過去60年余にわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる(2014年)

2014/05/04 08:00

商品やサービスの価格の上昇や下落は、日常生活では大きな関心事の一つ。継続的に購入する物品の上下を確認し続けることで、ある程度物価の状況は推し量れるが、定価の存在する商品は価格が日夜変動するわけでは無く、また個人ベースでの観察では限度があり、偏りも生じてしまう。そこである一定領域(国や自治体)を対象とし、多種多様な商品・サービス価格の動向を定点観察して、物価の動きを指数化した「消費者物価指数」について、今記事では長期間の動向の確認を行うことにする。

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消費者物価指数、1950年以降の動きを知る


一定期間以上の月日が離れた時期において、商品やサービスの価格の高い・安いを判断する時に、単純に金額の移り変わりだけを物差しにするのは賢い手口では無い。物価の変動を考慮して考えねばならないからだ。例えば50年前の100円と今現在の100円では、金額は100円で同じでも、買えるものには大きな違いがある。金額に対する価値に、違いが生じているからだ。

その価値を標準化するための「指針」が「消費者物価指数」である。これは【総務省統計局の定義】によれば次の通り。

全国の世帯が購入する家計にかかわる財及びサービスの価格などを総合した物価の変動を、時系列的に測定するもの。つまり家計の消費構造を一定のものに固定していると仮定し、これに必要となる費用が物価の変動で、どのように変化するかを指数値で示したもの

つまりは全般的な視点から、物価が昔と比べてどれだけ上下したかのかを推し量れる指針という次第。

総務省統計局の消費者物価指数の収録場所を確認したが、一定期間より前のものは未掲載となっている。そこで日本銀行の【消費者物価指数に関する掲載データ(「昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか?」)】に掲載されている表組から、「消費者が購入する際の商品およびサービスの価格(東京都区部)」を確認し、その値「持家の帰属家賃を除く総合(年平均)」を用いることにした。

年ベースまで算出されている2012年はそのままトレースして入力。2013年分以降については記事執筆作業時点でも更新・掲載がなされていなかったので、代わりに総務省統計局の【平成22年基準 消費者物価指数 東京都区部(中旬速報値)】の「最新の詳細結果表(月報掲載表へ)」からe-Statで提示されている該当期日(日銀で用いた値と同じ項目のもの。「持家の帰属家賃を除く総合」)を抽出し、年平均値を概算(2013年なら12か月分まるごと、2014年は4月分までの4か月分)。その上で1950年の値を基準値の1.000として、値の変動をグラフ化したのが次の図。

↑ 消費者物価指数推移(1950年-2014年)(1950年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2014年は4月時点までの平均値)
↑ 消費者物価指数推移(1950年-2014年)(1950年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2014年は4月時点までの平均値)

このグラフは例えば、1950年に100円だった商品が2014年には約799円の価格をつけていることを意味する。当然商品によって上昇幅は大きく異なり、さらに「60年前と現在で同じ品質・量・需給関係の商品が存在するのか」という問題もある。例外的なものに卵が挙げられそうだが、それとて品質・分量はほぼ同じなものの、需給関係は大いに変化している。今件はあくまでも概念・参考値として、物価変動そのもののの動きを知るためのデータとして見るのが賢明である。

その「全般的な物価動向」だが、1990年代頭までは概して上昇を継続していた、つまり物価は上昇していた。表現を変えると「インフレが進んでいた」ことになる。中でも1970年代から1990年前後までは急激な上昇を示しているが、この期間に「高度経済成長」「オイルショック」(2回分)「ニクソン・ショック」などが起きており、これら複数の要因が物価を押し上げたことが理解できる。

そして1990年以降は物価はほぼ横ばい。「消費者物価指数」を構成する商品やサービスそのものに、消費者の一般生活とのかい離があるとの指摘もあるが、それを指し引いたとしても、この20年間ほどは物価が安定していると評せる。むしろ今世紀に入ってからは、やや下がり気味のようですらある。

1991年以降に絞って詳しく消費者物価指数の動向を確認する


さらに最近の動向が分かりやすいよう、1991年以降にに絞ったグラフも作成した。こちらは基準値を1991年の値にしている。上記グラフの値とは単純比較できないので要注意。

↑ 消費者物価指数推移(1991年-2014年)(1991年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2014年は4月までの平均値)
↑ 消費者物価指数推移(1991年-2014年)(1991年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2014年は4月までの平均値)

この20年間余では物価は上昇してもせいぜい5%(1.052、つまりプラス5.2%)、そして21世紀に入ると(金融危機ぼっ発後の2008年に、資源高騰に伴う物価上昇が特異な動きなものの)全般的には下げ基調にある。特に2009年以降は確実な下落を示している。いわゆる「デフレ感」を裏付ける一つの結果といえる。

なお2014年4月に改定された消費税率に関する影響だが、年ベースの直上グラフを見ても、ややイレギュラーな影響を及ぼしているように見える(消費税率が3%から5%に改定された1997年にも盛り上がりが確認できる)。そこで2013年以降に限り、同様の条件で月次ベースの動向を記した次のグラフで、詳しく見ていくことにする。

↑ 消費者物価指数推移(2013年1月-2014年4月)(2010年の年平均値を100とした時、持家の帰属家賃を除く総合)
↑ 消費者物価指数推移(2013年1月-2014年4月)(2010年の年平均値を100とした時、持家の帰属家賃を除く総合)

2014年3月から4月にかけて、有意な上昇が発生している。これは消費者物価指数の解説ページ【消費者物価指数では、消費税はどのように扱われているのですか】で説明されている通り、「世帯が消費する財・サービスの価格の変動を測定することを目的としていることから、商品やサービスと一体となって徴収される消費税分を含めた消費者が実際に支払う価格を用いて作成されて」いるからに他ならない。つまり消費税率の引き上げに伴い、支払金額が上昇した分だけ、消費者物価指数も上昇した次第である。

この税率改定で発生した物価上昇が、今後どのような動きを示すのか、注目したいところだ。前回改定時の動向に従うのなら、状況が浸透する来年までは上昇が続き、それ以降は安定化することになるのだが。



物価の安定は消費最小単位の家計から見れば、良いことづくめのように見える。ましてや昨今ではデフレ傾向が強まり、消費財の価格が下落していた。

しかし外食産業や建設業の事例に代表される通り、デフレ化が続くと、小売業、さらにはそこに商品を卸す輸送・生産を行う製造業への負担は蓄積されてしまう。同じ数だけ商品を販売できても、今までより金額上の売上が減るのだから、結果として利益も減る。しかもコスト(原材料だけでなく人件費なども含む)はあまり変わらないので(人件費は正社員の場合、解雇以外では容易には下げられない)、利益は圧迫される。調整がしやすい非正規雇用が増え、正社員も厳しい状態が続く。

物価のゆるやかな上昇は、需要が活性化することを中心にした経済の発展も意味している。1970年以降の動きが好例である。その観点から物価を眺めると、前世紀末期以降、日本経済はほぼ停滞していることになる。昨今のデフレ化が、喜ぶべき類のものなのか、今一度考えてねばなるまい。


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