沖縄以外は全マイナス、関東・近畿圏で大幅減…全国紙の地域別世帯シェア動向(2014年前半期版)

2014/09/10 14:00

当サイトでは定期的に日本の新聞業界の動向を、公開値を基に精査しているが、そのうちの一つ、読売新聞社の広告ガイドページ経由・日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期」の値について、先日最新値となる2014年前期分が発表された(【販売部数の公開ページ】)。そこでその公開値を基に、いつもの通り全国紙5紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)の都道府県別シェアの動向を、複数の切り口で確認していくことにした。

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前半期比プラスは沖縄のみ


まずは「全国紙5紙の朝刊世帯普及率」(夕刊は含まれていない)を算出し、単純に合計したものを都道府県別に列挙する。なお今回のデータは上記にある通り、日本ABC協会「新聞発行社レポート 普及率」2014年1月-6月平均データを一次ソースとしている(ことになる)。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2014年前半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2014年前半期)

グラフ中の但し書きの通り、「1世帯が複数の全国紙を購読している事例も想定されるため、この値がそのまま「『いずれかの全国紙を購読している世帯普及率』では無い」ことに留意する必要がある。例えば奈良県なら93.8%との数字が出ているが、これは「奈良県では9割以上の世帯が、5大全国紙のいずれかを購読している」訳ではない。仮に新聞購読全世帯が5紙すべてを購読していた場合、実質世帯普及率はその1/5、20%足らずとなる。

一方、金銭的、時間的に余裕がある、大手新聞紙を複数購読し比べて内容の違いを検証する、特定の連載に目を通すために数紙を購入する事例はあるにせよ、多くの世帯で複数の主要新聞紙を購読しているとは考えにくい。また、高い値を示している地域(関東・近畿圏や山口県)では、以前の解説記事【「全国紙」の都道府県別トップシェア新聞を地図化してみる(2010年下半期版)】で、読売新聞や毎日新聞のシェア比率が高い結果が出ており、主要紙の単純合計値でもそれなりに高い精度で状況が把握できている様子が確認できる。

また、このグラフで値が低い都道府県では多分に地方紙が多く購読されており、新聞そのものが読まれていないわけではないことが多い。例えば青森県では最大手の販売部数を誇る新聞は東奥日報、次いでデイリー東北、その次にようやく大手5紙のうち読売新聞がついている。

次に、直前期2013年後半期からの半期における差異を計算したのが次のグラフ。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2013年後半期から2014年前半期への差異)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2013年後半期から2014年前半期への差異)

2013年後半期では岩手県、福島県、そして奈良県がプラスを示すことになったが、今半期で沖縄県のみがわずかにプラス、残りはすべてマイナス。あくまでも紙媒体としての新聞、しかも朝刊のみでの計測ではあるが、世帯ベースでの新聞離れの現状が一目瞭然で把握できる。

一方で下げた地域の下げ幅を見ると、関東と近畿圏の下げ率の大きさが目立つ。2013年後半期では関東圏のみだったことから、近畿圏でも再び下げ基調が本格化し始めた感は否めない(2013年前半期と同じような傾向である)。

5大紙の地域別動向を探る


続いて全国を「北海道・東北」「関東」「中部」「近畿」「中国」「四国」「九州・沖縄」のエリアに分割し、それぞれの地域別の朝刊世帯普及率を算出する。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2014年前半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2014年前半期)

人口密集地帯である関東と近畿において、大手2紙の読売新聞・朝日新聞が高い値を示しており、群を抜いているのが分かる。まだ近畿は毎日新聞がそれに続く値ではあるが、関東では他の3紙は大きく突き放されている。関東では読売と朝日の天下状態とも表現できる。なにしろ単純計算だが2紙合計で4割強もの世帯普及率を示しているのだから。

