世帯主の年齢別貯蓄総額分布をグラフ化してみる(2014年)

2014/05/27 14:00

日本における高齢化社会の進行と共に討議されることが多い話題の一つに、世代別の資産格差がある。元々経年蓄積による蓄財があることから、高齢者の方が貯蓄が多いのは当然の話なのだが、現実問題としてどの程度の世代別格差が生じているのだろうか。今回はその指針の一つとして、2014年5月16日付で公開された総務省統計局による「家計調査」の「貯蓄・負債編」最新版速報値(2013年分)をもとに、「二人以上世帯」における現状やこの数年における変移を確認していくことにする(【家計調査報告(貯蓄・負債編)-年平均結果速報-(二人以上の世帯)】)。

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全体比率で見る世帯数と貯蓄額


今回用いるデータは「家計調査」の「貯蓄・負債編」の最新版及び過去のデータを引き継いだもの。元々「貯蓄・負債編」では単身世帯は対象としておらず、そのデータを精査することはできない。また「勤労者世帯」「勤労者以外世帯」とわざわざ表記したのは、同調査では勤労者がいる世帯といない世帯では大きな違いが生じるため、多分に区別してデータの展開が行われているからに他ならない。もっとも、意味としては「二人以上世帯」で間違いない。つまり「会社員」から「社長」「年金生活者」「無職」まで含むことになる。

グラフなどで登場する用語のうち、気になる、誤解を受けやすい言葉についていくつか補足しておくと、次の通り。

・「勤労者世帯」…世帯主が勤め人の世帯。ただし社長などの役員は「勤労者以外」や個人の自営業者、無職世帯は含まれない。

・「勤労者以外世帯」……世帯主が役員、個人営業世帯、無職世帯(年金生活で世帯主が働いていない場合も含む)など。上記「勤労者世帯」に該当しない世帯全般。

・「貯蓄」……負債を考慮しない、単なる貯蓄の額。預貯金だけでなく、生保の掛け金、有価証券、社内貯金、さらには共済などの貯蓄の合算。また負債をいくら抱えてても相殺されることはない。

次のグラフは「該当世帯数全体における、各世帯主年齢別の世帯数比率」、そして「各世帯主年齢階層別の、貯蓄総額に占める金額比率」を算出したもの。「世帯数割合」は比較のために生成したものだが、他の主旨の記事でも使えそうな、有益な結果に違いない。

↑ 世帯数割合(二人以上の世帯・勤労者及び勤労者以外世帯)(-2013年)
↑ 世帯数割合(二人以上の世帯・勤労者及び勤労者以外世帯)(-2013年)

↑ 世帯主の年齢階級別貯蓄分布状況(二人以上の世帯・勤労者及び勤労者以外世帯)(-2013年)
↑ 世帯主の年齢階級別貯蓄分布状況(二人以上の世帯・勤労者及び勤労者以外世帯)(-2013年)

これらのグラフには当然ながら「単身世帯」は含まれていない。よって日本全体の状況を指し示しているわけではないが、昨今の状況における概要的なものは十分把握できる。

元々若年層は蓄財の機会・期間が少なく、実入りも少ない。当然貯蓄も少なくなる。さらに高齢者世帯が増加し、若年層世帯の数が減少しているので、世帯数割合が減少する(【「お年寄りがいる家」のうち1/4・414万世帯は「一人きり」】。2008年時点の状況を解説した記事だが、該当調査は5年おきに行われるもので、現時点でも最新値である)。結果として「年齢階層別の貯蓄総額比率」も、高齢層が増えていく結果になるのは明らか。

直近の2013年分に関しては、70代以上の世帯数が大幅に増加したことを反映し、世帯数比率・貯蓄比率共に、ますますシニア層の比率が高まっている。

シニア層全体の貯蓄額増加は、人数増加と経年蓄積による結果


上の2グラフから(特に2番目のグラフを見て)「世帯主が高齢層の世帯はみな、ますますお金持ちになっていく」「若年層がさらに年々圧迫を受けている」と誤解をする人がいる。しかしこの結果は、2002年以降時間の経過と共に個々の高齢者世帯が富んでいくことは意味しない。それは以前別の記事「年齢階層別の収入や負債の推移をグラフ化してみる」で挙げた次のグラフを見れば明らかである。

↑ 現貯蓄額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)(-2013年)(再録)
↑ 現貯蓄額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)(-2013年)(再録)

↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)(-2013年)(再録)
↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)(-2013年)(再録)

つまり「所属世代層全体では無く、1世帯単位で比べれば、元々高齢層は若年層と比較して貯蓄額が大きい。その高齢層の世帯数が増加し、若年世代層が減っているのだから、全体に占める高齢層全体の貯蓄額比率が増えても当然」ということになる。「個々のお年寄り世帯はますます裕福になる」とは構成要素一つ一つの値の比較と、各世代属性全体による値の比較を混ぜ合わせてしまうことで生じやすい、誤解の一つである。

↑ 世帯主の年齢階級別・世帯当たりの平均貯蓄額(二人以上の世帯・勤労者及び勤労者以外世帯)(万円)(-2013年)
↑ 世帯主の年齢階級別・世帯当たりの平均貯蓄額(二人以上の世帯・勤労者及び勤労者以外世帯)(万円)(-2013年)

同時に世代別全体で見た場合、直近2013年においては「二人以上の世帯の総貯蓄の2/3強は、60歳代以上の世帯だけで有する」「二人以上の世帯の総貯蓄の約84%は、50歳代以上の世帯だけで有する」ことになる。

さらに付け加えるとすれば、今件は単なる「貯蓄」であり、上記にある通り負債の考慮は無い。そして負債の多くは住宅ローンであり、50歳代前後にはほぼ完済していることから、実質的な「純貯蓄額」(貯蓄から負債を引いた額)の総量はさらに50歳代以上に偏ることになる。



内需喚起が叫ばれる昨今だが、若年層に無理な支出を強いるより、いかに「60歳代以上で2/3」「50歳代以上で84%」(二人以上世帯のみ)の貯蓄を市場に、無論サービスなどの対価として、吐き出させるかを考えた方が効率は良い。やせ細ったまだ成長過程の樹木から未成熟の果実をもぎ取るより、熟した果実が実った大人の木々から収穫を得た方が、はるかに健全なのは一目瞭然。

誤解受けかねないので付け加えておくが、これは「高齢層に無駄遣いをさせろ」を意味しない。支払いの価値がある効果・満足感を得られる商品・サービスを考察し、提供していき、お財布のひもを緩められるだけの社会的安心感を提供し、さらには資産を市場、そして特に若年層に還流させる仕組みを多数創り上げることを意味する。

それこそが社会全体の活力・生産力を底上げし、高齢者の満足感と、後に続く世代に直接の資産だけでなく、将来に続く国富をも手渡せる道につながるはずである。


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