一強他弱時代がより顕著な状態に…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2014年10月-12月)

2015/02/08 12:00

インターネットをはじめとする電子情報技術の加速化で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。当然、係わる人たちはより速く、より正しい情報へのあくなき欲望を強いものとし、専門誌にもその熱き思いに応える品質を期待することとなる。時間に対する需要・期待が他業界と比べ非常に強いビジネス雑誌業界では、紙媒体ゆえの短所が露呈しやすく、苦戦の度合いは並大抵のものでは無く、雑誌ならではの長所を見出す必要に迫られている。このような状況下の「ビジネス・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2015年2月3日付で発表した、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実態を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代感が進む


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近にあたる2014年の10-12月期とその前四半期に該当する、2014年7-9月期における印刷実績。

↑ 2014年7-9月期と2014年10-12月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2014年7-9月期と2014年10-12月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今四半期では追加・脱落雑誌は無し。ただし不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今回は登場し、その部数を公開している。同号のバックナンバーを確認すると、該当時期では2014年12月13日に2015年冬号が発売されており、これがカウントされたようだ。もっとも前四半期では該当発刊誌が無かったため、比較が出来ない状態となっている(前四半期に該当する青い棒が生成できない)。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2.4倍近くもの差をつけている。グラフのぱっと見で分かる通り、他誌が軒並み前四半期から値を落としているのに対し、「プレジデント」のみ明らかな形で部数を増加。「プレジデント」一強時代の長期政権化は容易に想像できる。

詳しくは次以降の項目で精査するが、他に気になる動きを示してる雑誌と言えば「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」。「プレジデント」とは逆に、下げ幅がややキツい状況にあるのが見て取れる。

盛り返しと失速と…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節属性(季節による需要動向の変化)を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれが懸念されるものの、手っ取り早く各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2014年10-12月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2014年10-12月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域は「PRESIDENT」のみ。残りはすべてマイナス。ただし誤差範囲といえる5%の幅を超えるものは「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」だけ。同誌は数年前までは期待の新星的な立ち位置で実際部数も堅調な動きを見せていたのだが、昨年頭あたりから状況が変わりつつある。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)

↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)
↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)

「PRESIDENT」は2013年に入ってから大きな振れ幅を示す形を示しながら、中期的には上昇機運に入った感がある。今四半期で示した30万8250部は、取得できる範囲のデータでは最高値を示しており、昨今の雑誌業界、中でも冒頭の通り非常に厳しい現状のビジネス系雑誌の中では驚異的な結果といえる。紙媒体ならではの特性「手元においてざっと見がすぐに出来る」ことを活かした「長期保存をしたくなる資料的存在」の立ち位置を得られるような紙面構成が評価され、手に取られたのだろう。該当期間では「資料の作り方」「1日で話が面白い人になる」「仕事に役立つ歴史の知恵」など、タイトルだけでもぞくっとさせられる、欲しくなるラインアップとなっている(それゆえに【近藤誠×和田秀樹 「決定版! 頼れる病院、危ない病院"特集...ダークサイドに入り込んだ感じ】のような炎上商法に手をつけてしまったのは残念でならない)。

一方、「COURRiER Japon」は失速傾向にある。2012年半ばからその内容の質実剛健さが受け、クチコミも多分にプラスに働く形で部数を伸ばしていた。しかし2013年後半あたりから編集方針の舵とりによるものと思われる、疑問符をつけたくなるような内容の変化を指摘する声が増え、それと共に部数の上昇もストップ。2014年に入ってからは下落の動きに転じている。もっとも今四半期の部数でも、かつての横ばい時代から比べればまだまだ堅調さの中にある。

興味深い動きを示す前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなために短期のすう勢とは言い難いが、より確証度の高い雑誌の勢いを知ることが出来る。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2014年10-12月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2014年10-12月、前年同期比)

「¥en SPA!」は前四半期の値が無かったため前四半期比のグラフには登場しなかったものの、前年同期では精査出来る値が公開されていたため、今グラフには顔を見せている。部数そのものは2万部前後と少なめで、金融危機ぼっ発時やリーマンショック時の部数と比べれば随分と落ちてはいるものの、前年同期と比べれば大きな上昇を示している。素直に喜ぶべき結果ではある。あるいは市況状況と一部は関連しているのかもしれない。

↑ ¥en SPA!印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)
↑ ¥en SPA!印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)

「PRESIDENT」は前四半期比だけでなく前年同期比でも堅調。また「COURRiER Japon」は軟調。双方ともその推移は上記グラフの通りだが、それぞれのすう勢が突然生じたものではなく、ここ数四半期、少なくとも1年以上継続していることが改めて確認できる。

他方、前年同期比でマイナス幅が大きいものとして、「COURRiER Japon」以外では「THE 21」が目に留まる。雑誌コンセプトは「PRESIDENT」と近いものがあり、明暗分けた形といえる。もっともスタイルとしては似ていても、雑誌そのものの知名度や記事構成の巧みさの点で、売上が大きく左右されてしまったのだろう。ただし前四半期比のマイナス幅が小幅であることからも分かる通り、最近ではようやく下げ方に落ち着きが見られており、今が復権のチャンスな感もある。

↑ THE 21 印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)
↑ THE 21 印刷証明付き部数(2014年10-12月期まで)

この機を逃すと再び下げ基調の動きに転じる気配のあるグラフを示していることもあり、2015年は大いに頑張ってほしいものだが。直近の2015年2月号(1月10日発売)の「『使える英語』勉強法」はタイトルがキャッチー的なこともあり好評を博したようで、現時点ですでに品切れ状態となっている。次四半期は期待できるかもしれない。



かつては大いに期待できた「COURRiER Japon」の失速、保存をしたくなるような内容で攻める「PRESIDENT」の健闘ぶりを見るに、紙媒体としての雑誌の勝因の一つには、読者層の需要を適切にとらえた上で、雑誌ならではの価値を提供していくことが重要に見える。特に読者層を見据え、その上で「単なる情報の提供では無く、紙媒体だからこそできること」の切り口を見出すことはビジネス誌だけに限らず、今後の雑誌が生き延びていくために不可欠な要素に見える。この点では【ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向】【電撃PlayStationが意外に奮闘している件について】で言及したように、ジャンルこそ違えど「電撃PlayStation」が似たような視点で攻めており、非常に興味深い。

ビジネス・マネー関係誌は昨今のメディアの変化に影響を一番受けやすいジャンル。情報に求められるスピード感に加え、主要ターゲット層として想定される男性若年層から中堅層がインターネットに長け、メディアシフトが多分に行われ、情報を評価する目も厳しい。それ故に「PRESIDENT」のような切り口が受け入れられたのだろう。

他誌がその手法に追随するか、あるいは独自の戦略を見せるか。いずれにせよ、専門雑誌としての価値を見いだせるような雑誌を市場に示してほしいものだ。


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