現状・先行き共にDIは先月を上回り水準値を超える…2015年3月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2015/04/08 16:00

内閣府は2015年4月8日付で2015年3月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して52.2となり、水準値の50.0を超える状態を確保した。先行き判断DIは先月から続き4か月連続して上昇し53.4となり、水準値の50を超える状態が続いている。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断も景況感の好転化を反映する形で前月から一部変更され「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、賃上げへの期待や外国人観光需要への期待等がみられる」となった。もっとも物価上昇が景況感の足を引っ張っている状況は続いている(【平成27年3月調査(平成27年4月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状指数は大よそ上昇、先行き指数は高安まちまち


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2015年3月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス2.1ポイントの52.2。
 →「やや良くなっている」が大幅に増え、「やや悪くなっている」が大幅に減少。
 →家計はサービス関連小売が大きく上昇。企業は非製造が上昇。雇用関連は求人の増加の動きがあったことで上昇。

・先行き判断DIは先月比で0.2ポイントプラスの53.4。
 →物価懸念は続くが、燃料価格の下落と、賃上げへや外国人観光客需要の期待を受け、家計と雇用部門で上昇。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

昨今では原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となっている。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。

先行きDIにおいては先月同様に電気料金の高騰に対する懸念が強いものの、昨今の原油価格下落に伴う燃料費の負担が減少する事への期待が大きい。冒頭コメントでもガソリン価格などへの特定名を挙げた言及が無くなり、「物価上昇への懸念など」でまとめられる程度になったことから、原油関連商品の下落が景況感に大きなプラスとなったことがうかがえる。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

現状判断DIは住宅関連のみ下落


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2015年3月)
↑ 景気の現状判断DI(-2015年3月)

今回月は消費税率改定後12か月目の月。小売店側から見た駆け込み需要の反動に関する文言はすでに消えている。直接の駆け込み特需の反動は、その文言が消えたタイミングの半年経過でほぼ消失したと判断できる。一方で消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させるに必要となる材料が見当たらず、低迷感は継続していた。さらに電気代や食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は重圧感の中にあった。

今回月は上記にある通り前月から続く形で、原油価格の下落に伴いガソリンや灯油価格が値を下げており、心境的にはプラスに働いている。特に自動車を多用する分野の人には、日々のように目に見える形で負担が減ることから、マインドに大きく貢献したことは間違いない。また昨今では円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けている。

水準値(50)以上の項目は雇用関係以外に今回の上昇で企業動向関連全般、そして家計動向関連でも飲食とサービスが該当項目に。前月からの変動の観点で見ると、住宅以外でプラス。特に飲食関連は2か月前は40にも届いていなかったことを合わせ見るに、急速な回復ぶりが目に留まる。

景気の先行き判断DIは高安まちまち。足し引きで全体ではかろうじてプラスを示した。

↑ 景気の先行き判断DI(-2015年3月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2015年3月)

最大の上げ幅を示したのは小売関連でプラス2.4、次いで雇用関連でプラス1.4。家計動向の中では金額が大きく周辺市場にも影響を与えやすい住宅関連は3.8のマイナスを示している。また今回月の動向に伴い、水準値(50)に届かないのは住宅関連と製造業の2つとなり、足踏み感を覚えさせる。原材料費の高騰と、中期的な住宅需要の低迷を予見してのものだろうか。

雪解け気配もあるが不安感は払しょくしきれず


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・株高や大手企業の賃金増で消費マインドはわずかながら上がりつつある(商店街)。
・中国、韓国、東南アジア諸国からのインバウンド客の増加、その人達の消費増加にかなり助けられている(都市型ホテル)。
・3月に入って、多くの海外高級ブランドが値上げを行ったが、売上は落ち込んでおらず、宝飾品や美術品も好調に推移している。インバウンド売上も伸び続けている(百貨店)。
・軽自動車税の増税前の駆け込み需要が期待していたほどの量にならなかった(乗用車販売店)。

