無料通話アプリのID交換掲示板起因の被害急増…警察庁、子供のネットトラブル現状報告発表(2014年上半期データ反映版)

2014/09/20 12:00

警察庁は2014年9月18日付で、2014年上半期における「出会い系サイト」などに関連した事件の検挙状況をはじめ、各種インターネットと児童に絡んだ諸犯罪に関する現状の報告書「平成26年上半期の出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」を発表した。それによれば2014年通上半期における「出会い系サイト」の事件検挙件数は298件となり前年同期比でマイナス70件と減少したが、被害児童数は82人で前年同期比プラス9人と、増加の傾向にあることが分かった。他方「コミュニティサイト」(以前は「出会い系サイト以外のサイト」と呼ばれていたもの。SNS、プロフィールサイトなど、ウェブサイト内で多人数とコミュニケーションがとれるウェブサイトのうち、出会い系サイトを除いたものの総称)では、検挙件数は948件で前年同期比で89件のプラスとなった。また今回発表分から被害児童数において「コミュニティサイト」は「ID交換掲示板」と「その他コミュニティサイト」に分割計測されるようになったが、「その他コミュニティサイト」は436人で前年同期比マイナス45人と減少したものの、「ID交換掲示板」は262人で前年同期比プラス145人と2倍以上に増加している。警察庁では「無料通話アプリのIDを交換する掲示板に起因する犯罪被害により」コミュニティサイトが原因の犯罪被害児童数が増加傾向にあるとし、警告を発している(【警察庁:サイバー犯罪対策リリース・統計一覧ページ】)。

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出会い系が減り、ID交換掲示板が底上げする被害児童数


子供のネット界隈での問題は【子供がネットトラブルを起こしそうな場所、親はちゃんと把握して……ない!?】【多種多様な問題点が浮き彫りに...シマンテック発・子供のインターネット利用実態】など、多数の事例で解説している通り、インターネットへアクセスできるデジタル機器が若年層に浸透していくにつれ、これまで想定できなかったような問題が発生し、深刻化している。それに伴い、運営各企業やセキュリティ関連会社をはじめ各方面で対策や啓蒙が行われている。

警察庁では今件のように半年おきに「出会い系サイト」など、インターネットを介して発生する子供の「リスク」事例を集計精査データ化し、公開している。その公開統計値が確認できる2005年以降の動向を見るに、「リスク」の発生場所がかつて社会問題化しスポットライトを浴びた「出会い系サイト」から、一般的な「コミュニティサイト」に移りつつあることを再認識させられる。さらにその「コミュニティサイト」においても、不特定多数同士が交流する場におけるやりとりによる事案では無く、当事者同士が直接対話・チャットを行える無料通話アプリのIDを交換する掲示板を介して生じる事案が増加するなど、規制の網を潜り抜けるべく、問題構造が常に形を変容する状況が把握できる。

今報告書にまとめられている2014年上半期分の値の限りでは、「コミュニティサイト」で生じる「リスク」が「出会い系サイト」以上であること、そしてこの数年では双方とも減少傾向にあったものの、2013年通期でトレンドが転換して「コミュニティサイト」は大幅な増加(悪化)に転じてそれが継続中であること、そのトレンド転換も「コミュニティサイト」内部における「ID交換掲示板」を起因とするものの急増によるものであることが確認できる。

↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数・検挙数推移(-2014年上半期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数・検挙数推移(-2014年上半期)

↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数・検挙数推移(2013年-2014年それぞれ上半期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数・検挙数推移(2013年-2014年それぞれ上半期)

・各種規制の強化や啓蒙が実を結び、「出会い系サイト」による児童の問題数は減少傾向にあった。2014年上半期では2013年同期と比較して、状況は明らかに改善しつつある(青色系統)。

・コミュニティサイトの児童関連問題は増加の一途にあった。しかし2010年で頭打ちとなり、2012年までは減少傾向を見せた。ところが2013年に入るとID交換掲示板が大いに悪用され、「その他コミュニティサイト」は漸減しているものの「コミュニティサイト」全体としての被害児童数や検挙数は増加(悪化)に転じてしまっている(赤系統色)。その傾向は2014年上半期でも継続している。

