リーマンショック前と比べるとまだまだ…4マスへの業種別広告費の「5年間の」推移(2014年発表)

2014/02/25 08:00

電通が2014年2月20日に発表した、日本の広告業界の動向を記した報告書【発表リリース:「2013年 日本の広告費」は5兆9,762億円、前年比101.4%― 総広告費は2年連続で増加、成長軌道へ(PDF)】を基に、いくつかの切り口から精査を行い、広告業界の動向を垣間見ている。今回は従来型大手4メディア「テレビ」「ラジオ」「新聞」「雑誌」における、業種別広告費の5年前と直近(2013年)との比較をチェックする。業種毎の主要媒体に対する中期ベースでのアプローチの変化を推し量ることができよう。

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2013年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取扱う4媒体ではテレビのみが前年比プラスで、後はマイナス。

↑ 2013年媒体別広告費前年比(再録)
↑ 2013年媒体別広告費前年比(再録)

それでは1年では無く5年を経た変化はどのようなものだろうか。それが今回の記事の主旨。

区切りを「5年」にしたのには理由がある。最初は「10年が区切りが良い」と考えたのだが、10年前のデータはあるものの【前年比プラスの1.4%・総額5兆9762億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2014年)(最新)】で解説の通り、「2004年と2005年の間で広告費の区分などの変更が行われているため、厳密にはその間前後のデータに継続性は無い」。2013年の10年前となると2003年の値との比較になるが、この「区分変更」をまたいでしまうため、正しい比較が出来なくなってしまう。そこで半分の5年前との比較とした。2015年分からは、比較対象のデータとして2005年の区分変更後のものが使えるため、それ以降は10年前との比較で記事展開を行うことにする。

今報告書には「テレビ」「雑誌」「新聞」「ラジオ」に対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2007年と2012年における値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。増加した業種は3つのみ。

↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2008年と2013年)(億円)
↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2008年と2013年)(億円)

5年の期間には今なお続いている「金融危機」の期間、さらにその中でも大きな影響を与え独自の経済的事象としても取り上げられることが多い「リーマンショック」も含まれている。その影響が「金融・保険」「不動産・住宅設備」「交通・レジャー」「趣味・スポーツ用品」に大きく出ているのがひと目で分かる。元々大きな額だっただけに、減少比率が大きいと余計に目立つ。特に後者二つは景気後退に伴い人々の可処分所得が減り、その業種に回す余裕が無くなり、業種そのものも苦しくなった結果で、まわりまわって広告費が削られていく様子がうかがえる。

プラスを示した業種は「ファッション・アクセサリー」「家庭用品」「情報・通信」の3つ。特に「家庭用品」はプラス幅が大きい。方向性はまったく別だが、「ファッション・アクセサリー」も「家庭用品」も消費者が新商品に敏感で常用性も高いことから、媒体露出を減らして存在感が薄らぐと、あっという間に競合他社にシェアを奪われかねないという懸念があるのだろう。

また「情報・通信」は数少ない成長分野で、比較的余裕がある一方、特にソフトウェア部門は日秒分歩のペースで新作・新サービスが登場しており、定期的・定量の露出をしないとあっという間に忘れ去られてしまうがための積み増し。関東のテレビCMに関する月次レポートで、携帯電話向けサービスのテレビCMが毎月複数本上位に組み込まれている様子(【定期更新記事:関東民放テレビCM動向(ゼータ・ブリッジ)】)は、まさにその具体例といえる。

直上のグラフは額面の推移が把握できるもの。これを金額では無く、5年経過における増減を算出すると、個々の業種における「4大既存メディアに対する広告費」のさじ加減が見えてくる。

↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2008年から2013年への変移)
↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2008年から2013年への変移)

下げた業種がほとんどで、滝を真正面から見ているような、あるいはすだれのような状態。それだけに上昇した3業種が余計に目立っている。また下げ幅も一部の業種で数%に留まっている以外は20%から30%が多く、中にはほぼ半額にまで落としている業種もあるほど(「エネルギー・素材・機械」と「案内・その他」)。

従来型4メディアに対する広告費という一つの切り口ではあるが、リーマンショックで受けた経済上の影響は広告業界にも大きく深手を与え、それがまだ回復には程遠い状態であることが分かる。それと同時に、単に「不景気だから広告出稿量を減らしました」だけでなく、広告展開における戦略転換、具体的には4マス「以外」への広告出稿を重視し、代わりに4マスへの出稿を減らしている雰囲気を覚えさせる数字でもある。

特に下落率上位を突っ走る「エネルギー・素材・機械」と「案内・その他」は、金融危機ぼっ発からリーマンショックにかけて大きく出稿額を減らした後、景気回復の兆しが見える2012年から2013年においても復調する動きは無い。

↑ エネルギー・素材・機械/案内・その他の広告費推移(対既存4大メディア、億円)
↑ エネルギー・素材・機械/案内・その他の広告費推移(対既存4大メディア、億円)

今後この2業種の4マスへの広告出稿額の動きには、特に気を配る方が良さそう。その動向次第では、他の業種の多くも追随するかもしれないからだ。



やや蛇足ではあるが、独自の指標を算出しておこう。これは単純に「5年間の総減少額」のうち、どれほどの割合を各業種の減少分で構成したのかを計算したもの。例えば「自動車・関連品」は4.9%と出ているので、5年間の総減少分5170億円のうち4.9%・252億円ほどが減ったことになる。

↑ 業種別・2008年-2013年の広告費変移が与えた影響度(既存4大メディア全体、5年間の変移額のうち占める割合)
↑ 業種別・2008年-2013年の広告費変移が与えた影響度(既存4大メディア全体、5年間の変移額のうち占める割合)

経済動向に直接連動性が考えられる「金融・保険」以上に、「趣味・スポーツ用品」「交通・レジャー」といった可処分所得と深いかかわりのある業種での減少影響度が大きいことが分かる。またこれらの業種はインターネットとの相性も良いことから、単に広告出稿そのものが減っただけでなく、インターネットに広告展開の注力がシフトしつつあることも考えられよう。


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