主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(2014年)

2014/11/08 17:00

先行する記事で主要キー局における直近視聴率動向の確認をした。今回はそれら最新のデータを基に、過去複数年間に渡るキー局(+α)視聴率の移り変わりをグラフ化し、状況の精査を行うことにする。単独番組の、あるいは1年単独での視聴率は語られる、耳にすることはあるが、複数年の移り変わりを確認できる機会はさほど設けられていない。テレビ市場、テレビ業界動向を推し量るには、貴重なデータであることは間違いない。

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HUTは漸減傾向、そして底打ち・反転へ……?


テレビ視聴率は日本国内では、現時点ではビデオリサーチ社のみが計測を行っている。しかし同社ではデータの大部分は非公開とし、さらに同社公式サイトに掲載中の公開データにおいては、分析も含め二次的利用は不可と宣言している。そこで主要テレビ局の中から【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】にある各種短信資料をチェックし、「決算説明会の補足資料として」掲載されている主要局の視聴率を逐次抽出。グラフの生成を行うことにした(他局の短信資料で補足・確認の精査も合わせて行っている)。

まずはHUTの推移を確認する。この「HUT」とはテレビの総世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味する言葉で、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれぐらいの比率の世帯がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値である(チャンネル別の区分は無い)。

これには録画した番組の再生、家庭用ゲーム機でテレビ画面を使っている場合は該当しない。またパソコンやスマートフォンなどによるワンセグの放送視聴も当てはまらない。ただしインターネットテレビによるテレビ番組の視聴は該当する。

一方、数字上は反映されているものの「ながら視聴」については、反映の是非も含めて考慮されるべきではあるが(極論としてテレビのスイッチは入っているものの、テレビの画面そのものはほとんど観られていない、ラジオのように使っている状況もあり得るので、それを「視聴」と呼ぶか否かの定義レベルでの話となる)、区分は不可能であることから従来の定義に従う。

HUTの値として確認できるのは、ゴールデンタイム(19時-22時)、全日(6時-24時)、プライムタイム(19時-23時)の3種類。そのうち一番視聴率が高く、(番組の注目度、質も合わせて)変移が見やすいゴールデンタイムのもの、そして包括的な意味を持つ全日のグラフ、合わせて2つを併記する。

↑ HUT推移(ゴールデンタイム)
↑ HUT推移(ゴールデンタイム)

↑ HUT推移(全日)
↑ HUT推移(全日)

以前「HUT」の語彙(ごい)を調べた際の文献では「HUTはゴールデンタイムで70%前後が普通」と解説されていた。しかし直近データでは60%半ばにまで落ち込んでいるのが分かる(縦軸の最下方が58%になっていることに注意)。1997年度下半期の71.2%をピークに、多少の上下はあれど、全体的には下降の一途をたどっていた。また、年末年始はテレビ視聴率が上昇するため、毎年「上期より下期の方が高い」傾向があり、結果としてギサギザの形を示す。無論年度ベース、つまり通期の値は、上期と下期の平均値となる。

中期的には全日・ゴールデンタイム共にHUTは落ちているが、2010年前後からは(特にゴールデンタイムでは)横ばいの動きに転じている。さらに2013年度に入ると、明らかに底打ち感から反転の兆し、トレンド転換の動きが明確化した。同時期に電通・博報堂や経済産業省による月次の記事を展開している広告費動向において、テレビ広告費の動向も似たような動きを示していたことから、テレビの復調感を覚えさせる流れではあった。

ところが直近の2014年度上期では、再び下落基調に転じている。ゴールデンタイムでは約20年足らずの間で最低値を示した2011年上期と同率の62.7%にまで下落し、全日でも最低値の40.8%に近づく勢い。明らかに前年度までとは異なる雰囲気に見える。

一方で【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】などで解説している通り、携帯電話(とりわけスマートフォン)やインターネットの普及で「ながら視聴率」が上昇を続けている現状を留意しておく必要がある。つまりテレビ視聴における質の変化が起きていることから、単純に10年前のHUTと現在のHUTを密度的に同列と見るのは無理があるという次第。