「出会い系サイト」は、2008年の「出会い系サイト規制法」の改正により事業者の届け出制が強化され、さらに各種フィルタリングが功を奏する形となり、現在に至っている。「コミュニティサイト」では「出会い系サイト」からの転向組も後押ししたこともあり、計測を始めた2008年以降増加を続けていた。しかし2011年から2012年には各種啓蒙・規制の厳格化に伴い、減少傾向を示していた。ところが直近の2014年上半期では上記で言及したように、2013年通期に続き大幅な増加が確認されている。

これは「LINE」に代表される無料通話アプリの加速度的な普及で、そのIDを交換する掲示板をトリガーとした犯罪が大幅に増加傾向にあるのが原因。スマートフォンをはじめとした各種モバイル機器の若年層における急速な普及率増加に伴い、ソーシャルメディアなどの利用者数自身が急増したものの、それに対する規制も強化されたことで、運営側が状況を把握しにくく規制で取り締まりにくい、ID交換掲示板に加害者側がシフトしつつあるようだ。特に直近半年期は前年同期比で被害児童数が2倍以上に増加しており、強度の注意が求められる。

低年齢層が多いコミニティサイト関連事象


警察庁では【コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査分析について(平成25年下半期)(PDF)】を2014年5月19日に発表し、「コミュニティサイト」における児童被害の詳細な分析をしている。それによれば2013年下半期では被害件数は増加傾向にあり、1年前の報告書でも懸念された「2012年下期から(減少しつつある)状況に変化が生じた」が現実のものとなったことを確定した認識を示している。

また変化傾向としてスマートフォンの利用が増えていること、被疑者の行動が短期間化している一方、児童との接触目的が一義的である被疑者が9割を超えていること、業界側が規制を強化してきたミニメールなどを利用した事犯が減少する一方、アドレスなどの連絡方法としてプロフィールや掲示板に記載した事例が増加していること、被害児童のほとんどがフィルタリング未加入であること、サイト利用について保護者から注意を受けていない児童が約6割を占めるなどを特徴として挙げ、警戒を強めている。

コミュニティにおいて問題の発生を完全に防ぐことは難しい。また確率論的視点で見れば、対象人数が増えるほど問題事象「数」も増加する。だが「比率として低いから『多少の問題件数は仕方ない』と妥協する」わけにはいかないのが犯罪であり、その防止対策である。「コミュニティサイト」は元々普通のコミュニケーションを行うための場所なのに加え、昨今では端末利用者の低年齢化に伴い、「出会い系サイト」と比べて参加年齢層が幅広く、結果として児童被害者が「出会い系サイト」よりも低年齢なことも問題視されている。

↑ 出会い系・コミュニティサイトにおける児童(18歳未満)の被害者数(2014年上半期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトにおける児童(18歳未満)の被害者数(2014年上半期)

15歳以下で区切れば「出会い系」が全体の43%なのに対し、「コミュニティサイト」では54%と過半数を占めている。

携帯電話キャリア、そして携帯電話上で運用される各種サービスを提供する業界としては、急速に若年層にも普及するスマートフォン向けのサービスにおいて、十分過ぎるほどの安全性を確保し、今回対象となった「事象」の発生確率を極力下げ、ゼロを目指す最大限の努力を継続する責務がある。特に情報機密性が高い無料チャットアプリ・通話アプリの場合、IDの交換は電話番号・住所の交換に等しいことを啓蒙し、未成年者の利用について十分以上の注意喚起を成し、必要に足る規制を行う必要が求められる。

同時に保護者や教員など児童の周囲に居る人達もまた、啓蒙・周知を徹底しなければならない。そのためには自らも状況の正しい把握と学習が求められる。携帯電話(とりわけスマートフォン)やインターネットの利用が「当たり前」のとなった現在では、保護者による子供への啓蒙・周知責任は、日常生活を安全に過ごしていくには欠かせない一般常識「電話のかけかた」「横断歩道の渡り方」「信号の意味」「お買い物の仕方」と同レベルの重要性を持つことを心がけねばならない。

抜本的な対策がなされない限りコミュニティサイト関連の事象は今後も増加を続け、資料タイトルから「出会い系」が抜け、「コミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について」になりかねない。関係方面は最大限の知恵を働かせ、努力を尽くすことを願いたい。


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