子供と親の生活環境は!?…アメリカ合衆国の子供達の親との同居状況(最新)

2023/04/08 02:30

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2023-0403子供の成長過程においては情操教育の観点では、親子はともに日々を過ごすのが一番よいとされているものの、不幸な事故や親同士の仲違い、その他さまざまな事情で親子が同じ居住空間で生活できない場合もある。法的には結婚したままでも別居状態の夫婦も十分想定される。今回は【アメリカ合衆国国勢調査局「Families and Living Arrangements」】の公開値をもとに、アメリカ合衆国における子供(18歳未満)が親とともに暮らしているか否か、同居状況の変移を確認していくことにする。

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両親とともに暮らしている子供は約7割


次に示すのは1960年以降(1960年から1968年は統計値上、一度に飛んでいることに注意)における、アメリカ合衆国の18歳未満の子供の数に関して、両親とともに暮らしているか、片方の親のみか、両親ともにいないかの状態別に示した動向をグラフにまとめたもの。あくまでも生活を営む上での居住空間上の話で、冒頭の例にもある通り法律上の夫婦関係は維持されているものの、妻と夫が別居状態にあり、例えば妻側に子供がいた場合は「片方の親のみ」と判断される。何らかの事情で祖父母に子供が預けられている場合も「両親無し」となる。

↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(万人)
↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(万人)

↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(万人)(2001年以降)
↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(万人)(2001年以降)

直近の2022年では7329万人の子供のうち約7割の5145万人が両親とともに生活。1922万人が片方の親のみ、262万人が両親ともにいない環境での生活を過ごしている。子供の全体数は1980年代半ばに底を打った後漸増、ここ数年は再び漸減の動きに転じているが、おおよそ両親がいる子供の数に変化はなく、片方の親のみの子供が増加している。これは先行記事などにある通り、非嫡出子の増加が一因といえる。さらにこの数年では、2012年まで減少していた「両親ともにいない子供」が再び増加に転じる気配を見せているのも目にとまる(直近年では前年比で減少したが)。

父親だけ、母親だけの子供世帯の内情は


そこで非嫡出子が大いに関係しているであろう、片方の親のみとともにいる子供に関して、その内情を確認していく。まずは父親のみの場合。

↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(父親のみがいる子供、父親の状態別、万人)
↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(父親のみがいる子供、父親の状態別、万人)

↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(父親のみがいる子供、父親の状態別、万人)(2001年以降)
↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(父親のみがいる子供、父親の状態別、万人)(2001年以降)

2006年から2007年にかけて大きな変化が生じているが、これは金融危機ぼっ発によるものではなく、計測方法を変更したため。後述する母親のみのケースでもいくぶんの変化が生じているが、父親のみではこのように大きな形で差異が生じてしまっている。景況感の大幅な悪化で社会環境に変化が生じたのは事実だが、この変動はその影響によるものに限った結果ではない。

人数動向だが、1990年前半までは子供の全体数の増加とともにそれぞれの区分内の人数は増加していたが、離婚によって父親が引き取る事案は1990年後半以降ほぼ横ばい、結婚状態は維持しているものの別居しているなどの理由で父親のみとともに過ごしている子供もあまり変化はなく、未婚状態の父親と子供の組み合せが増加し、全体数を引き上げているのが分かる。2007年から計測方法が変わったため一度大きく減ったものの、その後は再び未婚の父親と子供の組み合せはおおよそ増加を継続している。

続いて母親のみの場合。

↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(母親のみがいる子供、母親の状態別、万人)
↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(母親のみがいる子供、母親の状態別、万人)

↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(母親のみがいる子供、母親の状態別、万人)(2001年以降)
↑ アメリカ合衆国の18歳未満の子供における家族構成別人数(母親のみがいる子供、母親の状態別、万人)(2001年以降)

こちらも2007年における計測方法の変更による数字の乱れが生じているが、父親のみのケースほどではない。そして母親のみの場合は「既婚だが別居・不在」の数はこの半世紀ほどの間はあまり変化が無く、「離婚」事例は1990年ぐらいまで増加して後は横ばい、「死別」はむしろ漸減、そして「未婚」、つまり非嫡出子との同居・世帯構築のケースが大きく増加しているのが分かる。ただしこの数年に限ると、死別以外のケースが減り、母親のみの場合全体の値も漸減している動きが確認できる。

直近2022年では810万人が未婚の母親とによるもので、離婚は456万人、既婚だが別居は258万人にとどまっている。アメリカ合衆国の人口問題を語る際に欠かせない非嫡出子は、その多くが母親と子供との間で世帯が構成されていることが分かる。

祖父母と同居する孫の数は?


よい機会でもあるので、祖父母と暮らしている孫の動向も確認しておく。子供の親がいれば三世代世帯となるが、何らかの事情で両親がおらず、いわゆる「おじいちゃん子」「おばあちゃん子」の事例になることもある(グラフが示す通り、この事案はかなり多い)。1970年から1990年までは10年単位で区切られているので数字が飛んでいることに注意。

なお今件に該当する事例は祖父母が世帯主であることが前提条件。さらに祖父母がともにいる場合だけでなく、祖父母のどちらか片方のみでも該当する。

↑ アメリカ合衆国の祖父母(いずれか片方でも可)とともに暮らしている18歳未満の孫の数(内訳、万人)
↑ アメリカ合衆国の祖父母(いずれか片方でも可)とともに暮らしている18歳未満の孫の数(内訳、万人)

↑ アメリカ合衆国の祖父母(いずれか片方でも可)とともに暮らしている18歳未満の孫の割合(全18歳未満の人口比)
↑ アメリカ合衆国の祖父母(いずれか片方でも可)とともに暮らしている18歳未満の孫の割合(全18歳未満の人口比)

直近となる2022年においては、祖父母と同居している孫の数は416万人。両親がともにいるのは84万人にとどまり、4割強は母親のみがいる。恐らくは別居か非嫡出子的な状況で、祖父母が子育てを後押ししている事例なのだろう。さらに両親も同居していない事例も150万人に達している。多様な事例が想定されるが、今件統計データだけではその内面までは分からない。

また18歳未満の子供の総数における、祖父母と暮らしている子供の割合はおおよそ漸増していた。この上昇理由は繰り返し言及している通り、非嫡出子の増加によるところが大きい。ここ10年強ほどの間では横ばいの動きに転じているが、今後どのような動きを示すかは予想が立てにくい。前世紀末の動きのように、しばらく踊り場的な動きの後、再び上昇する感は否めない。なお直近2022年時点では5.68%。およそ18人に1人の計算となる。この1、2年で大きく減少しているのはイレギュラーなものだろうか、それともタイミング的に新型コロナウイルスの流行による影響だろうか。



概算となるが、1960年当時における18歳未満の子供においては、約88%が両親とともに生活していた。しかし2022年ではこの値が約70%にまで低下している。結婚観の変化、非嫡出子の容認傾向などが主要因だが、およそ20%ポイントの低下は小さからぬ子供の教育への変化も生じさせていることは、容易に想像できる。

状況はケースバイケースなので一様にどの選択肢がよく、どれが悪いと断じることは不可能だが、状況の変化の中で見えてくるものもあるのかもしれない。


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