パートやアルバイトが大幅増加…非正規社員の現状をグラフ化してみる(2014年)

2014/02/27 08:00

労働市場に関わる状況の変化において、注目を集めている事象の一つが非正規社員問題。雇用者全体に占める非正規社員の比率が増加し、該当者の生活の安定性への懸念はもちろんのこと、職場における技術や経験の継承が困難となり、企業・業態そのものが脆弱化するとの指摘、報告もある。今回は総務省統計局が2014年2月18日に発表した、2013年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、最新のデータによる非正規社員の現状を複数の視点から確認し、現状を精査していくことにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。

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上昇続ける非正規社員数


元となるデータは「労働力調査(詳細集計) 平成25年平均(速報)結果」の「平成25年平均(速報)結果の概要、統計表」など。場合によってはその値を基に独自算出した結果を用いている。

まず最初に取り上げるのは、雇用形態別で区分した、非正規の職員・従業員(非正規社員、非正社員)の人数推移。【「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向】で解説している通り、「派遣叩き」が世論、そしてそれに後押しされる形で各種法規制によって行われ、多業種の企業は派遣社員を敬遠する傾向にある。彼ら・彼女らの雇用そのものがリスク扱いせざるを得ないのだから、企業側が避けるのも仕方がない。

2013年は景気が低迷から転換しはじめた一方、企業側はコスト増への懸念や必要な労働力の柔軟化(、加えて閑散期と繁盛期の差が大きい第三次産業比率の拡大)、雇用される側は主婦をはじめとした就業時間の柔軟性の需要拡大と、正規雇用が困難な事例が増えている昨今の労働市場の状況が加速する形となり、主要な非正規社員の項目すべてで前年から人数は増加している。特にパート・アルバイトの増加が著しい。

↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員(万人、2013年)
↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員(万人、2013年)

↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)
↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)

↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)
↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)

派遣社員の減少は単純比較ができる(データが容易に取得できる)2003年以降では、「派遣叩き」の影響が出始め大きく値を減らした2009年、そして2010年と続き、ようやく2011年にはプラスマイナスゼロの領域まで回復した。この期間には同時に「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託」が増えているところから、単に労働力が過剰で非正規社員が減らされたのでは無く、「派遣社員がバッシングで雇用しにくくなったのなら、同じような作業はアルバイトや契約社員に任せよう」を企業が実践していたことが分かる。

2013年では労働力そのものの不足に加え、上記で解説した通り雇用される側・する側双方の非正規化への流れが加速する形となり、いずれの様態でも非正規社員は増加している。なお雇用者全体数は微増しているが、正規社員は減少し、その分非正規社員は増加していることから、労働の様式そのものの変化(非正規化へのシフト化)が進んでいる現状が改めて見て取れる(正規社員も増加し、雇用者全体も大幅に増えているのなら、非正規社員へのシフトでは無く単なる労働市場の拡大と読むことが出来る)。

2013年時点では雇用者全体の63.3%が正社員(・正職員)、残りがパートや派遣、契約などから成る非正規社員という計算になる。ただし上記グラフにある通り、この値は兼業主婦によるパート・アルバイトが多分に含まれていることに注意する必要がある。

↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)
↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)

このグラフを見ると、単純に非正規社員の割合が増加の一途をたどっているように見える。しかし、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正社員数は横ばいか微減」「非正規社員は増大」との構図、言い換えれば企業は「景気拡大期は非正規社員の増加で、業務拡大に対応していった」のが大きな流れであることが分かる。ちなみに「派遣社員制度叩きで正規雇用を求める動き」と、「不景気で雇用調整が行われ、正規社員が減る時期」「不景気に加えて派遣叩きの世論で派遣市場が縮小する時期」、さらに「パートやアルバイトの増加時期」はほぼ一致する。

現在は景気後退・低迷期からようやく回復期に向かいつつあるが、労働市場の内部構造の変化は続いており(上記に挙げた第三次産業比率の増加もその一要素)、効率的な企業経営の中で正社員が必要とされるポジションが増えることは無く、柔軟性に富んだ非正規社員の需要ばかりが増加している。

