政府支出総額と人口比率…主要国軍事費の推移を別の視点からグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/04/27 05:03

先に【主要国の軍事費をグラフ化してみる】で国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が発表したレポート【World military spending resumes upward course, says SIPRI】などを基に、主要国の軍事費動向を確認した。今回は同研究所が収録している過去のデータを用い、主要国の軍事費を複数の視点、具体的には政府支出総額に占める比率と人口比率から、見ていくことにする。

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政府支出に占める軍事費の割合、アメリカは9.2%、ロシアは13.7%、日本は…


先行記事の通りSIPRIの調査の限りでは、2015年における各国軍事費(米ドル換算)でトップはアメリカ合衆国、次いで中国、サウジアラビア、そしてロシアの順となっている。

↑ 主要国軍事費(2015年)(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(再録)
↑ 主要国軍事費(2015年)(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(再録)

これは単純に米ドル換算して比較したもの。国によって内情が異なる事から、単純な額面比較だけでは問題ではとの指摘もある。そこでまずは、それぞれの国の政府支出総額、つまり国家予算に占める軍事費の比率を算出する。

次に示すのは2015年時点における米ドル換算による軍事費上位10か国の、それぞれの国の政府支出総額に占める軍事費の割合。例えばアメリカは9.2%とあるので、国家予算全体の1割近くは軍事費にあてられていることになる。また過去のデータを用い、計上可能な範囲での過去の比率推移を折れ線グラフ化する。

↑ 軍事費の対政府支出総額比(2015年)(2015年時点の軍事費上位10か国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2015年)(2015年時点の軍事費上位10か国)

↑ 軍事費の対政府支出総額比推移(2015年時点の軍事費上位5か国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比推移(2015年時点の軍事費上位5か国)

↑ 軍事費の対政府支出総額比推移(2015年時点の軍事費上位6-10位の国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比推移(2015年時点の軍事費上位6-10位の国)

それぞれの国の各年における経済状況や周辺環境にも大きく影響するため、一概にどの程度が望ましい値なのかに関する基準値は無い。【1944年の国家財政の85.3%が軍事費で占められていたという話】にもある通り、経済力に見合わない軍事費負担が国そのものの経済を不安定化させることも事実。安全を望むために保険に多数加入したところ、毎月の保険料で首が回らなくなってしまうようなもの。

一方、同じ軍事費額でも政府支出全体が増加すれば比率は下がる。政府支出総額に対する比率の低下は、単に軍縮・予算不足による削減以外に、経済力の伸張を意味する場合もある。

先行記事で言及している通り、中東諸国は概して比率が高い。そのため額面そのものも大きくトップテン入りしたサウジアラビアのために、グラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じる程。それでもかつて示していたピーク時の約40%と比べ、現在では27.4%にまで落ち着いている。

その他の国ではロシアはいくぶん増加しているが、大よその国では減少傾向にある。中国も総額比率では減少しているが、これは他国とは少々事情が異なり、経済成長による総支出額に軍事費の増加が追い付いていないため。

対人口比では!?


国家間比較の話でよく持ち上がる意見の一つが「人口が多ければ国の規模も大きくなるから、大国の数字が大きくなるのも当然」とするもの。そこでそれぞれの国の軍事費を、各国の人口で除算し、国民一人当たりの軍事費額を算出したのが次のグラフ。

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算)(2015年時点の軍事費上位10か国)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算)(2015年時点の軍事費上位10か国)

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算)(2015年時点の軍事費上位5か国)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算)(2015年時点の軍事費上位5か国)

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算)(2015年時点の軍事費上位6-10位の国)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算)(2015年時点の軍事費上位6-10位の国)

対政府支出総額が大きめなサウジアラビアが、対人口額でも大きな値を示している。他方それにアメリカ合衆国が続き、あの人口をもってしてもこれだけの高額になるほど、アメリカ合衆国の軍事費が大きいことがうかがえる。

絶対額では大きな伸びを示す中国やインドだが、人口比では少額にとどまっている。日本は1人頭323ドル。

経年変化を見ると、軍事費の圧縮を続けるアメリカ合衆国と、円安の影響を受けた日本、ルーブルの下落で米ドル換算では失速しているロシアでこの数年減少傾向が見られるものの、それ以外の国では概して増加傾向にあることが確認できる。人口が急激に増減する事象は生じていないことから、軍事費は大よそ増加傾向にあると見て良いだろう。ただしフランスとドイツもこの数年に限れば下落の動きを示しているのが気になるところ。

なおインドや中国のように多分な人口を抱える国の動向が分かりにくいこともあることから、対人口比の額面がどのような変化を示したのか、1989年当時の値と直近の2015年の値を比較し、その増加ぶりを倍数で示したのが次のグラフ。例えばアメリカは1.5とあるので、1989年から2015年にかけて、国民一人あたりの軍事費は1.5倍に増加(50%増し)したことになる。

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算1989年から2015年への増加倍率。1.0=変わらず)(2015年時点の軍事費上位10か国)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2015年時点の米ドル換算1989年から2015年への増加倍率。1.0=変わらず)(2015年時点の軍事費上位10か国)

ロシアがむしろ減少しているのが驚き。ドイツはほぼ横ばい、日本は1.4倍。インドはやや大きめで3.1倍、サウジアラビアは3.2倍。そして中国は実に15倍以上を計上している。これもまた、各国の軍事費動向を推し量る上での指針となるに違いない。


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