4マスとネットはすべてプラス、ネット単月売上初めて600億円を超える(経産省広告売上推移:2015年2月発表分)

2015/02/10 12:00

経済産業省は2015年2月9日、「特定サービス産業動態統計調査」の2014年12月分における速報データ(暫定的に公開される値。後程確定値で修正されることがある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によれば2014年12月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でマイナス0.4%となり、減少傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5部門(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)では全部門でプラスを示し、「インターネット」が最大の上げ幅となるプラス12.2%を計上した。また金額面では初めて単月で600億円を超えている。一方、屋外広告などでは「その他」「SP・PR・催事企画」の下げ幅が大きく、これが全体値の足をひっぱる形となっている(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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4マスは全部、ネットはさらにグンと伸びる


今件記事で検証しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する共通要件の解説は、記事集約ページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは主要5部門の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年11月-2014年12月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年11月-2014年12月)

今件データは前年同月比を示したもので金額そのものでは無いことに注意する必要がある(棒が長いほど、市場規模が大きいわけでは無い)。同時に前回月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分の2014年11月分データと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表されている確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。

今回月では「新聞」「テレビ」が前回月のマイナスからプラスに転じ、プラスからマイナスに転じた部門は無く、めでたく全部門が前年同月比でプラスを示す形となった。特に「新聞」の上昇幅が著しく、軟調気味の同部門では特筆すべき動きと言える。もっともこれは多分に前年同月の反動によるところが大きく(前年同月ではマイナス12.2%だった)、前々年同月比を試算するとマイナス5.8%に落ち着く。今回月では衆議院議員総選挙が実施されており、その影響もいくぶんはあるだろうが、見方を変えれば選挙が行われていてもなお、反動を除いた2年前比ではマイナスとなるほど、状況は好ましくないともいえる。

「インターネット広告」は今回月も順調。これで2014年10月分以降3か月連続しての2ケタ台のプラス%値を示す形となった。同年9月分のプラス7.4%(確定値)以外2014年はすべて2ケタ台の伸びを示しており、順調な成長の真っただ中にあることが確認できる。そして記事タイトルにもある通り現時点では暫定値ながら、確認できる限りでは初めて単月の売上が600億円を超える形となった。

今回計測分となる月、つまり2014年12月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する部門の動きを確認すると、「ラジオ・テレビは電通と博報堂で明暗が分かれる」「新聞と雑誌は大よそ堅調」「インターネットは大いに伸びる」などの動きが確認できる。新聞の堅調さが前年同月の反動であることもあわせ、ラジオとテレビの動向がやや異なる部分もあるが、大よそ今回の値と類似していることが分かる。

なお4マスとネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。こちらも冒頭で触れている通り、「その他」「SP・PR・催事企画」の2部門が大きく下げ、双方とも大きな金額を有していることから、今回月は「4マスとネットがプラスなのにもかかわらず、全体値がマイナス」という、稀有な事例となってしまった。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年12月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年12月)

実際、「SP・PR・催事企画」は単独で「インターネット広告」と肩を並べるほど、「その他」は「テレビ」に匹敵するほどの金額を有していることから、全体値の足を引っ張ってしまうのも仕方がない。

特に「その他」は多種多様なスタイルの広告が織り交ぜた形となっており、技術進歩に伴い項目分けが難しくなった類の事案が片っぱしから放り込まれ、膨張している感がある。電通・博報堂の2社における動向を追った広告費関連の記事でも似たような状況が生じていることもあり、現状を把握するために用意された区分としては、意味をなさなくなりつつある。新たな部門の追加が求められよう。

新聞とインターネット広告の差は大きく開く


今回も該当月(2014年12月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化を行い、状況の確認をしていく。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手だが、その2社がすべてでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されておらず、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。その点に注意されたい。なお今回から主要追跡部門に限らず、全部門の金額をグラフに反映させている。

↑ 月次広告費(2014年12月、億円)
↑ 月次広告費(2014年12月、億円)

電通・博報堂のみの広告費動向では今なお「新聞」が金額的に優勢。しかしその2社以外の広告代理店も含めた今件データでは、「インターネット広告」のウエイトが電通・博報堂よりも高い企業も多数含まれていることから、全体に占めるインターネット広告の額比率が高めとなり、ここ数年の間に両者の金額面での立ち位置が逆転している。詳細は【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2014年)(最新)】で解説の通り。現時点では2014年1月を最後に、「新聞」の金額は「インターネット広告」を超えておらず、金額面で4マスとネットにおける順位は「テレビ」「インターネット広告」「新聞」の順となっている。

今回月では両者の金額差は約237億円。約1.64倍の差がついている。さらに「インターネット広告」の伸びが著しかったこともあり、従来型メディアの紙媒体全体の広告費が、「インターネット広告」の額を超えた結果となっている。紙媒体としての新聞は広告売上の点で持ち直しの気配があるが、雑誌は危うい状況が不可避の状態にある。今後似たようなパターンが相次ぐことになれば、この動向も一つの指標として観測する必要が出てくるかもしれない。

一方話題の「インターネット広告」だが、中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっている。他方、その機動性の高さと使い勝手の良さもあり、金額面だけを追い続けると、浮き沈みが大きい。2011年以降は3月と12月に大きく伸びる動きがパターン化しているが、年末と年度末に多々求められる緊急事案に対応できることが功を奏したものだろう。また、この時期は商品が多く売れる時期でもあるため、昨今成長が著しいインターネット通販に絡んだ広告が多分に投入されるのも一因と思われる。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年12月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年12月)

2011年以降は明確な形で、3月と12月に突出した額が投入されていることが確認できる。今回月はその12月にあたるため、大きく値が伸び、前述の通り初めて600億円を超える値を計上した。今回月分からグラフの縦軸も100億円分上乗せされている。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。上記の通り額面が大きな部門もあるため、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年12月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年12月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額は漸減していくのはモノの道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を大量投入するのは酔狂か、付き合いによるものか、条件交渉の結果によるものかは定かではないが、少なくとも広告の直接対価によるものとしては考えられないので、「雑誌」「新聞」の広告力が漸減していると広告主からは判断されていると見て良い。

そして「雑誌」「新聞」共に紙媒体であることから、デジタル系メディアの浸透に伴い、割りを食った形となっていることは容易に想像できる。上記にある通り、今回月ではこの2媒体の売上高が「インターネット広告」を下回る結果が出ており、その状況が体現化されたともいえる。ただし紙メディアの一部は、その内容をデジタルに代えて「インターネット広告」を掲載する媒体の後押しをしている(新聞社によるウェブ上の無料記事展開、そして有料電子新聞が好例)。単純に紙媒体が衰退しつつあるのも一面だが、その上に載るコンテンツのシフトが進んでいるのもまた現状を表す一面ともいえる。

昨今の動向を見返すと、「インターネット広告」の躍動ぶりに加え、藍色の「ラジオ」が復調の兆しを見せている。単年だけなら単なるリバウンドだが、2年ほどの年月をかけてじわりとした復調の動きのため、今後の流れに期待ができよう。


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【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(下)…ネット以外動向概況編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
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