また、定年退職者やリストラによる中途解雇者の増加も、昨今の労働市場においては重要な要素の一つ。非正規社員の増加数では、若年層よりはるかに多い中堅層の増加が確認されている。とりわけ中堅層女性の増加が著しく、小売業などでの女性のパート・アルバイトの需要が大幅に増加したものと考えられる。

失業者数の推移


正社員・従業員は2012年の3340万人から2013年には3294万人となり、都合46万人減少している。一方で非正規社員は2012年の1813万人から2013年には1906万人となり、93万人の増加。

前職の雇用形態別に離職した完全失業者数の推移を確認すると、前年より元正社員の失業者数は大幅減少、パートやアルバイト、派遣社員も減少している。「仕事をしたくて職を探しているが見つからない人」の減少は、少なくとも雇用される・されないという観点では労働市場が改善していることを意味する。

↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)
↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)

今データはあくまでも「過去1年間に前職を離職した者のうち」という前提があることに注意しなければならない。つまり「失業期間が1年以上」(なかなか再就職先が見つからない)の人は今グラフには反映されていないことに留意する必要がある。

この「就職浪人1年超」に該当する人は2012年の107万人から2013年には104万人に減少している。「正規社員減少」「パート・アルバイト増加」の状況と合わせ見るに、離職した人・していた人が、非正規雇用の形態で雇われる事例が増えているものと思われる。そして「非労働力人口」のうち「就業非希望者」、つまり現状を判断して求職活動をしていない人は2012年から44万人減少しており、雇用状況を見て就職活動そのものをあきらめた人、あるいは再就職を断念せざるを得ない状況になった人(事故や病気、介護など)も減っていることから、一部で言われている「影の失業者」の観点でも労働市場の改善化がうかがえる(65歳以上に限れば59万人増加しているが、これは単に定年退職を迎えて第二の人生を歩み始めた人の増加に過ぎない)。

また、元派遣社員に対する風当たりの強さは継続中。次のグラフは各雇用形態別に「その時点で雇用されている人数」に対する、「前職でその雇用形態に居た人の完全失業者数の割合」を算出したものだが、元派遣社員の値が(昨年から改善されたとはいえ)いまだに他の職種と比べれば高い値を示している。現状は20人派遣社員が雇われている場合、それとは別に1人が「元派遣社員の完全失業者」(失職してから1年未満)として存在する計算になる。

↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移
↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移

元々パートやアルバイト、正社員と比べて派遣社員は元々の人数が1ケタ少ないため(派遣社員は116万人、パート・アルバイトは1320万人、そして正社員は3294万人)、単純な比率計算では「ぶれ」が生じている可能性はある。ただし10年来同じ計算式で同様の結果が出ていることから、その誤差は十分無視できる範囲に収まっていると考えて良い。解雇された派遣社員(の割合)の相変わらずの多さが認識できる。

完全失業者数の絶対数は元正社員の立場にある人が一番多い(2012年は46万人)。しかし同じ雇用形態で現在働いている人に対する完全失業者数の比率を算出すると、元派遣社員の値が一番大きくなる。同じ雇用形態で再び就職を望む人が多い実態を考慮すれば、元派遣社員が辛い感は否めない。



非正規社員の増加、雇用者全体に占めるシェアの増加は上記にある通りで、労働市場の変化の表れの一側面に違いない。非正規社員の生活の不安定さをおもんばかれば、正社員の増加を求める声が増すのも当然の動きといえる。

一方で上記のデータにある通り、非正規社員そのものの構成や増加分の多分が、兼業主婦のパートやアルバイト、定年退職者や中途解雇者による中堅層以降の再雇用から成る事実も認識する必要がある。正しい状況を把握せずに、全体的な、表面的な数字だけを振りかざして、バッシングの機運を高めれば、数年前の派遣叩きとその結末同様の愚が繰り返されてしまうことになる。

「木を見て森を見ず」的な判断を下さないよう、願いたいものだ。



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