テレビがマイ転、新聞の下げ幅拡大、ネットは相変わらず堅調(経産省広告売上推移:2015年1月発表分)

2015/01/16 14:00

経済産業省は2015年1月15日、「特定サービス産業動態統計調査」における2014年11月分となる速報データ(暫定的に公開される値。後程確定値で修正される場合が多々ある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によれば2014年11月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス1.5%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)においては「新聞」がマイナス7.6%と、もっとも大きな下げ幅を示している。また金額面では非常に大きい「テレビ」が前回月のプラス値からマイナス値に転じており、これが全体にも大きな影響を与えている。他方「インターネット広告」は前回月に続き2ケタ台の%プラスとなり、飛躍的成長が続いている(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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4マスでは新聞とテレビがマイナス、ネットは相変わらず伸張


今件記事で検証しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する共通した部分の解説は、記事を集約したページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。

まずは主要5項目の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年10月-2014年11月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年10月-2014年11月)

今件データは前年同月比を示したもので金額そのものでは無い。同時に前回月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分となる2014年10月分のデータと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表されている確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門も多々ある。

今回月では「新聞」の下げ幅が大きく拡大し、マイナス7.6%に。それと比べれば幅は小さいものの、「テレビ」は前月のプラスからマイナスに転じる形となった。これで4マスのプラス部門は「雑誌」「ラジオ」の2項目のみ。もっともこの2項目も、前年同月における値はマイナス値だったことから、多分に反動による勢いの部分もある。前々年同月比を試算すると、「雑誌」はマイナス3.2%、「ラジオ」はプラス0.6%となり、「ラジオ」はともかく「雑誌」は多分にリバウンドによるプラス化であることが分かる。

他方「インターネット広告」の動きは今回月も順調。2か月連続しての2ケタ台のプラス%値。過去のデータをさかのぼって確認すると、9月分のプラス7.4%(確定値)以外はすべて2ケタ台の伸びを示しており、順調な成長の真っただ中にあることが確認できる。

今回計測分となる月、つまり2014年11月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する項目の動きを確認すると、「新聞が不調」「テレビが不調」「雑誌とラジオは代理店次第で良し悪し」的な動きを示している。大よそ今回の経産省発表による日本全体の広告代理店の動向と一致しており、二大大手代理店の動きが日本全体の広告業界の動向と多分に連動していることを再認識させられる。

なお4マスとネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通りとなる。相変わらず「海外広告」の動きが激しく、グラフ全体としての体裁があまり美しくない形となってしまう。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年11月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年11月)

伸び率だけを見ると「海外広告が物凄く成長している」ような印象が強いが、これは多分に月ごとの売上の上下が激しいだけで、全体としてはほぼ横ばい。金額そのものも他部門と比べれば少額で、例えば今回月なら「ラジオ」の6割程度の額面でしかない。

一方、電通・博報堂の2社における動向を追った広告費関連の記事でも言及の通り、「その他」項目の広告費は大きな値を占めている。今回月なら1025億5200万円で、「テレビ」の1333億7200万円に近しい値。広告手法の多様化により、従来の仕切り分けに該当しない項目が次々と放り込まれている雰囲気がある。状況把握の適正化の観点でも、そろそろ新しい部門の追加が必要なのだろう。

新聞とインターネット広告の差は大きいまま


今回も該当月(2014年11月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化を行い、状況の確認をしていく。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手に違いないが、同時にその2社がすべてでは無いのも事実。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されていないことから、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。その点に注意されたい。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(2014年11月、億円)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(2014年11月、億円)

電通・博報堂のみの広告費動向では今なお「新聞」が金額的に優勢。しかしその2社以外の広告代理店も含めた今件データでは、「インターネット広告」のウエイトがより高い企業も多数含まれていることから、全体に占めるインターネット広告の額比率が高めとなり、ここ数年の間に両者の金額面での立ち位置が逆転している。詳細は【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2014年)(最新)】で示した通り。今のところ2014年1月を最後に、「新聞」の金額は「インターネット広告」を超えていない。

今回月では両者の金額差は約73億円。今回月は届かなかったものの、昨今では「新聞」と「雑誌」の額を足して「インターネット広告」とほぼ同額になる月も出ており、従来型メディアの紙媒体全体の広告費が、「インターネット広告」の額とほぼ同額という、時代を象徴する図式がちらほら生じるようになった。媒体としての新聞は昨今広告の観点でやや持ち直しを示しているが、雑誌は多分に危うい状況にあるため、今後この「図式」が見られる機会は増えてくるのだろう。

一方、比較対象となる「インターネット広告」だが、中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっている。他方、その機動性の高さから、金額面だけを追い続けると、浮き沈みが大きい。2011年以降は3月と12月に大きく伸びる動きがパターン化しているが、年末と年度末に多々求められるさじ加減・即時対応が求められる追加的な広告出稿において、柔軟性の高いインターネットによる広告が多用された結果と思われる。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年11月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年11月)

2011年以降は明確な形で、3月と12月に突出した額が投入されていることが確認できる。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年11月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年11月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額は漸減していくのはモノの道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を大量投入するのは酔狂か、付き合いによるものか、条件交渉の結果によるものかは定かではないが、少なくとも広告の直接対価によるものとしては考えられないので、「雑誌」「新聞」の広告力が漸減していると広告主からは判断されていると見て良い。

そして「雑誌」「新聞」共に紙媒体であることから、デジタル系メディアの浸透に伴い、割りを食った形となっていることは容易に想像できる。もっともこれら紙メディアの一部は、その内容をデジタルに代えて「インターネット広告」を掲載する媒体の後押しをしている。単純にこれら紙媒体が衰退しつつあるのではなく、その上に載るコンテンツのシフトが進んでいる「部分もある」と解釈するのが妥当だろう。

昨今の動向を見返すと、「インターネット広告」の躍動ぶりに加え、藍色の「ラジオ」が復調の兆しを見せているのが目に留まる。これがあくまでも前年同月と比べた上でのリバウンドに過ぎないのか、それとも本格的な回復の動きを示しているのか。「テレビ」が去年似たような動向を示し、現在もなお「それなりに良い動き」を示し続けていることも合わせ、注目していきたいところではある。

「テレビ」と「ラジオ」は共に電波媒体。大きく伸びているインターネットとはそれなりに相性が良いからこその動きなのかもしれない。


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