記事タイトル正社員と非正社員の賃金差は?…雇用形態別の平均賃金をグラフ化してみる(2014年)

2014/03/05 11:00

社会現象としてクローズアップされつつある非正(規)社員の増加問題。その非正社員を正社員と比べた際に、もっとも大きな違いは賃金にある。実態として正社員・非正社員間の賃金の差異はどれほどなのだろうか。厚生労働省が2014年2月20日に発表した、賃金関連の情報をまとめた調査「賃金構造基本統計調査」の最新版に該当する調査結果【平成25年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況】をもとに関連データを抽出し、各種切り口から現状を掌握してみることにする。

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非正社員の賃金は正社員の6割台


今調査における労働者の区分や「賃金(所定内給与額)」は、先行記事【フルタイムの平均賃金は29万5700円・前年比でマイナス0.7%(2014年)(最新)】で詳しく解説した通り。今回スポットライトを当てる「正社員」「非正社員」の区分だが、後者は前者以外、具体的には契約社員・派遣社員・嘱託を指す。また今回は「一般労働者」、つまりフルタイム勤務の労働者を精査対象としており、パートやアルバイトに代表される短時間、あるいは限定日数での就労タイプ(短時間労働者)は該当しない。

↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」のうち「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の違いをチェックする
↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」のうち「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の違いをチェックする


まずは2013年における雇用形態別・性別の平均賃金。

↑ 雇用形態・性別平均賃金(2013年、千円)
↑ 雇用形態・性別平均賃金(2013年、千円)

当然の結果ではあるが、正社員などの方が賃金は高い。非正社員の賃金は正社員に比して、男性で6割強、女性で7割近く。

失業率の面では2012年と比べて改善が見られた労働市場(【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる】)だが、賃金の上では正社員・非正社員共に状況の悪化が見て取れる。もっとも大きな下落率を示したのは男性正社員で、前年比1.0%ポイントの下落となる。

↑ 雇用形態・性別平均賃金(2013年、前年比)
↑ 雇用形態・性別平均賃金(2013年、前年比)

男性よりも女性の下げ率が小規模な値に留まっているのは、労働市場の上でより賃金の低い女性に労働力の需要がシフトしているのが一因と考えられる。実際性別失業率を確認しても(【日本における学歴・性別と失業率との関係をグラフ化してみる】)、女性の方が改善幅が大きい結果が出ている。

男女で異なる世代別・雇用形態別賃金動向


続いてこれらを男女それぞれ、正社員・非正社員別に年齢階層での推移を見たのが次のグラフ。

↑ 雇用形態別平均賃金推移(男性、千円)(2013年)
↑ 雇用形態別平均賃金推移(男性、千円)(2013年)

↑ 雇用形態別平均賃金推移(女性、千円)(2013年)
↑ 雇用形態別平均賃金推移(女性、千円)(2013年)

↑ 雇用形態・年齢階級別平均賃金(2013年)(前年増減率)
↑ 雇用形態・年齢階級別平均賃金(2013年)(前年増減率)

男女とも非正社員の賃金は歳を経てもほぼ横ばいで、大きな差異は生じない。作業が比較的単純で、就業上経験の蓄積も考慮されない場合が多い、つまり正社員における「社内でのさまざまな実績・経験による積み上げ」が非正社員には(少なくとも賃金面では)生じ得難いことが原因。特に女性は30代前半がピークとなっている。特殊な技術・資格を持ち、それこそ「渡りの職人」のような立場なら話は別だが、普通の非正社員には正社員と同じような「積上げによる賃金のかさ上げ」を期待できず、結果として賃金もそれ相応のものに落ち着いてしまう現実が、グラフのカーブ具合に現れている。

また前年比で見ると、2013年は「中堅層まで男女とも概して下落」「高齢層は上昇気味、特に女性が堅調」「男性正社員・中堅層の下落幅がやや大きめ」などの動きが傾向として見受けられる。特に最後の正社員に関する動向は、「賃金構造基本統計調査」全体における賃金動向でもっとも注目されている「正社員の賃金下落」の主要因であることから、注視に値する動きと言える。

なお「非正社員に『社内でのさまざまな実績・経験による(賃金の)積み上げ』を求めない、求められない」動きは、業務・事業が細分化・広大化している大企業ほどその傾向が強い。企業の構成人数が多いほど、一人ひとりは「オールマイティな能力」よりも「企業全体を正しく動かす部品の一つ」「歯車」であることが求められる。結果として正社員と非正社員の賃金の格差も、大企業になるほど大きくなる。

↑ 雇用形態別賃金格差(同属性正社員・正職員を100とした場合の賃金)(2013年)
↑ 雇用形態別賃金格差(同属性正社員・正職員を100とした場合の賃金)(2013年)

【49.5%は「非正規社員になりたくない」、「でも自分もなるかも」は29.4%…募る新成人の非正規就労への不安】でも解説した通り、若年層における非正規就労(つまり非正規社員化)への不安は大きい。その原因の一端を、一連の賃金グラフが示す実態から知ることができる。そして賃金の面で不安が高まれば、当然将来への不安も増加し、消費を避けざるを得ない。現状が厳しくとも将来に金銭的な余裕が期待できれば、ローンを組むなりの工夫も凝らせる。しかし上記グラフにある通り、非正規社員の立場では歳を経ても賃金の上昇は期待できず、ローンなど論外、消費を抑えざるを得なくなる。

若年層に節約傾向が強く表れているのも、お金の余力が無く、将来にも金銭面ではあまり期待できないのが主要因。いわば自己防衛本能の現れといえる。自然な反応として消費をセーブにしているにも関わらず、鞭打つ形で若年層に消費を強要するのは無理話でしかない。それでもなお、若年層の未来設計、金銭的な希望に対する改善策、道筋をないがしろにしつつ、消費行動の強要を主張する「大人たち」の行為は、果たして正しいものだろうか。


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