「モラルにはマイナスだよね」何をしてるか・影響の良し悪し…新興国のインターネット事情

2015/03/23 11:25

情報のやりとりを加速させるインターネットの普及浸透は、人々の社会生活を一変させる。携帯電話、特にスマートフォンはその動きに大きな貢献をしていることは間違いない。新興国でもそれは顕著で、2010年に始まった「アラブの春」もその結果生じた現象の一つ。今回はアメリカの調査機関Pew Research Centerが2015年3月19日に発表した調査報告書【Internet Seen as Positive Influence on Education but Negative on Morality in Emerging and Developing Nations】から、新興国ではインターネットの普及は社会に何をもたらすと認識されているのか、人々がどのようなことをしているかについて確認していくことにする。

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今調査は2014年3月から5月にかけて33か国に渡り18歳位以上の男女に対し対面調査(アメリカ合衆国のみインターネット経由)で行われたもので、有効回答数は国毎に約1000人から3000人。各国の国勢調査結果に基づいたウェイトバックが行われている。一部の国では都市部でのみの調査となっている。具体的な対象国はアルゼンチン、バングラデシュ、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、エジプト、エルサルバドル、ガーナ、インド、インドネシア、ヨルダン、ケニア、レバノン、マレーシア、メキシコ、ニカラグア、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、フィリピン、ポーランド、ロシア、セネガル、南アフリカ、タンザニア、タイ、チュニジア、ウガンダ、ウクライナ、ベネズエラ、ベトナム、そしてアメリカ合衆国。新興国のくくりの場合は、アメリカ合衆国は除外している。

次に示すのは調査対象母集団全体に対し、インターネットの利用がどのような影響を及ぼすかについて、その所感を回答者に尋ね、結果の中央値を算出したもの。先進国などの比較用データが無いのが残念だが、新興国では大よそ「インターネットは教育にプラスとなる貢献をしている」との認識で占められている。否定派は2割に満たない。

↑ インターネットの利用はどのような影響を及ぼすか(2014年、新興国対象調査中央値)
↑ インターネットの利用はどのような影響を及ぼすか(2014年、新興国対象調査中央値)

教育以外では個人同士の関係や経済において、インターネットは大よそプラスの成果を生み出す、貢献すると認識されている。否定派は1割から2割で少数派。ところが政治やモラルに関しては肯定派が半数を切り、モラルに至っては否定派、つまり悪い影響を及ぼすとの認識が多数を占めるようになる。

情報には良いことばかりでなく悪いこと、誘惑を誘うものも多く、またそれを悪用する人達も多い。結局のところインターネットも情報も道具でしかないのだが、その道具を使いこなすか振り回されるかの点で、政治やモラルは振り回される場面が多い、振り回されやすいということなのだろう。もっともこの認識は恐らく、新興国に限った話ではあるまい。

他方この認識は、インターネットを利用しているか否かで大きな差が生じている。

↑ インターネットの利用はどのような影響を及ぼすか(2014年、新興国対象調査中央値)(インターネットを利用しているか否か別)(「良い影響」回答率)
↑ インターネットの利用はどのような影響を及ぼすか(2014年、新興国対象調査中央値)(インターネットを利用しているか否か別)(「良い影響」回答率)

今回呈した5つの要素では、それぞれほぼ同じような差異が、インターネットを利用している・していないの間で生じている。教育に対する肯定感の高さはインターネットを使っていなくても高い値が出るが、経済や個人同士の関係では非利用者では半数を切り、政治やモラルに至っては3割以下となってしまう。見方を変えるとインターネット利用者に限れば政治でも45%、モラルでも35%もの人が「良い影響を与える」と認識しているのは興味深い。

新興国ではインターネットはどのような道具として用いられているのか。その一端を垣間見れるのが次のグラフ。利用者に限定して、過去一年間に実施した行動を複数回答で尋ねたものだが、個人間のやり取りやソーシャルメディアの利用は多数の人が経験している。

↑ 過去一年間のうちに次のような行為をインターネットで行ったか(2014年、新興国対象調査、インターネット利用者限定)
↑ 過去一年間のうちに次のような行為をインターネットで行ったか(2014年、新興国対象調査、インターネット利用者限定)

個人同士の関係には良い影響を及ぼすとの回答はネット利用者に限れば65%に届いていたが、8割以上のネット利用者が実際にやり取りをしている。数が合わない部分は、利用の結果、関係に変化は無かった、あるいは悪化したのだろう。

冒頭で触れた「アラブの春」でも大きな要因となった、政治ニュースの取得の回答率は5割を超えている。また政府などの官公庁の情報取得も4割超。新聞やテレビなどでは入手しにくい、時間差が生じる情報を気軽に、手元に取得できる意義は極めて大きい。

他方、自分自身の生活に潤いをもたらし得る、健康情報の取得や求職活動、さらには具体的なビジネスとしての送金や着金、インターネットを使った商品購入などもそれなりの利用率を示している。対象サービスの浸透度合いによっても多分に影響があるものの、新興国でもインターネットを利用できる機会を得ることで、生活そのものに大きな変化が生じることを示唆する結果といえよう。


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