広告「量」は増加、では広告「料」は!?…企業が払う新聞広告費と広告費相場の変化(2014年)

2014/05/29 14:00

当サイトでは複数の情報源からの公開データを基に、新聞業界の動向を集積してグラフ化・分析し、これまでの状況や現状を精査する、定点観測的な記事展開を行っている。先に【新聞の広告掲載「量」と「率」動向】で記した通り、新聞社や通信社、放送局などで構成される日本新聞協会が5月に発表・更新した日本の新聞全体における記事掲載量などの最新データを基に、新聞の記事や広告「量」、広告費全体に関する流れを確認した。今回はそれらのデータを手がかりに、新聞の広告費やその概算的な相場の変化について推し量ることにした。

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広告費総額は再び減少


データ取得元は日本新聞協会の公式サイトにおける【調査データ>新聞広告>新聞広告費、新聞広告量の推移】。以前の別記事ではこれらの値から、「新聞広告量」と「新聞総段数」を取得し、さらに「総段数」から「広告量」を差し引いて「記事量」を算出した。なお「段」とは言葉通り、新聞の文字列を構成する横線の段組みを意味しており、左端から右端までの1ライン分で1段として構成単位を数えていく。

↑ 新聞広告量・新聞記事量推移(万段)(-2013年)(再録)
↑ 新聞広告量・新聞記事量推移(万段)(-2013年)(再録)

次に新聞の広告費を抽出し、これもグラフ化する。これは「企業や団体など『新聞に広告を出したい』と考えている側が、広告出稿のために支出する広告費」を意味する。

この値がそのまま「新聞業界の売上」となるわけではないので注意を要する。なぜなら「広告を出稿する企業」と「新聞社」が直接やりとりすることは滅多になく、大抵は複数の「広告代理店」が仲介を行い、仲介手数料などが差し引かれるからである(今件は【広告業界や代理店の仕組みが分かるステキなレジュメ】あたりでもう少し詳しく触れている)。

↑ 新聞広告費(億円)(-2013年)
↑ 新聞広告費(億円)(-2013年)

「ITバブル崩壊」時の2002年に大きな減少が起きている。そしてその後の景気回復でも広告費総額は下がったまま。これは先の記事でも指摘しているように、「広告掲載率の変化」と同じ現象。新聞というメディアへの出稿効果に疑問符が浮かべられるようになり、費用対効果の算出の上で、選択肢から除外される事例が増えてきたことになる。そしてさらにいえば、4マス系の広告費にも似たような状況はあてはまる。そして2007年の金融危機以降、急激に減少傾向を示しているが、これも掲載率変化と同じ動き。予算は限られるが、出稿効果の減退は出来るだけ抑えたい。ならば効率の良い媒体を選ぶのは道理であるし、優先順位の低い選択肢は切られてしまうことになる。

最新の2013年においては、久々に前年比プラスを示した前年から再び落ちてしまっている。もっとも前年2012年の上昇率が4%強と大きなものだったため、その反動との見方もできる。実際、その前の2011年と比べればまだ額面では上。もっともITバブル時代、10年ほど前の(記録が取得できる範囲での)最盛期と比べると、大体半分の額にまで落ち込んでいることに違いはない。

単価を概算で計算してみる


これまで解説した通り、「企業の新聞向け広告費」と「実際に掲載される広告の段数」が公開値によって確認された。そこで両方の数字から「1段あたりの概算広告費」が算出できることになる。直上で解説した通り仲介手数料の問題もあり、そのままイコールの値と断じることはできない。複数段・1面丸ごとの場合は別料金となり(昨今では新聞広告の掲載希望が少ないため、需給関係から「まとめ買い」として値引きされる)、場所によっても多種多様な料金体系が設けられている。

今件はあくまでも「企業側が支払う金額として」「全部平均でならした場合の」「概算値」の推移として見てほしい。

↑ 1段あたり概算広告費(万円)(-2013年)
↑ 1段あたり概算広告費(万円)(-2013年)

ITバブル期の絶好期(2000年)に少々単価が上がっている。しかしそれ以外は一様に漸減している。そして「広告掲載率」や「広告掲載費」の減り方と同様に、「ITバブル崩壊時に大きく減少」「金融不況時も大きく減少」との傾向が確認できる。

概算値ではあるものの、15年で新聞広告の平均単価は4割強もの減少をしていることになる。そして2013年では広告「量」は増加したものの広告「単価」は減少を続けており、「単価」の方が影響力が大きかったことから、広告「料総額」は落ち込んでしまっている。広告出稿の減退を押し留めるために単価を下げ、「量」は増えたものの「総額」は減ってしまったのか、広告出稿そのものは回復基調にあるものの、単価の下落傾向を押しとどめるまでには至らず、復調の中における「総額」減退なのか、今件データだけでは確定付けるのは難しい。

「新聞記事全体における広告比率」も増加していることを合わせて考えると、後者(新聞の復調過程)の雰囲気が強いが、新聞の記事本文の量は減っているので、勢いがあるようにも判断しにくい。いずれにせよ、下落一方の動きからは脱しつつあることだけは違いない。



広告単価の相場は上記グラフの通り、減少する一方で、上がる気配が見られない。下がる要因はいくつか考えられるが、シンプルに需要と供給の関係で推測すると、供給過多の状態が思い当たる。それぞれのサイドにおける状況としては「広告を掲載する場所は沢山ある(新聞社)」「広告を出す側が少なくなった(広告主、広告量共に)」ということ。

この場合、広告部分を空白にするわけにもいかず、いわゆる「自社広告」が収まる形となる(自社広告も自社商品の認知度を高め、業績アップにつながりうるメリットはある。単なる「埋め草」ではない)。あるいは営業が努力を続け「現在の価格ならコストパフォーマンスの面で割りが合わない。広告を出すつもりは無い。しかしながら、●×円/段まで値引きすれば、広告出稿を考えてもいい」という広告主の要望を了承し、値引いた上での出稿となる場合もある。

2013年は単価が落ち、広告総額が減り、広告量は増えるという、非常に興味深い動きを示した。前年2012年の復調基調とは異なる、微妙な流れであり、今後の動向が今まで以上に気になる状態に入ったといえる。

しかし一方で、単価の減少が継続中であることから、それだけ新聞そのものの媒体力・広告力が減少していると、少なくとも広告出稿側が見なし続けているのは否定できない。今後新聞各社は企業側の広告費をさらに底上げさせるだけでなく、「より価値あるもの」と認識され、単価を引き上げても広告を出してもらえるよう、媒体力を高めていく努力が求められよう。

そのためには、新聞そのものが記事を介して常に外部に向け、他業種に向けて連呼している「改革の気概」が、実は新聞自身に一番求められているのではないだろうか。


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