくマイナス、サービス関連がややマイナス気味であることが分かる。このうち乗用車・自動車備品販売店は軽自動車税の引き上げに伴う軟調さ、飲食関連は大手ファストフード店の足踏み感に加え、天候の悪化が原因。他方、百貨店やスーパー、コンビニ、家電量販店などは大きくプラスに触れているが、これは上記で触れた「インバウンド」効果によるところが大きい。

他方サービス関連は旅行・交通関連やレジャーがプラス。特に旅行・交通関連の上げ幅が大きい。これも円安に伴う観光客特需と見る事が出来る。

↑ 2015年3月から2015年4月における先行きDIの変動値
↑ 2015年3月から2015年4月における先行きDIの変動値

↑ 2015年4月における先行きDI
↑ 2015年4月における先行きDI

今回月は先行きDIは大まかな仕切りではすべてプラスだが細分化するといくつかの業種でマイナスが出でいるのが分かる。特に現状で大きなプラスを示した小売りのうち百貨店がマイナス値を見せたのは意外……なように見えるが、元々かなりの高値にあったため、その反動によるところが大きいと認識した方が道理は通る。

他方、軽自動車税の増税に関する駆け込み需要の反動などでしばらく需要が減退することが予想される乗用車・自動車備品販売店が大きくプラス値にあるのは意外といえば意外。



現状DIの上昇感や各種コメントを見る限り、懸念は少ないわけではないが、少なくとも景気低迷感は底を打ち、反転に転じた雰囲気がある。震災後や、その後の超絶円高を示した時のような、隅から隅までの絶望感的な空気とは大きく異なるのは事実。しかし立ち上がり感はまだ弱い。単なる底打ちに加え、何か加速をつけるような材料が欲しいところだが、現状では原油価格の低迷によるガソリン代の安値安定ぐらいしか見当たらない。賃上げへの期待もあるが、これは実体化されないと言葉通り「絵に描いたモチ」となってしまう。消費税率引き上げの延期はさらなる消費減退傾向を押しとどめてくれたものの、引き上げ要因にはつながらず、しばらく後に再び低迷が起きるリスクを多分に伴う。

原油価格はチャート的には2月頭で底を打ち、上昇の気配を示したものの、その後いくぶん値を上げた後は横ばいに推移していた。それが冬場の景況感を支える大きな要因であったことには違いない。昨今では春に至り需要が増加する動きに連れて原油価格も上昇を見せ始めているが、これが再び国内のガソリン価格に連動する時期になれば、景況感には確実にマイナスとなる。その点が懸念材料ではある。

円安に伴う、さらには資源価格そのものの上昇により、食材を中心に値上げが相次ぎ実施されていることを受け、消費マインドの冷え込みへの不安も大きい。その上、ガソリン代はともかく電気代は高値をつけたままなのも、不安材料として見逃せない。この電気料金周りは震災後の悪癖を引き継いだ現況が大きく影響しており、理性と知性をもってすれば必ず解決しえる問題に違いない。あるいはこれを果たすことで、経済面でも大きな転換点となる可能性は高い。この点が現在の日本の低迷感・景況感における「もやもやとした重圧感」の大きな要素となっていることに違いは無い。

電力の消費がかさむ夏に向けて電力周りで準備を行うためには、この数か月内における動きが望まれる。今夏までの半年で、景気動向は大きな変化を迎えることになるかもしれない。


■関連記事:
【原油先物(WTI)価格の推移をグラフ化してみる(2015年)(最新)】
【政府への要望、社会保障に景気対策(2014年)(最新)】
【「税抜き価格表示」消費者の支持は2.3%のみ、一番人気は「税込価格・本体・消費税」の現行スタイル】
【消費税と税収の関係をグラフ化してみる(2014年)(最新)】
【電気代・ガス代の出費動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2015年)(最新)】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー