前年同月比プラスは紙・パルプ、非鉄金属、そして機械(2014年12月分大口電力動向)

2014/01/24 13:00

電気事業連合会は2015年1月23日に同会公式サイトにおいて、2014年12月分となる電力需要実績の速報を公開した。その内容によれば、同年12月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で679億kWhとなり、前年同月比でマイナス1.3%となった。一方、産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス0.5%を記録し、8か月連続して前年同月の実績を下回ることとなった。このマイナスは紙・パルプ、非鉄金属、機械を除く業種において、前年同月の実績を下回ったのが原因であるとリリースでは説明している(【電気事業連合会:電力需要実績発表ページ】)。

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プラス産業は3つ、前月からは機械がプラスに転じる


今調査の概要および各種用語の解説については、過去の同調査結果をまとめた定期更新記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。なお2013年10月分より後の結果に関する記事については、諸般の事情でいわゆる「上書き更新」に移行しており、内容確認の際には注意が必要となる(電気事業連合会からは毎月新規にデータ更新はなされている)。

2014年12月の大口全体としての動きは前年同月比マイナス0.5%となった。「前年同月比」における算出結果なので、季節属性(業種により商品の生産が多い季節と少ない季節が存在する)に影響を受けない数字であり、純粋に各種工場の施設の稼働で生じる電力の消費総量が前年と比べ、それだけ減った計算になる。なお消費効率は日々改善が進んでいるため、工場をはじめとした大口電力の使用者における稼働率の変化そのものでは無いことに注意する必要がある(多分に連動性はあるが)。また今回月はリリースや小売業界の各業績月次報告記事にもある通り、11月下旬以降しばらく間、気温が前年と比べて高かったことから暖房需要が減少し、これも電力使用量を押し下げる一因となっている。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2014年11月-2014年12月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2014年11月-2014年12月)

前回月ではプラス圏の業種は3業種(前回月の速報値からの改定結果を反映済)で、今回月は3業種と変わらず。化学がプラスからマイナスに転じ、機械がマイナスからプラスに転じている。紙・パルプや非鉄金属はプラスを維持できたがプラス幅は先月から縮小、また窯業・土石や鉄鋼は下げ幅を拡大している。上下率だけを見ると下げ基調が先月から拡大したように見えるが、マイナスからプラスに転じた機械の電力量が非常に大きく、全体に及ぼす影響も大きくなるため、結果として全体ではマイナスを維持してしまったものの、その幅を縮小する形となった。

次のグラフは電力事情に大きな変化が生じるきっかけとなった2011年3月の震災より前の状態と比較するため、4年前となる2010年12月分と比較した今回月の大口電力使用量の動向(3年前の2011年12月との比較では、震災後における電力消費減との比較となってしまう)。稼働率だけでなく、震災以降必然的に加速化した節電効果や新電力への離脱も含めた変化によるものだが、例えば今回月ではもっとも大きなプラス値を示した紙・パルプもマイナス14.9%と大きくマイナス値を見せており、プラスは皆無。昨今では稼働率の問題よりもむしろ、震災以降の節電(見なし節電含む)の成果により、震災前比でマイナス化が成されていると見ることが出来る材料ではある。

↑ 大口電力使用量産業別「2010年」同月比(2014年12月)
↑ 大口電力使用量産業別「2010年」同月比(2014年12月)

紙・パルプは各産業の中でももっとも下げ幅が大きい。これは工場稼働率の低迷よりも、節電や自家発電などによる「みなし節電」によるところが大きい。詳しくはまとめ記事で説明しているが、特に紙・パルプ業では多種多様な工夫がなされており、その仕組みは注目に値する。

中長期的な動向の確認


上記の記事、グラフは単月、または短期間に限定したもの。そこで連続的な流れを確認するため、2007年1月以降・2010年7月(震災前年の夏期)以降の全産業別の前年同月比推移をグラフ化する。個々の値を細かく見定めることは難しいが、「俯瞰的動向」を知るのには適している。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2014年12月分)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2014年12月分)

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2010年7月分-)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2010年7月分-)

