吉野家の客足減退止まらず…牛丼御三家売上:2015年4月分

2015/05/08 11:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2015年5月7日、吉野家における2015年4月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス0.6%となった。これは先月から続き、4か月連続のマイナスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年4月における売上前年同月比はプラス3.7%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス4.0%との値が発表された。今回月は前々月・前月に続き松屋のみが売上でプラスを計上し、残りの2社はマイナスを示す形となった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通り。特記事項が無い限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2015年4月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年4月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2014年4月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はプラス6.5%。同社では2014年4月1日から消費税率改定に伴い主力メニューの牛丼価格を引き上げており、これが客単価の上昇と客数の減退(マイナス9.2%)に結びつく形となった。

従って今回月は「牛丼値上げによる客数減少・客単価増加が生じた前年同月」との比較となる。さらに【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】で報じたように、2014年12月17日から主力商品の牛丼価格をはじめ各種商品価格の引き上げを断行したことにより生じた、客数の減少と客単価の増加が影響要因として計上される。その上、現在では販売を終了しているが、客単価が高め(昨年分より値上げされている)で集客力も大きい「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」が好調な展開ぶりを示しており、これも客単価上昇の要因となる。さらにそれと差し換えの形で【吉野家夏の風物詩的な鍋「牛バラ野菜焼」、早くも4月23日から復活販売】でも伝えたように「牛バラ野菜焼」が登場し、こちらも高客単価商品として影響を与えている。

結果として客単価は大きく底上げ、客数は大きく減少、差し引きでわずかな売上減の形に収まっている。客単価・客数それぞれ前年の反動で逆方向の影響が多分にあるにも関わらず大きな動きを示しており、やや過剰な動きにも見受けられる。

以前の牛丼の値下げ・値上げなどに伴う反動の影響を最小化するため、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。2回の牛丼の値上げの影響を受けて客単価が大きく上昇しているが、その分客数が足を引っ張られ、売上はむしろ減退してしまった形を示しているのが分かる。ここ数か月吉野家では、前々年同月比で確認すると、客数は減退気味でもその分客単価の底上げで売上を維持し「評価できる値上げ」の形を示していたが、今回月では客足の遠のきの方が大きな力となり売上をマイナスに引っ張った形となってしまっており、気になる動きといえる。

↑ 牛丼御三家2015年4月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年4月営業成績(既存店)(前々年同月比)

「ごろごろ煮込みチキンカレー」(松屋)続いて松屋。前月末から展開を開始した「豚バラにんにく味噌炒め定食」に加え、4月からは「春のよくばりカレー祭り」と称して相次ぎ新作カレーを展開(【「ごろごろ煮込みチキンカレー」(松屋) 試食】)、さらに4月23日からは「てりたまチキン定食」など、いつも通り意欲的・積極的な新メニューを投入し、話題を集めている。概して高単価のメニューであることから、逐次新作を市場に披露することにより、飽きの来ないメニュー展開の姿勢を示している感もある。目新しさを提供することで、リピーターにも期待感を持たせ、退屈させない心意気なのだろう。それゆえに、メインメニューの牛めしにおける、プレミアム化が停滞したままなのは気になる所。

4月の業績はというと、客数の下落を3社中最小限に留め、客単価の上昇も他社に匹敵する値を確保。結果として3社の中では唯一前年同月比の売上をプラスとして計上した。前々年同月比でも唯一プラスを維持しており、今回月に限れば松屋は大健闘をしていると評価できる。

最後にすき家。4月の動向を振り返ると、1日から色々と話題を集めた「牛すき鍋定食」と差し換えの形で「鍋焼ビビンバ定食」の販売を開始、さらに「うな丼」「うな牛」を28日から期間限定で投入している。しかしそれよりも大きな要素として挙げられるのは、【すき家の牛丼並盛350円へ値上げ、肉と玉ねぎも2割増に】でも伝えている通り、コストアップに伴い主力商品である牛丼を4月15日から値上げした点。説明によれば具材の盛り込み量も増えているとのことだが、商品単価が上昇したことに違いは無い。

この影響もあってか、客単価は大きく上昇したものの、客数は1割以上の減少。結果として売上は3社中最大の下げ幅を示してしまった。前々年同月比を試算しても客単価の上昇で客数の減退をカバーできず、3社中売上高の減少ぶりが一番大きい結果が出てしまっており、苦戦しているようすがうかがえる。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年4月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年4月)

客数の減退具合が気になるが、見方を変えると……


今回精査分から新年度となり、2014年4月の消費税率改定に伴う価格変化の影響(大よそ客数減・客単価増)の反動が生じることから、客数のプラス化が期待できたが、いざフタを開けてみれば客数の減少ぶりは継続した結果となった。前々年同月比の値を見ても税率改定時以降の値上げによる影響が大きく反映される形となっている。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年4月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年4月)

公開値はあくまでも売上で、利益はまた別の話だが、売上をそこそこ以前の水準に維持できても、客数が大きく減ったのでは店舗運営上の柔軟性に欠けることになる。あるいは薄利多売から厚利少売(との表現が適切か否かは別として)へのシフトが密かに起きているのかもしれない。元々脱デフレ感に伴うコスト上昇の機運は続き、その流れを後押しする環境と見る事もできる。吉野家の鍋メニュー導入の際に語られたキャッチコピーは「うまい・やすい・ごゆっくり」だが、これが「うまい・ごゆっくり・やすい」となる可能性(優先順位の入れ替え)は多分にある。

客単価の引き上げで客数は減っても売上や利益を維持できれば、客が遠のく際のリスクは上昇する(客数の減少に対する売り上げの減退度合いが大きくなる)が、店員負担は軽減される。間接的により確かなサービスの提供も期待できる。

食生活の静かな、そして確かな変化に伴い、コンビニや宅配、通販などにシェアを奪われ、廉価系ファストフードはいずれも厳しい戦いを強いられている。ここ数年来の牛丼チェーン店の客数減少も、単純にコスト高に伴う客単価の引き上げによる売上に連動するものとして見るのではなく、客層の絞り込み、自社のポジションの変化を模索したものと見ると、吉野家の鍋メニューの投入や、松屋の高単価定食の導入ラッシュも、案外すっきりとした動きに受け止められる。

類似業界として良く比較されるハンバーガーチェーン店では、マクドナルドが苦戦を強いられ、モスバーガーやケンタッキー・フライド・チキンでは高単価・高品質をさらに前面に押し立てて独自ブランドの権威付けを高め、売上を維持すると共に確固たる地位を築き上げつつある。

今年一年の動向次第では、牛丼チェーン店も社会的立ち位置をこれまでのものから大きく変化させることになるかもしれない。


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