ただしこの人口密集地帯、関東圏・近畿圏は同時に上で記した通り、今半期で大手新聞における世帯普及率が大きく減退した地域でもあり、新聞業界に与えた衝撃の大きさも容易に想像できる。

一方、「毎日新聞は近畿や中国、九州・沖縄などの西日本の方で強い」「中部地域では朝日新聞が読売新聞を抜いてトップ、四国でも読売とほぼ変わらない値に肉薄している」「産経新聞は関東と近畿に特化し、特に近畿で強い」など、地域特性や各新聞社の特徴などが確認できる。特に産経新聞は関東と近畿のみ強く、他地域では世帯普及率が1%を切っており、同社の販売促進戦略が人口密集地域へのリソース集中投下にあるものとも推測できる。

この朝刊世帯普及率について、前半期、つまり2013年後半期からの変移を計算した結果が次のグラフ。地域別の動向を眺め見ることができる。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2013年後半期から2014年前半期における変移)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2013年後半期から2014年前半期における変移)

まず最初に目に留まるのが、読売新聞の減少ぶり。まさに抜きんでている状態。これがプラス方面の特異動向なら喜ばしい話だが、マイナス方面となると頭を抱えてしまう。北海道・東北圏や中部圏ではかろうじて下げ幅が他新聞とあまり変わらない状態だが、関東・近畿・中国・四国・九州沖縄では2番目の下げ幅を示す朝日新聞の2倍以上の勢いを示す場面もあり、焦りを覚えさせる。とりわけ人口密集地帯でもある関東・近畿圏の下げ幅の大きさが、今半期の読売新聞における大幅な部数減に大きく作用したと考えられる。概算ではあるが東京だけで5万部強もの減少という値が出ている。

部数では5紙中もっとも前半期比の下げ率が小さかった日経新聞だが、多くの地域で下げ幅が最少、さらに人口密集圏の近畿圏での下げ幅が0.05%のマイナスに留まっている。これが下げ幅を最少に押しとどめることとなった大きな要因である可能性が高い。

最後に各新聞社別の普及率グラフを再構築する。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(新聞別)(2014年前半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(新聞別)(2014年前半期)

読売新聞の部数面での強さは、関東・近畿といった人口密集地帯、そして商業圏での強さにあることが分かる。朝日新聞も数字そのものはやや落ちるものの傾向としては読売に似ている。販売戦略も恐らくは同様なのだろう。さらにこの2紙は中国圏でも強い値を示しているのが特徴的。

産経は形状こそ読売・朝日と似通っているものの、絶対値がかなり低く、部数の絶対数の足りなさは経営リソース不足によるところが大きいものと考えられる。また近畿圏での突出した値が目に留まる。近畿圏だけなら日経新聞をも上回る値が出ている点は注目に値する。



先行する部数動向記事でも言及しているが、日本では「人口の減少」「一人世帯の増加」「世帯数の増加」が同時進行で起きているため、そして一人世帯では新聞購読率が低くなるため(購読必要性の低下や可処分所得の小ささが原因)、仮に部数が維持されても世帯普及率は減少してしまう。今記事の各値は「どれだけの割合の世帯に新聞が届いているか」といった、新聞の動向を確認する指標の1つに過ぎない。また同じ記事で指摘の通り、絶対数こそ少ないが、有料電子版の存在も忘れてはならない。

今半期においては、各紙の地域別販売戦略に大きな変化はないものの、読売新聞の大規模な減少が北海道・東北圏と中部圏以外の各地域で起きていることが確認できる。とりわけ人口密集地帯の関東・近畿圏での減少ぶりは致命的で、単純な部数減少以上の深刻さを覚えてしまう。

一方、減少した分はどのような理由で減ったのか、その詳細は今件公開データからは分からない。新聞購読を止めた人に「なぜ新聞をとらなくなったのか」を尋ねた調査、さらに特定の新聞を指定した設定での調査はまずありえないからだ。今後関連性を示すデータが見つかれば、その際に改めて検証したい。


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