2008年秋に発生した「リーマンショック」の影響で大きな谷間が形成されている。一方で2010年にも大きなプラスの山が出来ているが、これは単なる前年の下落の反動で、経済・工業の急速な成長を意味するものでは無い。また、2008年秋口の下落率と翌年の反動による2009年秋口の上昇率は同程度に見えるが(もっとも大きく変動した鉄鋼でマイナス40%、プラス40%強)、同じ率で減少、増加とした場合、結果としては2年越しでは減少したことになり、回復が果たされていないことになる(例えば鉄鋼の事例なら40%減の上で40%増となっても、1.0(元の値)×0.6(40%減)×1.4(40%増)=0.84<1.0となり、現状には復帰しない)。

リーマンショックによる大幅下落とその反動の後は、比較的安定した流れを見せていたが、2011年3月に発生した東日本大地震・震災を機会に大きく下げ、そしてそれ以降は押し並べてマイナス基調で推移している。震災から一年ほどは震災による物理的な損害、そして工場稼働率の低下によるもの。それ以降は電力需給を起因とする、節電要請や電気料金の引き上げがもたらした「稼働率に大きな影響を与えない節電」(上記で触れた「みなし節電」も一例)による。もちろん節電には膨大な初期コスト、従業員の負担増など、電力消費・稼働率以外の点でコストの上乗せが生じていることを忘れてはならない。



毎年夏は冷房、冬は暖房のため、他季節と比べて電力消費量が大きくなることから、電力需給がひっ迫しやすい(電力需要が大きいからといって、発電所を毎夏・毎冬に限って増殖させることは不可能)。特に震災以降は発電様式に関する特殊事情のため、さまざまな縛りがあり、需給ひっ迫感も強いものとなっている。今冬は【「今年は北海道も含めて数値目標なし、無理のない節電協力要請」…2014年冬の節電要請内容正式発表】でも説明した通り、どうにか電力安定供給の最低ラインの予備率3.0%を維持できそうな状況ではあるものの、各発電所のメンテナンス状況は「全力疾走を長距離走で行っている」状態に近く、コストパフォーマンスやカントリーリスクの観点では危機的状況が続いている。また北海道電力管轄では他電力管轄からの応援電力を得にくい地理的状況から、何らかのアクシデントが発生した際には、対応し切れない可能性が生じている。

これらの綱渡り的な状況を生み出しているのは、ひとえに現在が特定発電方法の欠損をきたした状態にあるからに他ならない。このようなバランスのままで電力需給の安定状態を極力維持するため、建設当時は想定しなかったレベルでの火力発電所の稼働率の上昇、それに伴うメンテナンスなど安全保守面でのリスク増大(従来行うべきメンテナンスが十分出来ない発電所も多い)、燃料調達による余分な燃料コストは積み重なるばかり。エネルギー安全保障という観点でのエネルギー調達上の問題は、ウクライナ情勢における西欧諸国とロシアとの関連(西欧諸国は多分に天然ガスをパイプラインを通じてロシアから輸入している)が非常に良い好例となる。エネルギー対策におけるリスク分散の道を誤ると、国全体の施策すら左右されてしまう。エネルギーが国策の大きな問題となるのは、それこそ前世紀の太平洋戦争ですら好例足りうる。

そして各大口電力需要者への負担増も発生している。一般市民が直接肌身で感じないレベルで、きしみ、ゆがみは確実に増大している。一般世帯向けの電気料金の値上がり、各商品の値上げお知らせのリリースにおける理由説明の文言に「エネネルギーコストの増大」などを見受ける事例など、直接影響を受ける点もあるが、実はそれすら些細な弊害でしかない。震災からすでに経過4年目を迎えようとしている時期に、今なおこの体たらくな状況は、多分に震災当時の政府による政策・方針の失敗が未だに尾を引いているところが大きい。いわば「負の遺産」とでも断じるべきか。現に直近の景気ウォッチャー調査の結果における具体的コメントでも、電気代の高騰への懸念が社会全体の不安を助長している向きを示している。

製造業全般の健全な維持成長と産業誘致のための魅力形成には、安価で安定した電力の供給が欠かせない。それを確保しリスクを軽減するため、行政においては偏見や非科学的な、声ばかりが大きい各種の妨害に屈することなく、これまで以上の尽力が強く求められている。


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