映像ビデオ市場の推移をグラフ化してみる(2014年)

2014/04/26 10:00

インターネットメディアの普及と回線の高速化、映像技術の進歩に配信サービスの充実性などから、昨今では物理メディアにおけるエンタメ部門のセールスが思わしくないとの話を多方面で見聞きする。音楽業界、CD・DVD部門がその最たるものだが、映像ソフト(ビデオソフト、DVDやBD(ブルーレイディスク、以下同))でも状況に大きな変わりはない。今回は日本映像ソフト協会が2014年4月22日付で発表した、日本の映像ソフト業界そのものやソフト関連の実地調査結果を絡めた白書【映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査】の最新版をもとに、日本の「映像ビデオ市場」の推移を確認していくことにする。

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減退続くが新要素が2013年から追加…ビデオソフトの市場動向


まずは映像ビデオ市場の市場規模。「セル」は販売、「レンタル」は貸出を意味する。収録されている過去のデータ(2005年以降)を見る限り、2006年-2007年にやや変わった動き(セル市場の増大)が見られるものの、全般的にはセル・レンタル共に市場規模は縮小する傾向にある。

↑ ビデオソフト(DVD&BD)市場規模推移(億円)(-2013年)
↑ ビデオソフト(DVD&BD)市場規模推移(億円)(-2013年)

特に2008年以降の急落ぶりは、【音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上をグラフ化してみる】で示した音楽CDの売れ行きとおおよそ似ており、非常に興味深い。メディア環境の変質は音楽メディアと映像メディア双方に、同時期に起きたことが分かる。見方を変えればメディアそのものの変質が状況変化の主要因であり、コンテンツの種類はあまり関係が無いということになる。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2013年)(再録)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2013年)(再録)

エンタメ系メディアは直近においては、2007年から2008年が大きなターニングポイントと見て問題はなさそう。コンテンツの質や方向性では無く、鑑賞媒体・ツールなどの周辺環境変化が、市場に大きな影響を与えていることになる。

なお2013年分から緑色の部分、有料動画配信サービスの市場推計値が追加されている。これは2012年までがゼロで推移していたのでは無く、単に今件調査結果で対象としていなかっただけの話。具体的には「定額見放題サービス」「都度課金サービス」「有料動画購入サービス」などが該当する。一方でWOWOWやスカパー!のような有料放送局による自社放送番組の再配信、ポータルサイトの有料付随サービス、動画配信サービスの有料プレミアムなどは該当しない。

これらの動画配信が「映像ビデオ」であるにしても「映像ビデオソフト」とカウントして良いのか否か、賛否両論が生じ得る。しかし音楽市場でも実質的に有料音楽配信の売上をカウントしていること、コンテンツの販売という視点ではメディアが異なるだけの話と考えれば、市場規模に含めても構わない感はある(もっとも音楽の有料配信はデータが購入者側に残る一方、映像の有料動画配信サービスは電子書籍同様に、多分に「期間限定で視聴できる権利」の購入であることを考えれば、どちらかに分類する必要性が生じた場合、「セル市場」ではなく「レンタル市場」のカテゴリに含めるべきと考えられる)。

また有料動画配信市場は2013年分からの計上だが、少なくとも直近1、2年はそれなりな規模で市場が存在している。あくまでも推定でしかないが、2011年以降はセル市場+レンタル市場+有料動画配信市場の合計額、つまり広義の意味での映像ビデオ市場は、大きな変化が無かった可能性が高い。

セルとレンタルの規模動向


今資料ではレンタル・セルから成る提供方式、そしてDVD・BDで構成されるフォーマット方式別にデータが収録されている。過去のデータをも抽出し、都合5年間に関して金額、そしてそれぞれのDVD・BD比率を示したのが次のグラフ。

↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(億円、2009-2013年)
↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(億円、2009-2013年)

↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(比率、2009-2013年)
↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(比率、2009-2013年)

市場規模が減退しているのは一つ目のグラフで確認できるが、2009年-2013年においては2010年のレンタル市場激減が大きなインパクトとなったのが分かる。また、メディアフォーマットの上ではBD化が逐次進んでいるものの、2012年ではレンタル方面でBDが大きく落ち込み、これがレンタル市場そのものの下落を拡大させてしまっている。この傾向について2012年分の報告書では単に「伸び悩んでいる様子がみてとれる」としかなく、具体的な理由は説明されていない。BD機器そのものは普及率を高めており、やや奇妙な話ではあり、その原因は今なお判明していない。単にソフトの不作だったのかもしれない。

映像ソフトでは「ビデオ市場は大量購入をする少数の『ヘビーユーザー』によって支えられている部分が大きい」という実態がある。これは各種調査、そして今回年も含めた今報告書でも明らかにされている。ヘビーユーザーだからこそ、画質にはこだわりを持つためにBDを積極購入する。それゆえに、セル市場ではBDの比率が急上昇している(2013年では4割近くに達している)。一方レンタルはさほどこだわりを持たないため、画質を気にしない視聴者が多く、BDの浸透率は今一つ、と考えればある程度は納得がいく。

もっとも直近2013年では、レンタルでBDは2012年の減退から再び増加。しかしそれ以上にDVDが減り、結果としてレンタル総額は減少しつつある。セル市場においてはDVDの減少分をBDが補完しており、実質増加に転じているのとは対照的である。

また上記でも言及したように、有料動画配信市場には概念的にレンタル市場と見なすこともできる。報告書ではそのような措置による計算はなされていないが、来年2014年分以降は前年比の計算も可能となるため、当サイトでは併記する形で「有料動画配信市場も加えたレンタル市場動向」の精査も行うことにしよう。



セル市場はヘビーユーザーへの偏り、レンタル市場は他のメディアやエンタメとの競争力の(相対的)低下。ビデオソフト市場はセルとレンタルでそれぞれ別の問題を抱えながら、総計で縮小の一途をたどっている。ただしセル市場のここ1、2年の動向、さらにはレンタル市場における減少と有料動画配信市場の値の計上を合わせ見ると、映像ビデオソフトというコンテンツの市場そのものはここ数年では縮小していない、単にレンタル部門で物理メディアから動画配信に利用者がシフトしているだけではないかとの雰囲気がある。

有料動画配信市場の計上が2013年からなので、それ以前の動向を検証できず、この仮説は現時点では裏付けを取ることができない。とはいえ、音楽業界では物理媒体の市場縮小分をデジタル媒体の市場拡大分で補いきれず、全体としては縮小する傾向にあるが、映像ソフト市場では上手い具合にメディアシフトが起きているのではないか、そのような予見を覚えさせる値ではある。

来年発表分、現在進行中の2014年においては、2013年以上に有料動画配信市場が拡大している。動画視聴というエンターテインメントが、スマートフォンやタブレット機の急速な普及に伴い、ますます日常化しつつある。この環境の変化が、映像ビデオ市場においてはマイナスとなるのかプラスをもたらすのか、来年の発表が楽しみでならない。


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