■先行き
・ベースアップや夏季賞与の増加等、消費にとって明るいニュースが多くなっている。増額分のうちある程度は消費に回り、景気全体が上向いてくるものと想定している(百貨店)。
・日本人客の動向については、今年は雪解けも早く、季節商材の購入には最適な状態が見込まれる。また、外国人を始めとした旅行者による来店も、春以降、大幅増で推移するとみられる(百貨店)。
・円安、株高の状況が今しばらく続きそうであり、更に各企業のベースアップ等の影響が少しずつ出てくるような期待感もある(スーパー)。
・生活関連の日用品等が値上がりする一方、賃金は消費に結び付くほどは上がっておらず、消費者に不安感が残っている。悪くなることはないが良くもならず、景気は変わらない(商店街)。

今回引用している範囲は「家計」の全国における代表意見のみだが、昨今の景気情勢が非常によく表れる形となっている。なお「インバウンド」とはこの場合、海外からの観光客を意味する。国内の供給に関して国外から需要が到来することから、日本国内に限れば需要は底上げされる形となる。

4月からの軽自動車税の増税に伴う駆け込み需要は事実上終息したものの、ガソリン価格の下落による景況感の改善が直接自動車運転手に対してだけでなく、多方面にプラスの影響を与えていること、円安などを要因とした物価高への懸念と海外観光客による消費増加、年度替わりに伴う賃金引き上げへの期待など、まさに現状、そして先行き感が手に取るように分かる。さらに株価上昇に伴い消費が喚起されるとの言及が見られるのも興味深い。

今件では引用していないが、景気の先行指標と評されることが多い雇用関連では、正社員求人数の増加をはじめ、ポジティブな言及が相次いでいる(例えば「これまで人材募集を出していなかった企業の求人情報を見かけることが増えている」「企業からの学生インターンシップの受入れ案内が、件数も対象学年も拡大しており、企業の採用意欲が積極的になっていると感じる」など)。雇用は消費の源となる収入の確保には欠かせない存在であり、また雇用する側の立場で考えれば「雇用の増強が必要なほど事業の上向き感が期待できる」ことから、言葉通り「景気の良い話」とみることができる。

今回月は1年前に消費税率引上げ直前の特需があったことから、前年比はそれとの比較となるため、大きな減退が予想されたものの、実際にはそれほどひどい下げ方では無かったことから、消費=売り上げの持ち直しが実感できるとの言及も見受けられる。一方特異な現象としては、新幹線の延伸に伴い駅ビルが新設され、そちらに需要が吸い取られてしまうなどの感想もある。

数か月前まではネガティブな意味合いで使われていたガソリンや燃料などのキーワードも、今回月では押し並べてポジティブな文面で使用されている。「ガソリン価格の低下や円安で良い影響が出ている。中国から仕事が戻りつつある」「円安も安定してきており、ガソリン価格も低下して自動車で来県する客も増加している」などのコメントが確認できる。

一方でそれと相対する形で物価上昇が語られることも多く、景況感の引上げまでには至っていない、相殺されてしまっているとの判断を下している場合も多い。他方「電気料金」については高値が続いているものの、言及数は随分と少なくなっている。わずかに「不安材料は、電気料金の値上げや人件費の高騰による企業収益への影響である」などが確認できる程度。

燃料価格は国内でコントロールしにくい要因。昨今の下落は「燃料価格に限れば」僥倖に違いない。一方電気料金は一部に海外からの輸入資源価格の上昇があるが、多分に震災以降の発電様式のアンバランスな状態を起因としており、大部分の原因は国内問題によるもの。早急な対応が求められる。

現状はサービス、先行きは小売がポジティブ…詳細精査


2014年4月分の公開値を基に、消費税率動向について細かい部門別に別途記事として精査をした【景気ウォッチャーの指標動向から消費税率改定後の景気行き先を推し量ってみる】の手法を用い、簡略的にではあるがしばらく継続的に現状・先行きDIの詳細動向を確認している。今回もその例にならい、2015年3月分とその前月の2015年2月分との差異、つまり一か月分の変化を詳しく見ていくことにする。まずは現状DIについて。

