フルタイムの平均賃金は29万5700円・前年比でマイナス0.7%(2014年)

2014/03/04 08:00

生活を営む上で欠かせない、糧(かて)となるのが、就業で得られる賃金。その賃金の額は自分自身のものはもちろんだが、社会全体の動向も気になるところ。厚生労働省では2014年2月20日に、その賃金関連の情報を集約した、2013年における賃金構造基本統計調査結果の概要【平成25年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況】を発表したが、それによれば2013年の一般労働者(フルタイム労働者。常用労働者のうち短時間労働者でないもの。正規・非正規を問わず)の所定内賃金(所定内給与額)は29万5700円となり、前年2012年の29万7700円と比べて2000円・0.7%の下落を示したことが明らかになった。これは一連の調査においては4年ぶりの下落となる。

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まず言葉の定義を確認しておく。まずは今記事で対象となる「一般労働者」について。


↑ 雇用形態関連の分類
↑ 雇用形態関連の分類

・常用労働者…期間の定めの有る無しに関わらず1か月を超えて雇われている労働者か、日々または一か月以内の期間を定めて雇われている労働者のうち4月・5月にそれぞれ18日以上雇用された労働者。

・一般労働者…短時間労働者以外の者。

・短時間労働者…同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、または1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者。

「一般労働者」は正社員以外に、派遣・嘱託・契約社員などの非正規社員も含まれうることに注意が必要。

今回記事で動向の確認をする「賃金(所定内給与額)」とはあらかじめ定められている支給条件・算定方法によって支給された現金給与額から、超過労働給与額(要は残業代)やボーナスなどを除き、所得税などを控除する前の額を指す。言い換えれば基本給に家族手当などを足したもの。

公開されたデータを元に、1989年以降、今回新規に発表された2013年分に至るまでの賃金額と前年比推移を示したのが次のグラフ。

↑ 性別賃金の推移(千円)(一般労働者)
↑ 性別賃金の推移(千円)(一般労働者)

↑ 性別賃金の対前年増減率の推移
↑ 性別賃金の対前年増減率の推移

賃金推移のグラフには直近の値の他に、各属性の最高値、そしてデータが存在するうちでもっとも古い1989年の値を併記している。この推移からも分かるように、女性の賃金における堅調な上昇ぶりが目に留まる。2005年と2010年、そして直近の2013年は前年比マイナスを示したが、それ以外はすべてプラス。1980年から1990年代と比べて上昇幅こそ縮小してはいるものの、上昇傾向にあることに違いはない。

一方で男性は1990年代半ばまでは女性同様に大きな上昇カーブを描いていたが、それ以降は頭打ち。2001年の34万0700円をピークとし、漸減の動きすら見受けられた。

これは女性の社会進出・価値観の変化と共に、先日【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる】【非正規社員の現状をグラフ化してみる】で解説したように、正(規)社員の減少・非正規社員の増加も一因。今件の「賃金」の対象には(短時間労働者は除外されているが)正社員・非正規双方の社員が該当している。たとえ正社員・非正規社員双方の給与がアップしても、(支払額の大きい)正社員の比率が減れば、その分全体の平均値は下がってしまう。女性は元々非正規社員率が高いため、男性同様に非正規社員が増加しても大きな影響は生じない。

直近の2013年は男性だけでなく女性も前年比でマイナスを示している。これは詳しくは別の機会で解説するが、正社員・非正規社員共に主に中堅層で賃金が下がっていることに加え、派遣社員や契約社員・嘱託の数が前年と比べて大規模な増加を示し、正社員が幾分減ったのが原因として挙げられる。

↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)(再録)
↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)(再録)

【過去60年余にわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる】などで解説している通り、1990年代以降物価は概して安定、むしろ低下する傾向にある。

↑ 消費者物価指数推移(1991年-2013年)(1991年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2013年は8月までの平均値)(再録)
↑ 消費者物価指数推移(1991年-2013年)(1991年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2013年は8月までの平均値)(再録)

お金はその額面の絶対値の他、購入できる物資・サービスの量でも価値を判断するため、一概に賃金がマイナスならば即時に「前年より生活が厳しくなった」と断じることはできない。

今回取り上げた「所定内給与額」はボーナスなどと比べ、景気や企業の業績の影響を受けにくい。労働各法の定めにより、基本給を下げる場合には一定の条件を満たした理由付け、手続きが求められるため、経営側では安易に上げるのを躊躇する傾向がある。「ベースアップ」がなかなか行われず、一時金や賞与で調整される場合が多いのも、これが理由である。

2013年においては大手企業を中心に「ベースアップ」を実施したとの報道が相次ぎ、その流れは今もなお続いているが、今件では一般労働者の「賃金(所定内給与額)」は減少するという結果が出ている。

もちろん「賃金(所定内給与額)」の動向だけでなく、人員整理・再構築による正社員・非正規社員の構成比率の変化や、高額賃金の高齢者の退職など、労働者自身の周辺環境の変化も、賃金上昇率と共に考慮をしなければ、雇用される側の総合的な生活安定度を推し量ることはできない。また手取りの上では「超過労働給与額」も追加されることを忘れてはならない。

一方で「超過労働給与額」はあくまでも「超過」した労働、例えば時間外、深夜、休日などの出勤に対して支払われる対価であり、通常の労働への対価とは別のもの。通常の労働への対価が下げられたのでは、雇用する側に提供する労働力のコストパフォーマンスが悪化していると見なさねばならず、働き手側からすれば由々しき事態ともいえる。

次年分、つまり2014年分に関しては、非正規社員比率は間違いなく継続して増加することから、少なくともその分の「賃金(所定内給与額)」の減少が見込まれる。それを乗り越えるだけの賃金アップが成されるか否か、物価の上昇動向と合わせ、注目したいところだ。


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