主要国の軍事費をグラフ化してみる(最新)

2018/05/05 05:16

2018-0504ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)は2018年5月2日、2017年における世界の軍事費動向をまとめたレポート「Trends in World military expenditure 2017」を発表した。その内容によると2017年の世界全体における軍事費総額は1兆7386億米ドルであることが分かった。もっとも多い軍事費(軍事支出)を計上していたのはアメリカ合衆国で6098億ドル、次いで中国の2282億ドル、サウジアラビアの694億ドルが続いている。今回はこの報告書を基に、世界の軍事費の現状を確認していくことにする(【発表リリース:Global military spending remains high at $1.7 trillion】)。

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アメリカ合衆国と中国だけで全世界の48.2%を占める軍事費


最初に示すのは報告書で公開されている、主要国の軍事費の上位陣国。米ドル換算で統一しており、「*」がついているのはSIPRIによる推定値。またあくまでもSIPRIが軍事費であると認識した額で、主に対外勢力に対抗する物理的国家軍事組織に対する執行予算が計上されている。

↑ 主要国軍事費(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)
↑ 主要国軍事費(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)

↑ 世界の軍事費シェア(上位10位国とその他、米ドル換算)(2017年)
↑ 世界の軍事費シェア(上位10位国とその他、米ドル換算)(2017年)

冒頭でも触れた通りSIPRIの計算による2017年の世界全体の軍事費は1兆7386億ドル。その1/3強をアメリカ合衆国一国が計上している。次いで多いのは中国で2282億ドル、13.1%。為替レートが影響しうること、海外からの購入品もあるとはいえ、単純な軍事費の多い少ないで軍事力の大小が推し量り切れるわけでは無いが、やはり両国の軍事力の大きさが改めて認識できる。それとともに、冷戦時代は「米ソ冷戦」との言葉にもある通り、アメリカ合衆国と肩を並べる形で軍拡を行っていたソ連(一部独立した地域もあるが、実質的に今のロシア)の軍事費がここまで落ちていることに、改めて驚きを覚える人も少なくあるまい。

昨今防衛費関連で一部から多様な意見が出されている日本だが、【軍事費の伸びとグラフの書き方と】【防衛費の推移を見ると、直近の2014年度分でも2004年度分にすら追いついていない】でも解説の通り、ここ2、3年はようやく持ち直してきたものの、今回の統計では8位に留まっている。

対GDP比で比較してみると…!?


軍事費の比較は単純な絶対額だけで無く、その国の実情に考慮すべきとの意見もある。そこで今回は、よく使われる指標の一つ、対GDP比を確認する。これはIMF発表の各国GDPと比較し、その国の軍事支出が何%に値するかを計算したもの。要は各国の経済力に対する軍事支出のバランスを示した値で、かつて日本で指標の一つとされた「防衛費はGNP1%まで」がよい例である(GNP1%枠はすでに撤廃されており、しかもGNPとGDPは別物。これについては機会を改めて解説する)。なおグラフは直近年の2017年における軍事費そのものの上位陣に絞り、国の並びも軍事費の大きい順としている。

↑ 主要国軍事費対GDP比(米ドル換算で軍事費上位15位の順、対IMF発表によるGPD比率、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)
↑ 主要国軍事費対GDP比(米ドル換算で軍事費上位15位の順、対IMF発表によるGPD比率、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)

サウジアラビアが群を抜き、1割強を示している。次いでロシアが4.3%、アメリカ合衆国が3.1%。日本は0.9%で、中国は1.9%。軍事費上位陣の国は大よそ1%から2%台に収まっており、日本が一番少ない。

SIPRIの過去の発表リリースなどを基に直近5年分について、軍事費と対GDP比の推移を、2017年時点の上位国に絞ってグラフ化したのが次の図。米ドル換算の際に、為替レートの大きな変動が影響しうるため、あくまでも対外比較指標程度に見てほしい。

↑ 主要国軍事費(米ドル換算で2017年における軍事費上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)
↑ 主要国軍事費(米ドル換算で2017年における軍事費上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)

↑ 主要国軍事費(対GDP比)(米ドル換算で2017年における軍事費上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)
↑ 主要国軍事費(対GDP比)(米ドル換算で2017年における軍事費上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)

アメリカ合衆国が軍事費を削減していることはよく知られた話ではあるが、その実情がよく把握できる(ただしこの1、2年では再び増加に転じているが、それも経済の伸長に併せた範囲のものであることも確認できる)。他方中国の大幅な軍拡が、GDPの底上げを背景としていること(軍事費そのものが大きく増大しているが、GDPも同時に成長しているため、対GDP比はほぼ横ばい)、それらも含め、概して先進諸国が軍縮、新興国が軍拡の方向を示していることがうかがえる。これは冷戦終結後、特にここ数年の一つのトレンドとなっている。

なおサウジアラビアの値が2016年では前年と比べて大きく落ちているが、これについてSIPRI側では「2016年は実支出だが2015年では予算が計上されている。また2015年の値ではイエメンへの軍事支援に200億サウジリヤル(約6000億円)が計上され、これが加算されているが、2016年では計上されていない。2016年の値が前年と比べて大きく落ちているのは、軍事支援額が含まれていないからかもしれない」と説明している。急に軍縮へかじ取りをしたわけでは無い。

繰り返しになるが軍事費はあくまでも指標の一つでしか無く、また為替レートで多分に影響を受ける。とはいえ、対外的要因が大きい軍事力の物差しとしては、十分以上に参考になるものに違いは無い。


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