図書館の貸出冊数や利用者動向をグラフ化してみる(2017年)(最新)

2017/03/31 05:22

先行する記事【図書館や博物館数動向をグラフ化してみる】において、文部科学省の【社会教育調査】における公開値をもとに、日本の図書館の数などに関する動向を確認した。今回は同じ値をもとに、図書館の登録者数や貸出冊数などの観点から、図書館の利用状況を精査していくことにする。

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登録者数も貸出数も増加の流れ、最近では横ばいに


「社会教育調査」の詳細などは先行記事「図書館や博物館数動向をグラフ化してみる」を参照のこと。

次に示すのは日本国内の図書館における登録者数と帯出者数。登録者とは貸し出しなどの各種サービスを利用するために図書館に登録をしている人、帯出者とは図書館外への本の借り受けを行った人で、延べ人数で数えられている。例えば2014年度では1億8136万人とあるので、延べ1億8000万人強の人が図書館から本を借りたことになる。もちろん延べ人数なので、一人で1年間に10回借り受ければ、10人としてカウントされる。

↑ 図書館の登録者数と帯出者数
↑ 図書館の登録者数と帯出者数

登録者数・帯出者数共に高度経済成長期に大きな伸びを示している。直近の2014年度では登録者数は1億8136万人、帯出者数は3137万人。

帯出者数はバブル崩壊後も伸び続け、直近でいよいよ天井かとの雰囲気。他方登録者数は1995年度をピークに翌調査年度の1998年度には大きな減退を示している。この大きな減退の動きについて平成17年度の社会教育調査では、減退前の調査分には(他の項目もあわせ)「自動車文庫、貸出文庫を含んでいる」との説明があり、カウント対象が変更されたことによる減少と見ることができる。

登録者数と比べて帯出者数の動きが大きいことから、延べ貸出冊数が増加していることは容易に想像ができる。実際、調査結果ではその通りの値が出ている。

↑ 図書館の貸し出し冊数と帯出者あたり平均貸出冊数
↑ 図書館の貸し出し冊数と帯出者あたり平均貸出冊数

1回の帯出あたりの借り受け冊数は大よそ3.6冊前後で大きな変化が無い。一方貸出冊数は漸増を示しており、直近の減少以外はほぼ一直線で増加の流れにある。

登録者による年間平均帯出回数は次の通り。

↑ 図書館の登録者の平均帯出回数
↑ 図書館の登録者の平均帯出回数

最古の記録となる1954年度は17回近くとなり、非常に足しげく通っていた計算結果が出ている。解説が無いので憶測でしかないが、本そのものの価値が今と比べて高価で購入ハードルが高く、また情報の取得源も限られており、知を求める人は知識の宝庫的な意義を図書館に見出していたのだろう(今でも図書館のその意義に変わりは無いが)。その後漸減の動きを見せていたが、1977年度に底を打ち、それ以降はバブル崩壊時にやや下げたものの、あとは漸増。

戦後直後と比べればまだ少ないものの、本を借りるために図書館に登録をしている人は、より積極的に図書館に通い、借り受けをするようになりつつある。直近では図書館に登録をしている人は年5.8回ほど本の借り受けを行い、その際に借りる本の冊数は大よそ3.7冊との平均像が浮かび上がってくる。

小学生ならどうだろうか


「社会教育調査」では図書館の図書の貸出業務実態について、児童=小学生に限定した値も別途算出している。ただし2010年度分以降に関しては、貸出冊数で児童の利用冊数が把握できない図書館があることから、「児童用図書の貸出冊数」のカウントに差し替えている。児童用の図書を借りる人は、大よそ児童自身だろうとの推定に基づくものだ。グラフ中にも注意書きがあるが、有意に大規模な上昇をしているのは、小学生の読書熱が高まったわけではなく、この計上スタイルの変更のため。また上記にある通り、1995年度分までは自動車文庫、貸出文庫を含み、それ以降は含んでいないため、前後で大きな差異が生じている項目がある。

↑ 図書館の登録者数と帯出者数(小学生)
↑ 図書館の登録者数と帯出者数(小学生)

今ではあまり見かけなくなった自動車文庫、貸出文庫だが、前世紀末までは大いに小学生に受け入れられていたことが分かる。それらを省いた1998年度以降は登録者数は漸減、帯出者数もやや漸減気味。小学生の数そのものが漸減傾向にあることに加え、学校図書館の充実も影響しているものと考えられる。

↑ 図書館の貸し出し冊数と帯出者あたり平均貸出冊数(小学生)
↑ 図書館の貸し出し冊数と帯出者あたり平均貸出冊数(小学生)

↑ 図書館の登録者の平均帯出回数(小学生)
↑ 図書館の登録者の平均帯出回数(小学生)

全体の動向と比べると、大きな違いが見受けられる。全体では帯出者あたりの平均貸出冊数に変化はほとんど無かったものの、小学生では確実に増加の動きにある。他方、児童用図書の貸出冊数でカウントしているため、大人が借りている分も混じっている可能性は多分にあることを合わせ考えると、2010年度以降の増加カーブの急勾配化は「大人が借りた分」の上乗せと考えた方が適切かもしれない。

登録者の平均帯出回数の動向も、全体の値動きと似ている。自動車文庫、貸出文庫を加えている1995年度までは漸減、そしてそれ以降は漸増。今世紀に入ってからは大よそ足しげく通うようになっていると見て良いだろう。



今回の記事更新に際して調査の開始となる1955年度以降の値を年次統計値として取得することができるようになったため、各グラフの領域も幅広いものとなった。1995年度までと1998年度以降の自動車文庫と貸出文庫関連のありなし、2010年度以降とそれより前の「児童の利用冊数」から「児童用図書の貸出冊数」への変更などのような、データの事実上の断絶もあるが、図書館動向を推し量るのには大いに役立つものに違いない。

昨今ではスマートフォンの普及浸透による読書スタイル、さらには情報収集の変化、そして実態としての書店の漸減という環境変化によって、図書館の立ち位置が大きく変化をしている。次回の調査となる2017年度(あるいは2018年度)分の結果はどのようなものとなるだろうか。


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