「真の失業率」も算出…完全失業者に含まれない「仕事はしたいが求職活動はしなかった」人の推移をグラフ化してみる(2014年)

2014/03/01 14:00

失業問題では多種多様な考えを持つ人により、喧々ごうごうの論議が交わされる場合が多い。中でも失業の定義に関して「公的情報は偽りで、真の失業者はこれだけいる、国際的な基準ではこうなっている」と声高に語る論者も目に留める(ちなみに官公庁のデータは概してILOの国際基準に則った計測をしている)。今回はそれらの意見で良く取り上げられる「隠れた失業者」と呼ばれる人たち、つまり完全失業者には該当しない「仕事をする意思はあるが、求職活動をしなかった」について、総務省統計局が2014年2月18日に発表した、2013年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、確認をしていく(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。

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完全失業者ではないが就職を希望する人たち


まず完全失業率、完全失業者について。完全失業率は「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出される値であり、完全失業者は「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」の3条件すべてに当てはまる人を指す。いずれか一つでも該当しなければ完全失業者にはならない。

この条件に一つでも当てはまらない、そして現在雇用されていない人は「非労働人口」に該当する。2013年の非労働力人口は4500万人で前年比34万人の減少。そのうち「就業希望者(就業を希望しているものの、求職活動をしていない人)」は428万人、前年比で11万人増加となる。

↑ 非労働人口のうち就職希望者合計の推移(万人)
↑ 非労働人口のうち就職希望者合計の推移(万人)

「非労働人口のうち就職希望者」とまとめているが、その立場にある理由はさまざま。「この景気では就職活動をしても無駄骨になりそう。就職はしたいのだけど、あきらめるか」と考えた人、「病気で身体を壊してしまい、静養をしなければいけない。就職したいが、無理は出来ない」人、「子供が生まれるので出産と育児で忙しいから就業は難しい」人などなど。

そこで、その内訳を示したのが次のグラフ。「非労働人口のうち就職希望者」で一番回答として選ばれそうな、「適当な仕事がありそうにない」人は2013年では137万人。「非労働人口のうち就職希望者」全体に占める割合は32.0%と1/3近くを占めている。

なおグラフを見ればお分かりの通り、昨今の生活環境情勢をかんがみ、2013年分から今件項目の内訳が細分化され、「家事・育児」が「出産・育児」と「介護・看護のため」に分割された。過去のデータとは一部項目で連続性が無くなったため、別途切り分けての構成となる。

↑ 非労働力人口のうち就業希望者の内訳(2008-2012年)
↑ 非労働力人口のうち就業希望者の内訳(2008-2012年)

↑ 非労働力人口のうち就業希望者の内訳(2013年)
↑ 非労働力人口のうち就業希望者の内訳(2013年)

経年変化で見ると、リーマンショックの影響が強く表れている2009-2010年では「健康上の理由」が少なく、「適当な仕事がありそうにない」が多い。それだけ労働市場がひっ迫している(ように見えた)ことが分かる。それ以降は少しずつだが「適当な仕事がありそうにない」の割合が減り、「健康上の理由」の比率が増えていく。

「健康上の理由」は疫病などの状況変化が無い限り、数そのものには大きな変化がないため(実際、60万人台で横ばいのまま推移している)、この項目の比率が上がれば、間接的ながら労働市場が改善されていることが確認できる(他の項目の人数が減るため)。「適当な仕事がありそうにない」の減少同様、良い話ではある(健康を理由に就職活動が出来ないこと自体は、非常に残念な話だが)。

区分を仕切り直した2013年に限ると、昨今話題に登っている「育児休業」と密接な関係がある「出産・育児のため」の値が1/4近くを占めている。また今後さらに大きな社会問題化しそうな「介護・看護のため」の回答が4.7%いるのが確認できる。「適当な仕事がありそうにない」は引き続き減少しており喜ばしい状況だが、「出産・育児のため」「介護・看護のため」の2項目は今後特に注目していく必要がある。

「適当な仕事がありそうにない」具体的には?


「適当な仕事がありそうにない」に関して、その内訳を細かく確認し、人数推移を示したのが次のグラフ。

↑ 非求職理由のうち「適当な仕事がありそうにない」の内訳別にみた、就業を希望するが就職活動はしていない「非労働人口」の推移
↑ 非求職理由のうち「適当な仕事がありそうにない」の内訳別にみた、就業を希望するが就職活動はしていない「非労働人口」の推移

2009年頃までは「今の景気や季節では仕事がありそうにない」以外は年々漸減傾向にあり、唯一「今の景気や季節では仕事がありそうにない」のみが景気動向に大きく反応して上下していた。しかし2010年以降は「勤務時間・賃金などが希望にあう仕事がありそうにない」「その他適当な仕事がありそうにない」が増加し、「今の景気や季節では-」は再び減少傾向を示していた。

このグラフ動向からは、「リーマンショック」の2009年以降、「非労働人口」においてもこれまでとは状況が異なる様相を見せているのが分かる。そして景気連動性の高い「今の景気や季節では仕事がありそうにない」の動きを見る限り、直近では2009年をピークとして、労働市場の最悪期は脱しつつあると考えることができる。

2013年においては「近くに仕事がありそうにない」以外はすべて減少・横ばい。特に「今の景気や季節では仕事がありそうにない」の数が大幅に減少し、金融危機ぼっ発直前の値にまで低下している。地域による格差はありそうだが、全体的には労働市場が改善しつつあることがあらためて認識できる。

なお完全失業率が話題に登ると、冒頭で触れたように「完全失業率には『景気が悪くて就職活動をあきらめた人』(2013年では10万人)は入っていない。だから本当はもっと失業率・失業者は上のはずで、公表値はまやかしだ」との話を耳にする。2013年の完全失業者数は265万人であり、それと比較すると、それなりに大きな値となる(3.8%分)。仮に概算すると、労働力人口が6568万人・完全失業者数は265万人、ここに10万人を追加して、(265+10)÷6568=4.19%となる。公式の完全失業率の4.03%とは0.16%ポイントの差となる。



やや余談ではあるが、「完全失業者」の定義に当てはまるための要件「仕事を探す活動をしていた」について。これを「ハローワークに登録していること”のみ”」と誤解している人が多い。しかし実際には【労働力調査に関するQ&A】を読めば分かるように、

公共職業安定所(ハローワーク)に登録して仕事を探している人のほかに、求人広告・求人情報誌や学校・知人などへの紹介依頼による人、直接事務所の求人に応募など、その方法にかかわらず、仕事を探す活動をしていた人が広く含まれる

と定義されている。今記事命題の”完全失業者に含まれない「仕事はしたいが求職活動はしなかった」”人のイメージも、多少は変わってくるのではないだろうか。


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