米新聞の発行部数動向をグラフ化してみる(SNM2015版)

2015/05/04 14:00

従来型メディア、具体的にはテレビ・新聞・雑誌・ラジオの中で一番古い歴史を持ち権威高く、そして昨今の環境変化の中で大きく揺らいでいるのが、紙媒体としての新聞。日本でも各新聞はその権威維持と新たな時代に対応すべく四苦八苦を続けているが、メディア関連では常に先を行くアメリカ合衆国でもその状況に違いは無く、むしろ日本の情勢を先取りしている感はある。今回はアメリカの民間調査機関【Pew Research Center】が2015年4月29日に発表した、同国のメディアに絡んだ年間白書的報告書【State of the News Media 2015】などから、同国の新聞の発行部数動向などを確認していくことにする。

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減る夕刊、増える朝刊、でも最近は…


次に示すのはState of the News Media 2015、及びその一次ソースに該当するアメリカ新聞協会(Newspaper Association of America)のデータを基にした、アメリカの新聞発行部数動向。紙の新聞の部数であり、デジタル系は含まれない。また2010年は協会側から関連データが公開されていないので、数値が空白のままとなっている(グラフ上は前後年から補完している)。

↑ アメリカの新聞発行部数(万部)
↑ アメリカの新聞発行部数(万部)

↑ アメリカの新聞発行部数(万部)(2001年-)
↑ アメリカの新聞発行部数(万部)(2001年-)

クーポンイメージ【アメリカで 大いに流行る クーポンは 紙ではなくて デジタル形式】などでも解説しているが、アメリカの日曜版の新聞は日本以上にチラシやクーポンで満ちあふれており、むしろそちらがメインとして考えている人も多い。需要は大きく、発行部数も多くなる。日本の状況と比較すると驚きを覚えるが、朝刊や夕刊よりも大きな部数を維持している。他方朝刊と夕刊だが、1980年台前半にはその立ち位置が入れ替わり、朝刊の方が発行部数を増やし、夕刊は漸減していく。

日曜版は前世紀末、朝刊も2005年前後をピークに部数は漸減傾向に移行する。夕刊が減り始めたのは朝刊へシフトしたからに他ならないが、その朝刊が減り始めたのは情報取得におけるデジタル化の波に飲まれたからと見て良いだろう。とはいえ部数の減退ぶりは夕刊はともかく、朝刊や日曜版は大人しいようにみえる。直近の2014年においては朝刊総部数は3677万部、夕刊は366万部、日曜版は4275万部。

ちなみに発行総部数ではなく種類数では、夕刊こそ部数と同じような動きを示しているが、朝刊はむしろ漸増する動きを示している。ここ数年になってようやく幾分減り始めた程度。

↑ アメリカの新聞種類数
↑ アメリカの新聞種類数

↑ アメリカの新聞種類数(2001年-)
↑ アメリカの新聞種類数(2001年-)

朝刊では総部数の減少と種類の増加が同時に起きており、分散化が進んでいることが分かる。

デジタル化の中でも進む新たなシフト


新聞の需要が紙媒体からデジタルへシフトしている、しかしビジネスモデルの切り替えの点で効率的な仕組みが作りにくく、売上の点では代替しえていない状況は、先行する記事【米新聞社の本業売上推移をグラフ化してみる(SNM2015版)】などでも触れており、さらには多くのメディアにおけるデジタル化で起きている現象。要は紙媒体からデジタルに読者が移行したのは良いが、客単価が下がったために「利用者は増えたが売上≒利益が減る」といった状況が生じている。

そのデジタル化の中でもさらに、デスクトップからモバイルへのシフトが起きている。次に示すのは主要新聞社のウェブサイトにおける来訪者数動向。デスクトップはブラウザを用いたサイト来訪と映像、モバイルはモバイル端末経由のブラウザによるサイト来訪と専用アプリの利用者をカウントしている(重複があるため、双方を足すと各社の「デジタル利用者」を超えてしまう)。

↑ アメリカにおける新聞サイトの来訪者数動向(ユニークユーザー数、万人、2015年1月、上位陣)
↑ アメリカにおける新聞サイトの来訪者数動向(ユニークユーザー数、万人、2015年1月、上位陣)

各新聞の読者性向やブラウザ、モバイル用アプリの操作性の違いなどで差異が生じているが、そしてパソコンとモバイル端末で新聞を読む場合のスタイルによる違いも影響しているが、少なくとも上位陣では全社モバイル経由の来訪者の方が多いのが現状となっている。

「情報取得においてデスクトップよりもモバイル重視」の傾向は新聞社のサイトに限った話では無く、SNM2015の他のデータのそこかしこで確認できる。別の機会を設けて解説するが、例えばTimeやWiredのようなニュース雑誌のサイト訪問者数、さらにはメディア広告費の動向でも確認できる(広告費の絶対額はまだモバイル以外の方が上だが、成長率はモバイルがはるかに上で、直近の2014年においてはモバイル以外のデジタル広告費はむしろ減退してしまっている)。



メディア系の解説では繰り返し言及しているが、どれほどまでにデジタルが進歩発展しても、紙媒体をはじめとした物理メディアが無くなる事は無い。インターネットによるデジタルメディアの普及は旧来メディアを駆逐するのではなく、利用者に対する選択肢を増やしたに過ぎない。とはいえ旧来メディアの立場にすれば、シェアを奪われている事実に変わりはない。

日本においても紙媒体の新聞発行部数の減退は顕著な状況にある。そしてデジタルへの(ビジネス的な観点での)移行は必ずしもうまく行っているようには見えない。状況的に先行しているアメリカから学べる点があれば、良い点は見本になるか否かを検証し、悪い点は反面教師として、積極的に学んでいくべきだろう。


■関連記事:
【アメリカにおける日曜版の新聞の発行部数などをグラフ化してみる(2011年分まで対応版)】
【アメリカの新聞販売部数動向をグラフ化してみる(SNM2013版)】

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