勉強の際に「雑音が一切無い環境で集中した1時間」と、「テレビを見たり漫画を読みながらの1時間」では、時間の長さは同じでも、密度・効果はまったく異なる。それと同じようなものだと考えれば良い。もっともこの「ながら視聴」でも最近はスマートフォンなどを使い、LINEやツイッターなどでチャットをし「ながら視聴」することで、テレビ番組内容との連動性が発生し、より番組そのものを楽しめる、あるいは口コミを瞬時に広げるという効果も指摘されている。当然テレビへの注力度は高いものとなる。「ながら視聴」をひとくくりにしてテレビ視聴の質の低下と結びつけるのには、困難さが見えて始めている。テレビは単にテレビ機材のみに注視する時代に、終わりを告げようとしているのかもしれない。

主要キー局の視聴率動向


次に各局の視聴率について。年度ベースにおける2005年度から2014年度(2014年4月-2015年3月。「2015年3月度」と同じ期間だが表記が異なることに注意)までの主要局のゴールデンタイムにおける視聴率の推移をグラフとして生成した。なお類似データとして全日・プライムタイムのものもあるが、大局的に違いは無いので、別途生成はしない。また2014年度は上期のデータしかないので、それをそのままグラフ上に反映させるが、上記説明の通り上期は下期と比べて視聴率では低い値が出るため、2013年度までと比べると低めの結果が出ていることに注意する必要がある。これについては2014年度通期分の結果が出た際に修正を行う。

↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)

この数年の動向として、「テレビ朝日とテレビ東京の持ち直し」「NHK・フジテレビの凋落」「TBSの不調」(日テレはそこそこな状態を維持)が確認できる。TBSは5年ほど前に急落を見せた後に横ばい傾向へと移行したので、先行きに可能性はあるが、NHK・フジテレビ双方とも5年間ほぼ継続して下落を継続、特にフジテレビでは2012年度に1.6%ポイントもの大きな下落を示している。一方でテレビ朝日はこの数年、少しずつだが着実に視聴率は回復傾向にあった。

2014年度分については上記の通り上半期のみの反映のため、通期よりは低い値であることがほぼ確実なことから、前年度分からの傾向はつかみにくいが、それを差し引いてもテレビ朝日が大きな下落を示しているのが確認できる。これは先行する半期単位での解析記事で触れた通り、同局の前年同期比は主要局中最大の下げ幅を示したことによるもの。

↑ 2015年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)(再録)
↑ 2015年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)(再録)

後期での持ち直しがよほどうまくいかないと、2014年度はは2013年度から続く形での下落となり、再び下方トレンドに逆戻りする可能性が多分にある。

一方でNHKと日本テレビは上期の時点ですでに前年度通期の値を上回っている。後期でよほど下手を打たない限り前年度比でプラスとなることは確実。特にNHKはこれまで下方基調を継続し、前年度でさらに大きく下げていただけに、トレンド転換の可能性は大いに期待されているに違いない。



各局の視聴率動向がこの1、2年の短期的なものの動きでは無く、中期的な流れに沿ったものであることが、今件データからは把握できる。一方、前年度上半期において社会現象化するほどの好評を博した、TBSの「半沢直樹」のようなスター的存在が局全体の雰囲気を変える可能性も秘められている。この「スターコンテンツが複数、定期的に登場すれば、全体の流れは容易に変わりうる」状況は、かつてのテレビ局の状況そのもの。また媒体は異なるものの昨今の雑誌業界、具体的には「進撃の巨人」や「妖怪ウォッチ」で大きく飛躍した雑誌が複数存在している状況にも言えることであり、興味深い(し、よく考えてみれば当たり前の話でもある)。

直上で示した各局の中期的な視聴率動向が、今後どのような動きを示していくのか。テレビ全体の視聴動向、HUTにも関わる話なだけに、大いに気になるところではある。

なお日本テレビでは2014年4月1日付で定額制動画配信事業のHuluの日本における事業会社を完全子会社化し、本格的定額制動画配信サービスに参入している。アメリカでは急速に普及しつつあるサービスであること、日本でも定額制のもとで動画や音楽を視聴するスタイルが浸透し始めているところから、これがいかなる影響を示すのか、あるいはポジティブに影響を示すような施策を打ち出せるのか、日テレの動向に注目したいところではある。

少なくとも現時点では前年度比でプラスを示しているが、これにHuluがどこまで影響しているのか、現時点では短信やその補足資料に一切名前が確認できないこともあり、把握することは難しい。


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