↑ 2015年2月から2015年3月における現状DIの変動値
↑ 2015年2月から2015年3月における現状DIの変動値

今回月は現状DIは住宅以外はプラスを示しているため、グラフも大よそプラス方向に振れている。ただし百貨店のマイナス6.8を筆頭に、小売関係でいくつかマイナスに動いているものが確認できる。他方家電量販店はプラス8.3、商店街・一般小売店はプラス4.9と大幅なプラス。これは多分に海外からの観光客による需要の後押しが効いているのだろう。乗用車・自動車備品販売店は、先月解説の通り、軽自動車の増税周りで生じた特需の反動。増税は4月で本来ならばギリギリその恩恵を受けるはずだが、すでに納入が間に合わない状態が2月から続いており、それが影響を見せている。

他方サービス関連は大よそプラス。特に旅行・交通関連の上げ幅が大きい。これも円安に伴う観光客特需と見る事が出来る。

↑ 2015年2月から2015年3月における先行きDIの変動値
↑ 2015年2月から2015年3月における先行きDIの変動値

↑ 2015年3月における先行きDI
↑ 2015年3月における先行きDI

現状とは方向性がほぼ反対で、小売関係が強めでサービス関連が弱めな値を示している。特に百貨店や衣料品関連が強いが、これは年度替わりに伴い生じる賃金アップなどによる国内需要の底上げを期待してのものだろう。他方住宅関連は現状だけでなく先行きもマイナスのままで、中期的な低迷感を覚えさせる。また軽自動車の増税で発生した駆け込み需要の反動が大きく現れるであろう先行DIで、DIそのものが47.9、前月比がマイナス0.7ポイントに留まっているのは、むしろ大人しい位。



現状DIの上昇感や各種コメントを見る限り、懸念は少ないわけではないが、少なくとも景気低迷感は底を打ち、反転に転じた雰囲気がある。震災後や、その後の超絶円高を示した時のような、隅から隅までの絶望感的な空気とは大きく異なるのは事実。しかし立ち上がり感はまだ弱い。単なる底打ちに加え、何か加速をつけるような材料が欲しいところだが、現状では原油価格の下落によるガソリン代の低下ぐらいしか見当たらない。賃上げへの期待もあるが、これは実体化されないと言葉通り「絵に描いたモチ」となってしまう。消費税率引き上げの延期はさらなる消費減退傾向を押しとどめてくれたものの、引き上げ要因にはつながらず、しばらく後に再び低迷が起きるリスクを多分に伴う。

原油価格はチャート的には2月頭で底を打ち、上昇の気配を示したものの、その後いくぶん値を上げた後は横ばいに推移し、読みにくい動きを続けている。価格下落の原因は複数存在しているため、先行きを見通すのは困難ではあるが、今後仮に上昇に転じるとなれば、再び国内のガソリン価格も上がるため、景況感には確実にマイナスとなる。春先以降は消費も増え、それに伴い価格も上昇するとの話もあるが……。

他方円安に伴う、さらには資源価格そのものの上昇により、食材を中心に値上げが相次ぎ実施されていることを受け、消費マインドの冷え込みへの不安も大きい。その上、ガソリン代はともかく電気代は高値をつけたままなのも、不安材料として見逃せない。この電気料金周りは震災後の悪癖を引き継いだ現況が大きく影響しており、理性と知性をもってすれば必ず解決しえる問題に違いない。あるいはこれを果たすことで、経済面でも大きな転換点となる可能性は高い。この点が現在の日本の低迷感・景況感における「もやもやとした重圧感」の大きな要素となっていることに違いは無い。

電力の消費がかさむ夏に向けて電力周りで準備を行うためには、この数か月内における動きが望まれる。今夏までの半年で、景気動向は大きな変化を迎えることになるかもしれない。


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