4マス軟調続く、新聞は前年同月比20%内外の減少(電通・博報堂売上:2015年2月分)

2015/03/11 11:00

博報堂DYホールディングスは2015年3月10日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2015年2月分の売上高速報を公開した。一方、電通は同年3月6日付で、同じく同社2月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2015年2月次の売上データが公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去のデータなどを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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博報堂のラジオのみプラス、あとは4マスすべてで軟調


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらも確認してほしい。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年2月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年2月分種目別売上高前年同月比

4大従来型と呼ばれる主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、博報堂のラジオ以外はすべてマイナス。特に新聞の下げ方が著しい。もっとも新聞は前年同月(2014年2月)における前年同月比は電通・博報堂それぞれプラス14.8%・37.2%と大幅のプラスを示していたので、その反動によるところもある。テレビもプラス11.8%・プラス8.8%で、やはり反動が影響している。とはいえ、例えば電通における電通のマイナス16.6%は、前々年比を試算してもマイナス6.8%を計上することとなり、4マス全体が不調な状態にあることが分かる。

4マスが軒並み足踏み、むしろムーンウォーク状態にある中で、インターネットは引き続き堅調に推移している。特に博報堂はプラス14.0%。両社とも前年同月では、その月の前年同月比でプラス30%超えを計上しており、そこからさらにプラス値を示したことから、インターネット広告の成長ぶりが改めて認識できる。

4マス以外の従来型広告では先月に続く形でOOH(アウトドア)メディアの減少が大きく目立つ。昨年同月はプラス数%の領域に留まっており、反動による下げとも思えない。その他の項目もあまり思わしくなく、唯一電通の「その他」が飛びぬけている形に。これについては後述するように、対象項目の増加が多分にあるのだろう。

電通において2年前比を試算すると次の通りとなる。やはりインターネットと「その他」がずば抜けた伸びを示す形となった。

↑ 参考:電通2015年2月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2015年2月度単体売上(前々年同月比)

従来型広告がそれなりに良い動きを示す中でOOHメディア、具体的にはOut Of Homeの略で屋外広告全般を指すものだが、その軟調ぶりが目に留まる。

インタラクティブメディア(インターネット)の成長は先月試算分に続き4割台。2年で4割強の成長は普通の広告ではよほどの小規模か新興市場でないと滅多にありえない。規模も漸次拡大の中にあり、数少ない期待の分野といえる。他方従来型4マスは今回月では全部マイナス。昨今ではテレビが意外にも伸びを示しているが、今回月ではさえない形となった。恐らくは単月のイレギュラー的な動きだと思われるのだが。

今回月となる各年2月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる2月を基準にした毎年2月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、特殊事情、例えば選挙やオリンピックのような、広告と深い関係のある事象、が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を推し量れる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年2月、億円)(-2015年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年2月、億円)(-2015年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。直近となる2015年2月では前年同月と比べいくぶん失速をしており、腰砕けの感はある。この動きは前月2015年1月における各年1月の動向でも示されており、広告業界における景況感の後退的な雰囲気が懸念される。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面でツートップとなる電通と博報堂2社の動向を精査している。一方で両社は同じ規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記しているところから、その値が両社の売上と誤解した上での問い合わせが少なからずある。例えば今回月では売上合計の下げ率が両社でほぼ同じことから、売上額(あるいは下落額)でもほぼ同じではないかとするものだ。もちろんそれは間違いでしかない。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2015年2月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2015年2月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を示しているものの、売上金額=市場規模としてはまだまだ他のメディアと比較するとそこそこのレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が結構な規模を示していること、テレビの広告市場が巨大であることなどが一目でわかる。それ故に、今回テレビ項目が両社ともマイナスを示したことで、全体に与える影響も大きなものとなり、結果として合計売上も両社それぞれマイナスとなったのも理解できよう。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、マーケティング・プロモーションのようにほとんど変わらない部門もあれば、クリエーティブのように2倍近い差を示す部門もある。

他方「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」という仕切りそのものの問題も大きい。上記でも触れている通り、メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは概して「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となることから、年々「その他」に該当する項目が増え、金額も積み増しされてしまう。電通では特にそのタイプの事案が多いものと考えられる。

この「その他」問題は経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。仕切り分けの追加を求めたい所だ。



2014年12月は総選挙による盛り上がりもあったが、それに続く2015年1月以降は軟調さが続いている。単なる4マスだけの弱さならまだしも、4マス以外の従来型広告も足踏み的な動きを示しており、広告業界全体の不調ぶりがうかがえる。

景況感全体の後退が危惧されるが、景気動向を推し量る他の有名どころの指標を確認すると、例えば景気ウォッチャー調査などではようやく切り返しを見せ始めているところから、一時的なスランプが広告業界に生じているのかもしれない。あるいは総選挙で予算を前倒し的に投入したため、年度末まで年間予算分の調整をしている可能性もある。「特定サービス産業動態統計調査」同様、3月から4月以降の動向にはこれまで以上に留意を払う必要があるだろう。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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