吉野家牛丼値上げの影響は継続、客足遠のき客単価上昇…牛丼御三家売上:2015年2月分

2015/03/06 08:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2015年3月5日、吉野家における2015年2月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によれば既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス3.1%となった。これは先月から続き、2か月連続のマイナスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年1月における売上前年同月比はプラス5.0%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス1.8%との値が発表された。今回月は松屋のみが売上でプラスを計上し、残りの2社はマイナスを示す形となった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通りとなる。特記事項無き限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2015年2月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年2月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2014年2月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス2.8%。同社では主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落の影響が2014年2月の時点でもまだわずかではあるが続いていた(客単価の前年同月比マイナスは、2013年4月の値下げ以降1年間、つまり2014年3月まで継続している)。昨年牛丼業界に大きな嵐を巻き起こした「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は2013年12月の登場で、その影響もあり随分と底上げはされたものの、プラスにまでは至っていない。一方客数はその「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の影響が大きく生じておりプラス15.1%の値を示していた。

従って今回月は前回月に続き「牛丼値下げによる客数増加・客単価減少、そして鍋特需が生じたことで発生した客数の大幅増加が生じた前年同月」との比較となる。さらに今回月は【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】で報じたように、2014年12月17日から主力商品の牛丼価格を始め各種商品価格の引き上げを断行した後の、値上げが完全に反映された2か月めの月であり、これが大きな影響要素として働いている。その上「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は前年同様の好調な展開ぶりだが、定価は引き上げられており、これも客単価上昇の要因となる。

結果として客数は前年同月が鍋特需で大きく伸びたことの反動、そして牛丼などの価格引上げに伴い大幅に減少、客単価は値上げ効果などを受けて大きく上昇する形となった。売上は差し引きでいくぶんのマイナスに収まっている。「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」による集客効果動向(集客そのものは十分になされているが、前年より値上げしていることにより、どこまで客足に影響が生じたのかも含む)を精査したいところだが、他商品の価格値上げに伴う影響が大きすぎるため、判断は不可能。なおその「牛すき鍋膳」だが、【吉野家の牛すき鍋膳が1000万食突破(今年度分のみで)】で伝えた通り、今年度分のみで1000万食の大台に達したとのこと。「牛チゲ鍋膳」も200万食を突破し、大いに売り上げに貢献したことがうかがえる。

以前の鍋関連や牛丼の値下げ・値上げなどに伴う影響を最小化するため、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。客数はマイナス、客単価は大きくプラス、売上高はプラスとの結果が出ている。現時点ではメニューの価格引き上げは、売上の観点ではプラスに働いていると判断ができる。

↑ 牛丼御三家2015年2月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年2月営業成績(既存店)(前々年同月比)

麻婆カレー続いて松屋に焦点を移す。定食メニューの充実感がハンパない同社だが、該当月に展開された新メニューとしては「麻婆カレー」や「チキンガーリック定食」が挙げられる。また、前月末からワンコイン、つまり500円玉一枚で食することができる「ワンコイン豚定フェア」も実施しており、定食攻勢は相変わらず。無論、プレミアム牛丼の展開は継続しているが、開始直後の勢いは今では見受けられない。見方を変えれば、それだけ浸透したともいえるのだが。

2月の業績は客単価はそこそこアップ、客足の低迷も最低限に留まり、結果として3社の中では唯一売上高をプラスとした。堅調そうに見えるが、前年同月の動向を見ると、唯一松屋のみ売り上げをマイナス値として計上しており、その反動ともいえる。実際、前々年同月比の試算を見ると、松屋のみが売上高をマイナスとしてしまっている。

牛すき鍋定食最後にすき家。前年度の教訓を踏まえて作業工程を簡略化した鍋を今冬も展開、さらに2月6日からは「すき家の鍋フェア」と称して牛すき鍋定食と豚肉豆腐チゲ鍋定食を値下げし、さらなる集客とリピーターの確保に期待をかけている。結果として客単価は松屋と同じくプラス6.2%、ただし客足は軟調でマイナス7.6%。結果として売り上げは吉野家同様にマイナスとなってしまう。ただし前々年同月比で見ると、吉野家程ではないが客単価は堅調、客足の遠のき具合は3社でもっとも悪い数字だが、売上はどうにかプラスを計上している。

なおすき家では昨年の人員不足問題と合わせ各店舗で工程簡略化のためのリニューアル工事を続けており、今でもプレスリリースのコーナーでは定期的に「リニューアルオープンのお知らせ」のタイトルと共に店舗の更新情報が伝えられる。そしてそれら一時休業店舗は上記の前年同月比・既存店では勘案されていない。それらの店も合わせた全店舗の動向では、前年同月比はマイナス8.3%の売上に留まってしまう。最終的には全店舗換算でのプラス転化が求められよう。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年2月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年2月)

↑ すき家業績推移(売上高、全店)(前年同月比)(2007年4月-2015年2月)
↑ すき家業績推移(売上高、全店)(前年同月比)(2007年4月-2015年2月)

外食産業全体を包む変化の流れ、牛丼業界も影響を受け……


2013年末は「鍋膳」、2014年末は「主力メニューの大幅値上げ」、毎年何か一発大きな打ち上げ花火を(ここ数年は毎年年末なので季節外れではあるが)業界に放ってくれる吉野家。2013年の「鍋膳」のような業界全体への影響は「主力メニューの大幅値上げ」では与えなかったものの、同社の営業成績には顕著にその影響が表れている。客数動向を見ても、吉野家に限りこの2年ほどの間は大きな変動が生じており、他の2社が変化から取り残された感はある。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年1月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年1月)

とはいえ客数動向のグラフを見直せば分かる通り、2011年後半以降、震災や極度の円高不況を経て、牛丼業界全般において、客足は遠のきを見せている。月次の外食産業における売上動向と合わせ見ると、外食全体からの敬遠ではなく、食生活におけるスタイルのシフト、大雑把に表現すると「食事をするための外食」から「食事を楽しむための、食事と共に満喫した時を過ごすための外食」へ需要が動いている感はある。

それは個人ベースでも、世帯ベースでも変わらない。マクドナルドが軟調な一方でモスバーガーが手堅い営業成績を示し続けている。ファミレスが堅調さを示し、居酒屋が軟調な一方でより低価格かつ来店ハードルの低い「ちょい飲み」的な雰囲気を呈する日高屋などが好調な動きを見せている。明らかに外食への需要の変化が生じていることを感じさせる。

このような動きの中で、どちらかといえば現状では不利なポジションにある牛丼チェーン店各社はどのような施策を見せ、苦境を脱していくのだろうか。あるいはすでに2013年末に吉野家が「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」発売の際に、「うまい・やすい・ごゆっくり」を公言した時点から、その模索は始まっているのかもしれない。


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