エンゲル係数の推移をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2014年)

2014/03/28 11:00

世帯単位での裕福さ、生活レベルの度合いを示す指標の一つとして「エンゲル係数」なるものがある。社会構造の変化と共に、生活内容実態との連動性は薄れつつあるが、今なお良く使われている値の一つには違いない。今回は金銭面や商品・サービス購入頻度の面から人々の生活状況を推し量れる、総務省統計局が2014年2月18日にデータ更新(2013年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】を元に、この「エンゲル係数の推移」を確認していくことにする。

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エンゲル係数の定義と今世紀の推移


エンゲル係数」とは「消費支出」に占める「食料品」の割合を意味する。具体的にこれらの支出の関係を示すと

↑ エンゲル係数

となる。

「エンゲル係数」そのものはドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲル(Ernst Engel)が提唱した指数で、「家計の消費支出に占める飲食費割合が高いほど生活水準は低い」との説に基づいている。よほどの富裕層(そしてそれらはごく少数)でない限り、食費の額に大きな違いは出ず(ただし今家計調査でも明らかな通り、差額が生じるのもまた事実)、一方で食費そのものはどの家庭でも必ず発生する。従って、全体の支出に占める比率は、消費支出そのものが大きくなるほど低くなる・食費以外の項目に割り当てられる額が大きくなるという考え方。

現在では商品価格の水準や生活様式が同じもの同士でないと比較にならない、農村部の住民は自前で主食や野菜を自給出来る(割合が高い)ので必然的にエンゲル係数が低くなる、さらには住居費も合わせて考えるべきだとの意見もあり(住居費まで合わせると、賃貸か自前の住宅かによる違いの考察、住宅ローンはどのような判断をすべきかなど、問題は山積される)、以前ほど重要視されてはいない。しかしそれでも一定の参考値として使える値であることもまた事実。

そのエンゲル係数だが、二人以上世帯に限定した推移が次のグラフ。定義に従えば生活が苦しくなるほど上昇する傾向を見せるが、この10年あまりでは2005年を底値に少しずつ値を積み増しており、その定義通りの動きを示しているのが分かる。

↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(-2013年)
↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(-2013年)

縦軸の区切りが0.2ポイントと小さめなことから、2-3年程度の動きでは誤差の範囲とも判断できる。しかしこの10年強の動きを見る限りでは、動きそのものは小さいものの、景気に連動している様子が見て取れる。特に2007年以降の金融危機からリーマンショックによる上昇、景気回復感による逓減、そして東日本大地震・震災や失政での急激な再上昇など、注目すべき動きが確認できる。2013年は0.1%ポイントではあるが値は増加。単なる「ぶれ」の範囲なのか、あるいは状況悪化への兆しなのか、気になる動きといえる。

世帯主の世代別に見ていこう


これを世帯主の世代別に仕切り直したのが次のグラフ。

↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(世帯主世代別)(-2013年)
↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(世帯主世代別)(-2013年)

元々エンゲル係数は高年齢世代ほど高い傾向にある。中堅世代の子持ち世帯は子供への出費が(学費や子供の遊興費、その他住居関連費の増大など、食費以上にそれ以外の負担が大きい)増え、消費支出も大きい。一方高年齢世代は年金生活者が多数を占めるため、消費支出が小さく、当然食費が占める割合も大きくなるからだ。青系統色(=シニア層)の折れ線グラフの高位置がそれを表している。

各世代動向を見ると、全体値に近い動きではあるが、2010年から2011年の大きな上昇(≒生活の悪化)を別にすると、30代以上はほぼ横ばい、むしろ減少する局面もあったことが分かる。一方30歳未満に限れば2008年以降2011年まで一貫して上昇しており、この10年間でほぼ2ポイントほどの上乗せが確認できた。

2012年はといえば、中堅層は誤差の範囲内の挙動なのに対し、70歳以上は上昇を続けており、生活の質の悪化が懸念される。一方この数年来上昇を継続して景気悪化の大きなマイナス影響を受けていたと思われる若年層は大きく下げ、2008年、さらには金融危機以前の水準に戻している。

直近の2013年では70歳以上が0.2%ポイントの下げ、50代が横ばいだった以外は一様に上げている。特に30歳未満の上昇幅0.9%ポイントの大きさが目立つ。もっともこれは2012年の大幅な下げの反動とも見て取れる。



上記に有る通り昨今では、社会指標におけるエンゲル係数の確からしさはあまり精度の高いものでは無い。それでも有益なものとして現在でも使われている。一部で語られている「高齢者は若年層よりも良い暮らしをしている」という文言とは反する結果…エンゲル係数は概してシニア層の方が高い…を直視し、現状を示す資料として、覚えておかねばなるまい。


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