ラジオとネットはプラス、残りはマイナス・新聞下げ率7.3%(経産省広告売上推移:2015年3月発表分)

2015/03/14 10:00

経済産業省は2015年3月11日、「特定サービス産業動態統計調査」の2015年1月分における速報データ(暫定的に公開される値。後程確定報で修正されることがある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によれば2015年1月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス0.6%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5部門(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)ではラジオとインターネット広告のみがプラスで、インターネット広告は最大の上げ幅となるプラス14.6%を計上した。一方、屋外広告などでは海外広告の下げ幅が大きい(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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テレビは見た目はゼロだが実はマイナス、ラジオが健闘


今件記事で検証しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する共通要件の解説は、記事集約ページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは主要5部門の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年12月-2015年1月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年12月-2015年1月)

今件データは前年同月比を示したもので金額そのものでは無いことに注意する必要がある(棒が長いほど、市場規模が大きいわけでは無い)。同時に前回月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分の2014年12月分データと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表されている確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。

今回月では新聞、雑誌、テレビ(表上では0.0%だが厳密に計算するとマイナス0.045%となる)が前回月のプラスからマイナスに転じ、ラジオとインターネット広告のみがプラスを維持する形となった。特に新聞の下げ幅はマイナス7.3%と大きく、さらに前回月のプラス7.0%との差異も大きい。もっともこれは多分に前年同月からの反動によるもので、2014年1月分はプラス9.0%(確定値)だったことから、その影響による部分が多々ある。前々年同月比を試算すると1.0%のプラスとなり、ほぼ横ばいだったことが分かる。他方雑誌は前年同月の時点でプラス0.7%でしかなく、反動の類はほぼない。今回月に限れば新聞より雑誌の方が、状況は悪いと判断できる。

他方ラジオは4マスの中では唯一のプラス。しかも前年同月もマイナス0.3%に過ぎず、リバウンド的なものはほぼ無い。元々金額が少なめなこともあるが、評価はできる。

インターネット広告は今回月も順調。これで2014年10月分以降4か月連続しての2ケタ台のプラス%値を示す形となった。2014年9月分のプラス7.4%(確定値)以外2014年はすべて2ケタ台の伸びを示しており、順調な成長の真っただ中にあることが確認できる。前回月は繁忙期である12月だったこともあり単月売り上げが600億円を超えたが、今回月は閑散期にあたることから売り上げは大きく低下、400億円を割り込んでしまった……が、それでも前年同月と比べれば1割以上の成長に違いは無い。

今回計測分となる月、つまり2015年1月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する部門の動きを確認すると、「4マス大よそ軟調、博報堂の新聞とラジオのみがプラス」「インターネット広告は堅調」の動きが確認できる。新聞はやや食い違いがあるものの、それ以外は大よそ動きの上では連動しているようだ。

なお4マスとネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。こちらも冒頭で触れている通り、海外広告が大きく下げ、他項目の上下がかすんでしまう形となった。もっともプラスを示した「その他」の金額が大きく(ほぼテレビに匹敵)、結果として広告費売上全体の底上げに貢献する形となる。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2015年1月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2015年1月)

「その他」は多種多様なスタイルの広告が織り交ぜた形となっており、技術進歩に伴い項目分けが難しくなった類の事案が片っぱしから放り込まれ、膨張している感が強い。同じ項目ではあるはずなのだが、それこそ1年の間に構成内容が大きく膨張しているのではないだろうか。電通・博報堂の2社における動向を追った広告費関連の記事でも似たような状況が生じていることもあり、現状を把握するために用意された区分としては、前年同月比で状況精査をする際の弊害になりつつある。新たな部門の追加が求められよう。

閑散期で新聞とインターネット広告の差は縮まる


今回も該当月(2015年1月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化を行い、状況の確認をしていく。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手だが、その2社がすべてでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されておらず、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。その点に注意されたい。なお前回月から主要追跡部門に限らず、全部門の金額をグラフに反映させている。

↑ 月次広告費(2015年1月、億円)
↑ 月次広告費(2015年1月、億円)

電通・博報堂のみの広告費動向では今なお新聞が金額的に優勢。しかしその2社以外の広告代理店も含めた今件データでは、インターネット広告のウェイトが電通・博報堂よりも高い企業も多数含まれていることから、全体に占めるインターネット広告の額比率が高めとなり、ここ数年の間に両者の金額面での立ち位置が逆転している。詳細は【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2014年)(最新)】で解説の通り。現時点では2014年1月を最後に、新聞の金額はインターネット広告を超えておらず、金額面で4マスとネットにおける順位はテレビ・インターネット広告・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約26億円。約1.07倍の差がついている。前回月の1.64倍と比べると随分と僅差になったが、これは上記の説明にある通り、1月は毎年閑散期に該当するからに他ならない。それでもなおインターネット広告が上であることに違いは無い。ただし先月発生した事象「従来型メディアの紙媒体全体の広告費が、インターネット広告の額を超え」る状況には至らなかった。

一方話題のインターネット広告だが、中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっている。他方、その機動性の高さと使い勝手の良さもあり、金額面だけを追い続けると、浮き沈みが大きい。2011年以降は3月と12月に大きく伸びる動きがパターン化しているが、これは【ネットショッピング動向をグラフ化してみる】でも精査の通り、この時期にインターネット経由で商品が多く売れる時期でもあるため、それを見込んでインターネット広告への資金投入が活性化した結果と考えられる。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2015年1月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2015年1月)

2011年以降は明確な形で、3月と12月に突出した額が投入されていることが確認できる。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。上記の通り額面が大きな部門もあるため、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2015年1月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2015年1月分まで)

雑誌(黄色)と新聞(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額は漸減していくのはモノの道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を大量投入するのは酔狂か、付き合いによるものか、条件交渉の結果によるものかは定かではないが、少なくとも広告の直接対価によるものとしては考えられないので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されていると見て良い。

そして雑誌・新聞共に紙媒体であることから、デジタル系メディアの浸透に伴い、割りを食った形となっていることは容易に想像できる。ただし紙メディアの一部は、その内容をデジタルに代えてインターネット広告を掲載する媒体の後押しをしている(新聞社によるウェブ上の無料記事展開、そして有料電子新聞が好例)。単純に紙媒体が衰退しつつあるのも一面だが、その上に載るコンテンツのシフトが進んでいるのもまた現状を表す一面ともいえる。

昨今の動向を見返すと、インターネット広告の躍動ぶり(他項目のグラフからは明らかにかい離している)に加え、藍色の「ラジオ」が復調の兆しを見せている。単年だけなら単なるリバウンドだが、2年ほどの年月をかけてじわりとした復調の動きのため、今後の流れに期待ができよう。


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