2015年夏の電力需給状況予測をグラフ化してみる(今夏電力需給対策向け先行記事)

2015/04/16 15:00

昨冬における「数値目標を設けない節電要請」などを発した、政府による電力需給対策・施策と同様、今夏の電力需給に絡んだ施策「2015年度夏季の電力需給対策について」はゴールデンウィーク明けにも発表され、そこで具体的な今夏の節電要請なり電力使用制限令の有無に関する詳細が判明する。その施策決定の判断材料として、以前から各種委員会が開催され、関連業界をはじめ多方面から資料が集められ検証がなされ、データの精査が行われている。中でも重要なのが【総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会内の電力需給検証小委員会】で、今夏に向けた内容討議としては、すでに4月に2回ほど開会がなされており、その中で施策決定のための各種資料が提示され、その公開も行われている。過去の電力需給対策を検証するに、この委員会で呈された資料がほぼそのままの形で「電力需給対策について」の公知資料としても用いられることから、今回はその資料を先行する形で取得し、状況の確認を済ませておくことにする。なお実際に「2015年度夏季の電力需給対策について」が公知された暁には、今記事に上書きする形で施策を盛り込んだ記事と成す予定である。

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2015年夏季は「他社融通前提」で最低限の予備率は確保


現時点では委員会から政府に提出する「電力需給検証小委員会報告書(案)」はまだ策定されておらず(4月末の次回小委員会で策定予定)、各電力会社からの報告書がまとまった状態のみとなっている。それによると連系線による電力融通が可能な9社において、経済復旧・発展による電力需要の増加、新電電への離脱に伴う影響を加味した、夏季の経済影響などによる電力需要変化は次の通り。

↑ 電力需要における夏期経済影響等(新電力への離脱影響含む、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)
↑ 電力需要における夏期経済影響等(新電力への離脱影響含む、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)

↑ 電力需要における夏期経済影響等(2015年度見通し、内訳、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)
↑ 電力需要における夏期経済影響等(2015年度見通し、内訳、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)

東京電力管轄では特に新電力への離脱影響が大きく、経済復興に伴う需要増を大きく上回る形となり、結果として需要は減退。電力需給の観点で新電力は大きな貢献を果たしている。9電力管轄全体では2010年度夏季比で経済影響の需要増加は100万kWだが、新電力への離脱(需給上ではマイナス換算される)が372万kWにも達している。

また家庭や大口、小口など各消費先における節電による需要減だが、こちらは節電意識の減退に伴い、大よそ2014年度よりは逓減。2010年度比ではなお高い値を示しているものの、電力需要を推定する際の係数としては、低めの値を計上する形となっている。

↑ 2010年度比の、2015年度夏季定着節電見込み(9電力管轄)
↑ 2010年度比の、2015年度夏季定着節電見込み(9電力管轄)

昨冬北海道電力管轄で選択肢の一つとして試算された「電気料金の値上げが需要に与える影響」に関しては、10%強もの値上げ申請を昨年12月に行った関西電力管轄への適用は(電力利用状況の違いなどから)難しいとして断念。事後データを収集し、今後の検証時に分析を行うにとどめるとしている。

一方電力供給に関しては、火力発電所に係わる定期検査時期のピーク時からのシフト、延期などが一部において求められている。また長期停止火力発電所の一部は設備劣化などから順次停止しており、これが合わせて365万kW分、以前から設備劣化で停止し再稼働が出来ていないものが551万kW分に及んでいる(一部廃止予定)。

水力発電は前年度とほぼ変わらず、揚水発電は融通受電の減少などを受けて全体量は減少、太陽光発電は安定的に見込めると算出評価できる範囲でも前年度から大幅に増加し、見通し供給力でも前年度の2倍近くの509.8万kWに達している。風力や地熱発電は昨年度とほぼ変わらず。

これらの需給動向を受け、現時点での見込みにおいては、電力管轄間の電力融通を前提とすれば、全電力管轄内で安定的な電力供給の最低ラインである、予備率3.0%を確保できることとなった。

↑ 2015年度夏季(8月)における電力予備率見通し(沖縄除く)
↑ 2015年度夏季(8月)における電力予備率見通し(沖縄除く)

ただし昨年に続き原発が停止した状態が続いていることを受け、関西電力・九州電力管轄では供給力不足が深刻化しており、電力融通が無い場合を仮定するとそれぞれプラス0.8%・マイナス2.3%の予備率が算定されてしまう。関西電力と九州電力の融通あり状態における3.0%は、他社からの融通を受け、ギリギリのラインにまで底上げするという意味である。

また、原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加も顕著化している。「原発の停止分の発電電力量を、火力発電の焚き増しにより代替していると仮定し、直近の燃料価格などを踏まえ」これまでの実績及び今後の試算を行うと、(各資源価格の上下変動も考慮)もあわせ、2011年度から2014年度の4年間で12.4兆円のロスが生じる計算となる(電力需給検証小委員会第10回会合「資料3 第9回委員会の指摘事項への回答」などから)。

↑ 原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加(兆円/年)(2015年4月時点、2014年度は推計)
↑ 原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加(兆円/年)(2015年4月時点、2014年度は推計)

石油価格の大幅な下落に伴い、石油焚き増し分の試算額は大幅に下落したが、多くはLNGにシフト済。そのLNGも単価は下落傾向にあるものの、昨年末に大きく価格が上昇した影響もあるため、年度換算では大きな変化はない(ちなみに試算値はLGNが13円/kWh、石油が17円/kWhとなっている)。

他方温室効果ガスの排出量は火力発電所の稼働率の上昇に伴い大幅に増加。2013年度は電力分だけでも4.84億トンとなり、2010年度比で1.10億トンの増加を示している(電力以外は0.14億トンの減少)。

当然、このコストは直接的に電力会社への負担となり、メンテナンスや機器改編・更新のさまたげの大きな要因となる。そして過剰な負担を軽減するために行われる電気料金の引き上げは家計や企業への重圧となり、それは経済行動の低迷を導き得る。家計に限っても、それだけ可処分所得が減り、生活への負荷につながることは、多くの人が体感しているはずだ。

また、昨年に続き原発周りの状況が不安定なことも合わせ、各電力管轄における連系線の強化も呈示されており、「資料9 地域間連系線の増強の検討について」では西日本と東日本の間の送電能力を現在の合計120万kW(+90万kW増設中)から、合計で300万kWにまで2020年代後半を目途に増強することが検証されている。



今件資料を読み解く限りでは、恐らく今夏の電力需給対策・施策は節電要請のみに留まることになるだろう。とはいえ関西電力・九州電力の状況や、火力発電所のオーバーワーク的稼働状態、そしてそもそも論としてこのような電力需給に係わるやりくりの委員会が定期的に開催され、電力需要が増す時期に合わせて政府見解・要請が出される事態そのものが、電力供給上問題があること、不足状態にあることを意味している。

震災直後から連なる一連の政策の決定的な過ちと、それが今なお続く現状を悔やみつつ、今後に向けて最大限の状況改善のための手立てを望みたいところだ。


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