日本は直近で1.08%…軍事費の対GDP動向(最新)

2023/05/10 02:44

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2023-0430各国の軍事勢力・軍装備の状況を比較するのにもっともよく使われるのは、軍事支出(軍事費)の額面。しかし実際には各国の経済力や人口など多様な要素により、単純な額面比較だけでは不十分とする意見も多い。そこで使われる指標の一つが、軍事費の対GDP比。要は経済力に対し軍事関連の支出をどの程度行っているかを示した指標となる。今回は国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が発表したレポート【発表リリース:World military expenditure reaches new record high as European spending surges】をはじめとした各種公開データを基に、主要国の軍事費対GDP比の動向を確認していくことにする。

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先行記事【主要国の軍事費】にもある通り、直近となる2022年においては世界最大の軍事支出を行った国はアメリカ合衆国、次いで中国、ロシアの順となる。無論これはSIPRIが把握できる範囲での公開値による値であり、また国内調達分においてはそれぞれの国の相場で調達維持できることもあり、単純に軍事力への注力動向を完全網羅したことにはならない。あくまでも指標の一つに過ぎない。

↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2022年)(再録)
↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2022年)(再録)

そこで各国の軍事費に関して、それぞれの国の該当年のGDPに対する比率を算出し、その動向を示したのが次以降のグラフ。GDPとは【最上位は米国23.00兆ドル、ついで中国の17.74兆ドル、日本はその次…IMFのデータベースから主要国のGDP動向を確認(最新)】でも解説しているが、国内総生産(Gross Domestic Product)の略。以前はGNP(Gross National Product、国民総生産)が指標としてよく使われていたが、GDPは国内のみの産出付加価値総額であるのに対し、GNPは海外に住む自国民の生産分も含めた付加価値の総額を意味する点が異なる。

↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2022年)
↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2022年)

サウジアラビアは7.42%。つまり同国では1年間に生み出した付加価値の7.42%もの金額を軍事費としていることになる。アメリカ合衆国は3.45%、ロシアは4.06%、韓国は2.72%、日本は1.08%。

この対GDP比について過去からの推移を見たのが次のグラフ。

↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国)
↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国)

↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位6-10位の国)
↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位6-10位の国)

ある国の軍事費の絶対額が上昇しても同時にその国が経済発展を遂げていれば、今件値は横ばい、さらには減少すら示すこともありうる。つまり今値は軍事力そのものの拡大縮小よりも、その国の軍事への注力度合いを見る指標ととらえた方がよい。上位国ではサウジアラビアが群を抜いて高い状況は以前から変わらない。アメリカ合衆国はいわゆる「9.11」以降、それまで減少傾向にあった値を上乗せする方針へ転じ、それはリーマンショック後まで続いた。その後はオバマ政権に変わったあたりから再び減少へと転じていた。しかしトランプ政権となってからは軍事政策の大きな転換が行われており、横ばい、さらには増加の動き。バイデン政権では再び減少の動きに転じたようだ。

おおよその国で今値は減少傾向にあるが、先進諸国が純粋に軍事費削減の結果として減少しているのに対し、中国やインドはGDPを底上げしており、むしろ軍事費の額面は増強されている。中国がほぼ横ばいなのは、同国の経済成長と同スピードで軍備拡張が行われていると解釈してよいだろう。



ちなみに日本の値について詳細動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 軍事費(防衛費)の対GDP比(日本)
↑ 軍事費(防衛費)の対GDP比(日本)

かつて防衛費のガイドライン的な役割を果たしていたのは、1976年の三木内閣で閣議決定された「GNP1%枠」。今件はGDP比であり、上記の通り性質がいくぶん異なる。多少の上下を見せながらも、おおよそ今世紀以降は1%内外で推移している。ここ数年は上昇の気配がある程度。周辺諸国が2%前後の値を示していることも含め、色々と考えさせられる状況ではある。


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