客単価上昇、客足減退は続く…牛丼御三家売上:2015年3月分

2015/04/07 11:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2015年4月6日、吉野家における2015年3月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によれば既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス2.9%となった。これは先月から続き、3か月連続のマイナスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年3月における売上前年同月比はプラス2.1%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス9.2%との値が発表された。今回月は前月に続き松屋のみが売上でプラスを計上し、残りの2社はマイナスを示す形となった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通りとなる。特記事項無き限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2015年3月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年3月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2014年3月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス4.6%。同社では主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落の影響が2014年3月の時点でもまだわずかではあるが続いていた(客単価の前年同月比マイナスは、2013年4月の値下げ以降1年間、つまり今回比較対象となる2014年3月まで継続している)。昨年牛丼業界に大きな嵐を巻き起こした「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は2013年12月の登場で、その影響もあり随分と底上げはされたものの、プラスにまでは至っていない。一方客数はその「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の影響が大きく生じておりプラス21.1%の値を示していた。

従って今回月は前回月に続き「牛丼値下げによる客数増加・客単価減少、そして鍋特需が生じたことで発生した客数の大幅増加が生じた前年同月」との比較となる。さらに今回月は【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】で報じたように、2014年12月17日から主力商品の牛丼価格を始め各種商品価格の引き上げを断行した後の、値上げが完全に反映された3か月めの月であり、これが大きな影響要素として働いている。その上「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は前年同様の好調な展開ぶりだが(今なお継続販売中)、定価は引き上げられており、これも客単価上昇の要因となる。

また今回月独自の要因としては3月13日に告知される形で「春のビールキャンペーン」が実施され、客単価の引き上げが模索されている。「牛すき鍋膳」は3月26日に今年度分だけで1000万食の販売突破がリリースされており、堅調な売り上げを示していることが確認できる。

結果として客数は前年同月が鍋特需で大きく伸びたことの反動、そして牛丼などの価格引上げに伴い大幅に減少、客単価は値上げ効果などを受けて大きく上昇する形となった。売上は差し引きでいくぶんのマイナスに収まっている。「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」による集客効果動向(前年と比べて値上げしたことが、どこまで客足に影響が生じたのかも含む)を精査したいところだが、他商品の価格値上げに伴う影響が大きすぎるため、判断は不可能。

以前の鍋関連や牛丼の値下げ・値上げなどに伴う影響を最小化するため、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。客数はわずかマイナスに留まり、客単価は大きくプラス、結果として売上高はプラスとの結果が出ている。現時点ではメニューの価格引き上げや鍋メニューの再展開は、売上の観点でプラスに働いていると判断ができる。

↑ 牛丼御三家2015年3月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年3月営業成績(既存店)(前々年同月比)

続いて松屋に焦点を移す。年度末ということもあってか、定食に重点を置く同社でも新規発売メニューはいくぶん大人しめだったが、それでも2月末からはチキンガーリック定食、3月に入ってからブラウンチーズソースハンバーグ定食、さらに3月末にかけて豚バラにんにく味噌炒め定食と、続々と街の定食屋、あるいはハンバーグステーキ専門店的なメニューを繰り出している。他方、本来メインメニューとなる牛めし(他社における牛丼に相当)のプレミアム化店舗の拡大は停滞しており、あるいはこのままの浸透状況のバランスを維持する可能性もある。

3月の業績は客単価はそこそこアップ、客足の低迷も他社と比べれば小さめ、結果として3社の中では唯一売上高をプラスとした。これは前月に続く流れとなる。ただし比較対象となる前年同月では、同社は3社中唯一売上高をマイナスとして計上していることから、その反動によるところもある。前々年同月比の試算を確認すると、松屋はわずかなプラス。マイナスで無いだけでも評価すべきだが、客数の減り方は確定的であり、安穏とできる状況ではないことも事実。

最後にすき家。該当月では鍋メニューの展開を継続するなど客単価の向上と集客に余念が無かったが、結果として思惑通り客単価を上げることはかなったものの、客数の減少は抑えきれず、売上も3社中最大の下げ幅を計上する形となってしまった。前年同月の反動も考慮するため前々年同月比を確認すると、客単価は大きく上げているが客数は減少。結果として売上高はマイナスを示している。特に客数が2年前比でも1割も減っているのが目に留まる。

なおすき家では昨年の人員不足問題と合わせ各店舗で工程簡略化のためのリニューアル工事を続けており、今でもプレスリリースのコーナーでは定期的に「リニューアルオープンのお知らせ」のタイトルと共に店舗の更新情報が伝えられる。そしてそれら一時休業店舗は上記の前年同月比・既存店では勘案されていない。それらの店も合わせた全店舗の動向では、前年同月比はマイナス11.5%の売上。最終的には全店舗換算でのプラス転化が求めれるが、状況は厳しい。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年3月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年3月)

↑ すき家業績推移(売上高、全店)(前年同月比)(2007年4月-2015年3月)
↑ すき家業績推移(売上高、全店)(前年同月比)(2007年4月-2015年3月)

今年度の変化はすき家から?


精査記事としては今回月で2014年度分が終わり、次回からは2015年度分になるわけだが、2015年度は早くもすき家が牛丼業界に大きなニュースを提供している。【すき家の牛丼並盛350円へ値上げ、肉と玉ねぎも2割増に】で詳しく伝えているが、3社では唯一200円台を維持していた牛丼価格について、具材の増量を図った上で並盛を350円(税込)に4月15日から引き上げることを発表している。松屋における牛めしをプレミアム牛めしの価格で比較対象とした場合、なお3社間で最安値を維持する形となるが(松屋の牛丼をノーマルの290円として比較すると、松屋が最安値になる)、価格面での優位性は大きく失われたことは否めない。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年3月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年3月)

吉野家の客数減少は上記前々年同月比のグラフからも分かる通り前年の反動によるところも多分にあるが、すき家は中期的な客数減退の状況にある。具材の増加を考慮すれば実質的には単なる一人前の量の変更に伴う価格の調整に過ぎず、またコスト上昇の中では仕方ない面もあるが、どれほどまでに客足の低迷を押しとどめられるのか、売上を底上げできるのか、大いに気になるところではある。

一方、顧客の需要も大きな変化を示している。類似のファストフード系外食産業の代表格であるハンバーガーチェーン店の動向にも見られる通り、どちらかといえばデフレ時代に優位な立場だった牛丼業界もまた、慢性的な客足の遠のきに苦しんでいる。今年度の「はじめの一歩」はすき家が示したが、今後夏までに大きな動きが各社から見られるはず。安心できる定番メニューを提供し続けると共に、「新しくて旨い」サプライズを示せるか否か、2年前の吉野家における鍋メニューのような、既存の価値観をくつがえすような、そして来客動機をかきたてるような商品、サービスを提供できるか。

コンビニにおけるドーナツ販売の本格化で、おかぶを奪われた形となったミスタードーナツでは、むしろドーナツ市場・需要全体の活性化と認識して歓迎の意向を示すと共に、コンビニでは味わえない時間と商品の提供を目指し、目新しい新商品やサービスの提供を次々と繰り出している。牛丼業界各社でドーナツを発売しろ、というわけではないが、ファストフード系の他社、さらには需要面でライバルとなり得るコンビニなどの惣菜では体験できない、そして牛丼とも深い連動性のある商品の提供が待ち望まれているのかもしれない。


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